移籍を機に北の大地で覚醒。山本拓実と郡司裕也が飛躍を果たした理由にデータで迫る
北海道日本ハムファイターズ・郡司裕也選手、山本拓実投手 【(C)パーソル パ・リーグTV】
シーズン途中の加入ながら存在感を示し、早くもチームの貴重な戦力に
今回は、山本拓投手と郡司選手のこれまでの球歴を紹介。それに加えて、山本拓投手の結果球の割合や球種別被打率、郡司選手の打球方向や球種別打率などのデータをもとに、両選手が移籍を機に成績を伸ばした理由に迫っていきたい。(成績は8月24日の試合終了時点)
2022年にリリーフとして活躍を見せ、今季は移籍を機に安定感を取り戻した
山本拓実投手 年度別成績 【(C)PLM】
そこから2年間は防御率5点台以上と苦しんだが、2022年には中継ぎとして30試合に登板。4ホールドを挙げて防御率3.60と一定の成績を残し、新たな持ち場で存在感を発揮した。続く2023年もブルペンの一角として期待されたが、防御率5.54と安定感を欠き、14試合の登板にとどまっていた。
しかし、北海道日本ハムへのトレード後は既に移籍前を上回る15試合に登板し、防御率1.88と素晴らしい成績を記録。7月9日の千葉ロッテ戦ではショートスターターとして先発し、2イニングを6人で完璧に抑えるなど、幅広い起用に応えてブルペンに厚みをもたらしている。
中日時代は打撃面で苦しんだが、新天地では見事なバッティングを披露
郡司裕也選手 年度別成績 【(C)PLM】
続く2022年はさらなる飛躍が期待されたが、33試合で打率.190と再び打撃面で低迷し、一軍定着は果たせず。そして、2023年も中日での一軍出場はわずかに1試合と、正捕手の木下拓哉選手の牙城を崩せず、一軍の捕手争いに割って入ることができずにいた。
しかし、北海道日本ハムへの移籍後は打率.308、OPS.808と見事な打撃成績を記録。中日では二軍で一塁や外野の守備にも就いていたが、新天地では本職の捕手に加えて、打撃を生かして一塁手や指名打者としてもプレー。8月22日には1試合2本塁打を記録するなどたびたび印象的な活躍を見せ、上位打線を担う機会も多くなっている。
投球の軸になる球が打ち込まれても、カットボールでは1本の安打も許さず
山本拓実投手 2023年球種別被打率 【(C)PLM】
ただし、今季はストレートとシンカーの2球種がいずれも被打率.300以上と、主軸となる球がいずれも打ち込まれている。その一方で、スライダーは被打率.200と一定以上の効果を発揮。そして、カットボールはここまで被打率.000と一度も安打を許しておらず、まさに完璧な結果をもたらしている。
理にかなった配球の変化が、山本拓投手の飛躍のきっかけに?
山本拓実投手 結果球割合(中日時代) 【(C)PLM】
ストレート、シンカー、カーブの3球種は、今季の山本拓投手にとっては被打率がワースト3に入る球となっている。その一方で、被打率の低いスライダーとカットボールを中日時代は多投せず。移籍前に防御率5.54と不振に陥っていた理由の一端は、こうした球種配分にもあったのかもしれない。
山本拓実投手 結果球割合(北海道日本ハム時代) 【(C)PLM】
それに代わって、スライダーとカットボールの割合がそれぞれ10%と、移籍前に比べて上昇に転じている。被打率が比較的高い球種の割合を減らし、被打率の低い球種を増やすという理にかなった配球の変化が、移籍後に見せている好投を引き出している可能性はありそうだ。
センター返しが多い傾向は維持しつつ、打撃に力強さも加わっている
郡司裕也選手 安打方向割合(2022年・2023年) 【(C)PLM】
しかし、今季はサード、レフト、左中間への安打が合わせて8本と、引っ張りの打球も増加傾向にある。さらに、郡司選手は中日時代に1本も放てなかった本塁打を移籍後だけで3本記録しているが、その全てがレフトスタンドに飛び込んでいる。持ち味のセンター返しに加えて、打撃に力強さも加わっていることがうかがえよう。
2022年は速球を苦手としていたが、移籍後大幅に改善
郡司裕也選手 球種別打率(2022年・2023年) 【(C)PLM】
また、2022年の時点でフォークとシュートはいずれも打率.333と得意にしていたが、今季はフォークの打率が.566、シュートの打率が1.000と、驚異的な数字を記録している。それに加えて、前年の打率が.200だったチェンジアップの打率が.750、同.167だったスライダーの打率が.308と、苦手としていた球種を克服しつつある点も見逃せない。
カーブとシンカー・ツーシームに対して、2年続けて無安打となっている点は明確な課題といえる。だが、速球、シュート、フォーク、チェンジアップ、スライダーといったさまざまな球速帯のボールに対応できるようになっている点が、郡司選手の成長ぶりを端的に示しているだろう。
年齢的にもさらなる成長が見込めるだけに、投打の若武者の活躍に今後も要注目
文・望月遼太
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