個の頑張りが高めた男子リレーのチーム力 世界水泳で過去最高の6位、五輪枠も確定

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塩浦「現時点で最高のパフォーマンス」

男子400メートルフリーリレーは過去最高の6位入賞を果たし、リオ五輪の出場権も獲得した 【写真は共同】

 水泳の世界選手権第10日は2日、ロシア・カザンにて競泳競技がスタートし、男子400メートルフリーリレーで日本の中村克(早稲田大)、塩浦慎理(イトマン東進)、小堀勇氣(東京SC)、藤井拓郎(コナミスポーツクラブ)が3分15秒04で過去最高となる6位に入った。全体5位で通過した予選から順位をひとつ下げたものの、上位12位までに与えられる2016年リオデジャネイロ五輪の同種目での出場枠を確定させた。

 今大会では、予選では各国選手のタイムが上がらず、前回の13年バルセロナ大会で銀メダルを獲得した米国が、11位タイで予選敗退。前々回の上海大会を制したオーストラリアが13位で五輪の出場権を逃すなど、波乱が相次いだ。

 その中で日本は、予選で第1泳者の中村が48秒60、続く塩浦が48秒46、小堀が48秒83、アンカーの藤井が48秒87と全員が48秒台でまとめ、各選手の安定感が光った。また4人のうち、100メートル自由形の現日本記録保持者である中村、その中村とトップを争う塩浦に対し、小堀と藤井はそれぞれ本職が200メートル自由形、100メートルバタフライの選手である。現在の第一人者に追随する好記録を出した2人を、塩浦はこう称賛している。

「前回は当時のトップ4人で組み、初めて決勝に進むことができました(結果は8位)。今回はそれができず、リオ五輪の出場枠を取るだけでもすごく大変だと思っていました。小堀が頑張ってくれたし、拓郎さんもずっとこの種目を引っ張ってくれているし、今回もまた頑張ってもらった。おかげで、現時点で最高のパフォーマンスができました」

個の力を高め、チームとして結果を出す

 世界選手権に向け、多くの日本人選手が6月から欧州グランプリ(GP)を戦う中、塩浦は単身イタリアへ渡り、『AND Swim Project』というスプリントチームに参加して強化を進めてきた。藤井も欧州GPから戻ったあとは、入江陵介(イトマン東進)、立石諒(ミキハウス)とグアムで合宿を行っている。今回の代表4人が事前にそろうことはほとんどなく、「引継ぎの練習は2〜3回やっただけ」(藤井)という状態だった。

 今回の日本は、チームとしての連携を高めるのではなく、個人の目標達成に重きを置き、それぞれが役割を果たすことだった。その共通認識の下、個々が自分の練習に集中したことが、結果的にチームとして大きな仕事を成し遂げることにつながった。

リオでさらなる結果を残すために

今回が初代表の中村。課題に挙げたのは、「自分のレースをできるようにすること」 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 五輪の出場枠を獲得した4人が、来年リオでより良い結果を残すためには何が必要なのだろうか。今後に向けた改善点を尋ねると「個の力が強くなっていかないと話にならない」(小堀)、「僕たちはそれぞれのタイムを上げるだけ」(塩浦)と、各自がより自身の力を高めようと強く意識していた。

 藤井は「メダルを取るチームは、予選から切り替えがしっかりできていて、決勝で大幅に記録を上げてくる。そこがまだ日本には足りない」とより具体的な問題点を挙げている。
 特に、中村はその課題を一番実感したようだ。他の3人が決勝でも48秒台でまとめる中、唯一49秒10までタイムを落としてしまった。

「雰囲気で気合いが入り過ぎてしまった感じで、力みが生じました。前半で離された分を後半上げようとして、焦りが生じてどんどん空回りしてしまいました。もう少し(周りに左右されず)自分のレースをできるようにしないといけないと思います」

 選手たちによれば、地元ロシアを応援する大観衆が作り出す雰囲気や重圧、サッカースタジアム内に作られた仮設のプールのため、気候や天気の変化を受けやすいなどの難しさがあるようだ。そういった環境に慣れるという意味では、初の世界選手権となった中村をはじめ、選手たちにはこの日だけでも大きな経験になったことだろう。

 この後も、それぞれの個人種目で決勝を戦うチャンスが残されている。4人にはロシアでもう一度、個人で決勝進出を果たし、さらなる強さを身につけてもらいたい。その経験は、チームとしての強化にもつながるはずだ。

(取材・文:豊田真大/スポーツナビ)
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