2冠馬不在の秋、菊花賞を占う 注目は“不当に低い評価”の3番人気?

グレード制導入以降、3例目の事態

グレード制導入以降、史上3例目となる2冠馬不在の菊花賞はいったいどうなる?(写真はドゥラメンテ) 【写真:中原義史】

 今週末はスプリンターズS。いよいよ秋のGIシリーズが幕を開けます。

 3歳クラシック戦線の方も2週前に牝馬のローズSと牡馬のセントライト記念が、そして先週の神戸新聞杯で前哨戦が終了。順調に夏を越し、秋華賞、菊花賞で有力視されるメンバーは、ほぼ出揃いました。

 しかし、ひと口に「順調に夏を越す」と書きましたが、それがいかに大変で重要なことであるかを改めて思い知らされる秋になりました。牡馬の春の2冠馬、ドゥラメンテの不在です。

 ダービー後、「秋は凱旋門賞か?」というプランが報じられ、史上初めて、2冠馬が無事に秋を迎えながら菊花賞に向かわない、つまり“2冠馬が3冠を狙わない”という可能性が生じたわけですが、放牧先で骨折が判明。治療に専念することになって、ドゥラメンテのこの秋の予定に関しては、残念ながら全くの白紙、になってしまいました。

 しかし、それによって迎えることになった“2冠馬不在の秋”。グレード制が敷かれた84年以降で今年が3例目になるのですが、過去2回と比較して今年はどうなるのか。10月25日の菊花賞を展望してみましょう。

3冠目の菊花賞の意義

 2冠馬が出走してきた場合の菊花賞と、2冠馬が何らかの理由で出走してこない菊花賞とでは、注目度が違うのは当たり前。そのレースに“3冠”がかかるわけですから。

 過去7頭の3冠馬は、すべてJRA顕彰馬に選定されていますが、つまり、そういう評価のされかたをする馬が、菊花賞で現れるかどうか、という究極の検定レースの意味が生じるのです。

 ちなみにグレード制以降では92年のミホノブルボン、03年のネオユニヴァース、06年のメイショウサムソンが3冠を狙って出走し、それぞれ2、3、4着に敗れています。

 まあ2冠馬不在でも十分価値のあるレースだ、という意見に異論はありませんが、やっぱり2冠馬がいる時とそうでない時ではインパクトに違いがあることも否めません。

 ただ、では面白みがないのか、と言うと、それは全く別問題。今年もかなり楽しめそうな雰囲気が漂っています。

3冠馬出現時の事情

 今年の菊花賞の話題に進む前に、ちょっと寄り道して、3冠馬が現れた年の、3冠馬を取り巻いた事情というか、その世代のレベルを考えてみましょう。

 グレード制が敷かれる前年と敷かれた年、つまり83年と84年に連続して3冠馬が登場しました。ミスターシービーとシンボリルドルフです。

 当時「3冠馬が登場した世代の全体のレベルはそれほど高くない」という仮説が語られたものでしたが、シービーの世代は同世代が有馬記念を勝ち、別の馬が翌年のジャパンCを日本馬として初めて勝つなど、複数の活躍馬が目立つ一方、ルドルフの世代はもうひとつ印象が薄かったのです。

 ところが、2年続けて3冠馬が現れたおかげで、その後も例のない“3冠馬対決”が実現。そこでルドルフが3度の対戦すべてに先着したのですから、それ以後の3冠馬世代がどうだったのかの検証はさておいても、世代間のレベルというものの捉え方、その難しさを提示した好例と言えます。

 そのようなことを踏まえた今年。3冠に準ずる2冠馬が春の時点で登場しました。その馬が菊花賞に出る出ないは別にして、とりあえず今年の世代の“レベル”は意識に入れておいていいでしょう。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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