現地記者の日本人選手ラ・リーガ奮戦記(月2回更新)

ソシエダも相次ぐ“VARスキャンダル”の犠牲に……怒りと無力感で体が震えるほどの酷さだ

山本美智子

敗れたソシエダにとって唯一の収穫は

ELからの撤退を余儀なくされたソシエダだが、唯一の収穫は試合後にアルグシアル監督が続投の意向を示唆したことだろう。久保の去就にも影響を及ぼすか 【Photo by Jan Kruger - UEFA/UEFA via Getty Images】

 この日、2本のPKを含むハットトリックを達成したマンUのブルーノ・フェルナンデスは、記念のボールを抱えてスタジアムを後にしたが、そこにはチームメイトのサインとともに、こんな一文が添えられていた。

「How much you paid the ref?」(いくら主審に払ったんだい?)

 勝ったマンUの選手たちから見ても、身贔屓(びいき)なジャッジだったことは明らかであったのだろう。

 一方、ベスト8入りを断たれたソシエダにとって、この試合に何かしらの収穫を見いだすとすれば、それはアルグアシル監督が継続の可能性を示唆したことかもしれない。

 試合後の会見で、「今日がヨーロッパでソシエダの指揮を執る最後の試合になったのか?」と記者に聞かれたアルグアシルは、「そうじゃないことを願うよ」と答えている。

 一部報道によると、「契約更新のオファーがあれば、4月末あるいは5月上旬に回答する」と話したとも伝えられる。クラブが後任の監督を探しているという話も聞こえてこないだけに、どうやら続投の可能性が濃厚なようだ。そうなれば、久保建英の去就にも影響を及ぼすかもしれない。

5分という長い検証の末にやり直しを

長い検証の末にやり直しとなったPKを決めて、土壇場でエスパニョールを下したマジョルカ。好調を維持する浅野の同点ゴールも値千金だった 【Photo by Rafa Babot/Getty Images】

 ラ・リーガでもVAR絡みの不可解なジャッジがあった。3月15日の第28節マジョルカ対エスパニョール戦で、マジョルカに与えられたPKの際に交わされた主審とVARの会話の内容が明かされ、波紋を呼んでいる。

 65分に浅野拓磨の鮮やかなダイビングヘッドでマジョルカが同点に追いつき、迎えた終了間際だった。ホームチームにPKが与えられる。ヴェダト・ムリキが放ったシュートはエスパニョールのGKジョアン・ガルシアがストップしたのだが、VARからの指摘を受けた主審が実に5分という長い検証の末に、やり直しを命じる。すると今度はムリキがきっちり決めて、マジョルカが土壇場で勝利を手にしたのだ。

 PKを蹴った瞬間に、エスパニョールの2人の選手の足がペナルティーアークに入っていたというのがやり直しの理由だったが、それにしても最終的なジャッジを下すまでに時間がかかりすぎだ。勝ったマジョルカのハゴバ・アラサテ監督でさえ、「昨今のジャッジの良くないところだ。気に入らない。VARの介入が多すぎるし、不透明な時間が長すぎる」と不満を口にしている。

 とはいえ、この勝利でマジョルカは、残留確定まであと1ポイントにまで迫った(第28節終了時で勝点40の7位)。第26節のアラベス戦に続いて今シーズン2点目となるゴールを決めた浅野について、アラサテ監督は嬉しさを隠すことなく賛辞のかぎりを尽くしている。

「我々は今シーズンの大半をタク(浅野)抜きで戦わなくてはならなかったが、(故障が癒えた)今、彼はチームに貴重なゴールをもたらしてくれている。今日も鋭敏な動きでスペースをうまく生かし、素晴らしいゴールを決めて、我々を助けてくれた。良くない状況でも観客を盛り上げてくれる存在だ」

 残り10節となったラ・リーガ。開幕前に目標に掲げていた二桁得点も夢ではないと思えるほど、今の浅野は勢いに乗っている。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

スペイン在住は四半世紀超え。1998年から通信員として情報発信を始め、スペインサッカーに関する取材、執筆、翻訳の仕事に従事してきた。2002年と06年のW杯、04年と08年のEUROなど国際大会も現地で取材。12年からFCバルセロナの公式サイト、ソーシャルメディアを担当する

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