「令和の怪物」と称された23歳右腕。メジャー挑戦を決めた佐々木朗希の可能性

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佐々木朗希投手 【写真:球団提供】

 高校時代から160キロ超えのストレートを投げ込み、ドラフト会議では4球団が1位で入札。20歳という若さでNPBでは28年ぶりとなる完全試合を達成するなど、入団当初からプロ野球の話題をさらった千葉ロッテ・佐々木朗希投手。今オフにはポスティングシステムを利用し、目標としていたメジャーリーグへの挑戦を決めた。そこで今回は、現在メジャーで活躍している日本人投手のNPB時代と比較しながら、佐々木投手がメジャーの舞台で成功する可能性を探っていきたい。

高い奪三振能力を誇りながら省エネピッチングを実現

NPB 渡米前3年間の投手成績 【ⓒデータスタジアム】

 最初に、あらためて佐々木投手の特徴を考えてみる。上記の表は、佐々木投手と現在メジャーで活躍を続ける大谷翔平選手、山本由伸投手(ともに現ドジャース)、千賀滉大投手(現メッツ)の渡米前3年間のNPB成績をまとめたものだ。その中で佐々木投手は4人の中で最も高い奪三振率11.87をマークしているのに加え、与四球率は1.96と2番目に低い数値を記録。NPB屈指の奪三振能力を誇りながら、制球面で崩れにくい安定感も併せ持っているのだ。1イニングあたり何人の走者を出したかを示すWHIPで0.86を残しているのを見ても、佐々木投手は他の3投手と比べても遜色ない成績を収めているのが分かるだろう。

NPB 渡米前3年間のP/IP 【ⓒデータスタジアム】

 続いて、1イニングあたりの平均投球数を表すP/IPを見ていきたい。一般的に奪三振率が高い投手は、打たせて取る投球が持ち味の投手に比べて球数が増えやすい傾向にある。その中で直近3年の佐々木投手のP/IPは14.83と、他の投手に比べて少ない球数でイニングを終えられているのだ。前述した与四球率やWHIPの数値が示すように、とにかく走者を許していないことが球数の少なさにつながっているのだろう。

 次は1打席あたりの平均投球数を示すP/PAを三振に打ち取った打席に限定して見ていく。これは三振を奪うまでに要した平均投球数を表しているが、佐々木投手は同条件のP/PAで大谷選手らよりも低い4.61をマーク。佐々木投手は単に走者を出さないというだけでなく、より確実に打者を打ち取れる手段である三振を少ない球数で効率良く量産しているピッチャーなのだ。

ゾーン内に投じられても手を出しにくい剛速球

NPB 渡米前3年間のストレート成績 【ⓒデータスタジアム】

 これらの省エネピッチングを実現するには、持ち球の精度の高さも必須となるはず。ここからは佐々木投手の武器である球種のデータを掘り下げていく。

 まずは生命線であるストレートを、渡米前3年間における投球割合が同じく50%を超えている大谷選手と比較していこう。今季の佐々木投手は例年よりもスピードを落としている傾向が見受けられたが、それでも直近3年間の平均球速は157.8キロという異次元の数字をマークしている。また、ストライク率は大谷選手よりも高い72.0%を記録。2024年パ・リーグ投手のストレートストライク率の平均が66.8%だったことを踏まえても、佐々木投手の速球は球界トップクラスの威力を備えながら、高い精度を誇っていることが分かるだろう。

NPB 渡米前3年間のストレートストライクゾーン投球割合 【ⓒデータスタジアム】

 高いストライク率を記録しているストレートをもう少し掘り下げてみよう。ゾーン別の投球割合を見てみると、大谷選手はストレートをストライクゾーン内に投じる割合が49.7%だったのに対し、佐々木投手は59.6%をマーク。佐々木投手は力強い直球をシンプルにゾーン内に集めることにより、高いストライク率を残せていたと考えられる。また、ストライクゾーン投球時の結果内訳を見てみると、佐々木投手のストレートは見逃し率が33.0%を記録。ストレートをゾーン内に多投しながらも、バッターは手を出しにくいという特徴が出ていた。これは佐々木投手の持つストレートの威力だけでなく、もう一つの武器であるフォークが影響しているだろう。

カウントを問わず効果を発揮するフォーク

NPB 渡米前3年間のフォーク成績 【ⓒデータスタジアム】

 そのフォークについても見ていこう。まず注目したいのが投球割合だ。フォークといえば「お化けフォーク」を操る千賀投手だが、佐々木投手は千賀投手以上にフォークを投じてきた。さらにストライク率は60%台中盤とカウント球としても効果的で、どのカウントでもフォークを投じられることが前述したストレートの見逃し率にもつながっていると考えられる。もちろんウイニングショットとしてのデータも申し分ない。奪空振り率や被打率をはじめ、多くの項目でNPB時代の千賀投手に匹敵する好成績をマークしているのだ。千賀投手のフォークはメジャーでも猛威を振るっており、佐々木投手のフォークも通用する可能性を十分に秘めているだろう。

 数々のNPB記録を打ち立てただけでなく、佐々木投手は間違いなく多くのプロ野球ファンの記憶に残る投手である。いまや世界のスター選手となった大谷選手と同じく23歳でのメジャー挑戦。憧れ続けた舞台で、世界に名をとどろかせる活躍を期待したい。

※文章、表中の数字はすべて2024年シーズン終了時点

文・データスタジアム
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