平泳ぎ・立石諒を狂わせた勝負の誘惑 得意の200mへ、冷静さを保てるか?

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今大会は「五輪へのステップ」

男子100メートル平泳ぎで予選敗退の立石諒が、レース後に語ったこととは!? 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

「本当はたぶん準決勝はいけたと思うんですけれど、勝負に出ちゃいました」

 2日にロシア・カザンで行われた水泳の世界選手権・男子100メートル平泳ぎ予選、立石諒(ミキハウス)は1分1秒26で全体29位となり、敗退が決まった直後にこう語って顔をしかめた。

 2012年のロンドン五輪では200メートル平泳ぎで銅メダルを獲得した立石は、昨年8月に右ひじを手術したばかり。「日本代表に戻りたい」という一心で4月の日本選手権に照準を合わせたものの、本来の調子には程遠く、100メートル・200メートルともになんとか代表入りを果たしたという状態だった。所属するミキハウスの世界選手権壮行会でも、「今大会は『リオデジャネイロ五輪へのステップ』と位置づけ、来年につながる泳ぎをしたい」と控えめな目標を宣言していた。もともと今大会は、本気で勝負できる状態にないことは分かっているはずだった。

世界の強豪にペースを乱される

 それでも、世界選手権という舞台、出場する世界の強豪たちの存在が、立石を勝負したいという気持ちに駆り立てた。予選8組で第2レーンを泳ぐ立石の隣、第3レーンは200メートル平泳ぎで11年の上海大会、12年のロンドン五輪、13年のバルセロナ大会と、世界大会3連勝中のダニエル・ギュルタ(ハンガリー)だった。

「自分の現状を理解しているつもりだったんですけれど、こういう舞台に来ると抑え切れなくなってしまった。前半からいけないのにいってしまったり、周りのペースについていきたいというイメージが出てきた。隣にギュルタがいたりすると勝負したくなってしまい、自分のレースができなくなってしまった」

 立石は本来、後半で勝負する泳ぎを得意としており、ラスト50メートルで勝負をかけるレース展開を目指していた。しかし、このレースでは前半から積極的に仕掛けるレース展開についていき、自分のペースを見失ってしまった。

「自分のレースができればいい」

 立石の次なるレースは、自身が最も得意としている6日の200メートル平泳ぎだ。次戦に向けては「冷静にいること。落ち着いて自分のレースができればいい」と、ここでもあらためて控えめな目標を掲げた。

 しかし、200メートルのスタートリストを見ると、立石の隣には4月に100メートル平泳ぎで57秒92の世界新記録をマークしたアダム・ピーティ(イギリス)の名前がある。2日に行われた同種目の予選・準決勝を1位で通過しており、3日の決勝でも優勝候補と目されている。

 またも、世界最高峰の選手と泳ぐことになった立石は、冷静さを保ち、自分のレースを貫くことができるのだろうか。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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