五十嵐亮太のプロ野球キャンプリポート2025

阪神・才木浩人、防御率1点台も「物足りない」 五十嵐亮太が驚いた繊細さと大胆さ

構成:スリーライト

「なんとかしのいで」防御率1点台

昨年は13勝3敗、防御率1.83の成績を残しながらも、物足りなさを感じていたと才木は話す 【写真は共同】

五十嵐 トミージョン手術明けから3年続けて防御率1点台をマーク。イニング数も着実に増やしてきていますが、体の疲労は感じていますか?

才木 そこまで感じていないです。1年間フルに投げたのは昨年だけなので、イニングもまだまだ投げていかないといけないです。昨年くらいの成績を2年、3年と続けていかないといけないので、まだまだ物足りないです。

五十嵐 昨年は肩の疲労も含めて、シーズン通して問題なかったですか?

才木 やはり夏場ですね。僕の中では疲れている自覚はないんですが、いまいちボールが行かないなと。バッターの反応を見てタイミングが合っているなとよく感じていました。

五十嵐 物足りなさを感じていながらも防御率1点台で抑えられる。しかも勝ち星もしっかりと積み重ねる。そこは普通の投手では難しいのかなと思います。ご自身の中で、その強さの要因はどう捉えていますか?

才木 昨年はスライダーが使えたことが大きかったと思います。カウント球にスライダー、前半戦では決め球にも使えていました。いつもだったら真っすぐで行くところを、スライダーで曲げるということができていました。僕の中では「できた」というよりも「できてしまっていた」というところなんですが……。スライダーでなんとかしのいで、しのいでという感じでした。

五十嵐 「なんとかしのいで」であそこまでのピッチングをされたら堪らないな(笑)。でもそれができるのはやっぱり一流ですよね。自分のピッチングができなくて勝てないのではなく、できなくても他の引き出しがある。その辺は自信につながるのでは?

才木 そうですね、真っすぐが良くない日は絶対にあるので。そういうときにどんなピッチングができるかが先発投手としてすごく大事なことだと思っています。

一番大切なのは自分のコンディション

五十嵐さんにトレーニングのこだわりについて話す才木 【写真:スリーライト】

五十嵐 オフにどんなトレーニングをしてきましたか?

才木 オフは本当に細かいというか、そばで見ていると「何をしてんねん」と思われるようなメニューをずっとやっていました。ウェイトトレーニングももちろん入れますけど、基本的には自分がきちんとボディコントロールができているか。ちゃんと意図して体を動かせるかどうか、骨の動きを感じ取れるかどうか、そんな細かいところまで徹底してやっていますね。

五十嵐 体を大きく、強くということではない?

才木 ちょっと重いのを持つこともありますけど、細かい動きをやってからですね。もちろんウェイトもすごく大事だと思います。特に僕は手足が長いので、それを扱う筋力も他の人より必要です。絶対にウェイトは必要だと思いますけど、ウェイトをやる以前にちゃんと自分のコアの部分、背骨、体幹、股関節の動き、足首、肩甲骨などの肩回り、その辺の動きを自分でコントロールできるかどうかが大事だと思っています。そこがコントロールできないのに重いウェイトを持っていきなり外側の力を加えても、自分の体をコントロールできないと思うんですよ。実際に僕も結構ウェイトをやっていたときがあって、2019年にケガをしたんですが、2018年に重いウェイトでやっていて、実際に投げたら思ったよりも球速も出ない、変に力が入ってしまう、体への負担も大きくなって、ケガにつながってしまうところがありました。根本的なところをまずしっかりとやって、自分の体をちゃんとコントロールできるようにしてからウェイトです。ウェイトをして筋量が付くと体が変わります。変わったらもう1回体をコントロールできているかをしっかりと確認する。その繰り返しかなと僕は思っていますね。

五十嵐 すごい! 才木投手は試合に入る前にどれくらい相手打者を研究しますか? どこまで自分でプランを立てるのでしょうか?

才木 僕はまったくないですね。プランも何もないです(笑)。捕手に怒られるかもしれませんが、僕の中ではどれだけ自分のコンディションを良くできるかが一番大事だと思っています。もちろんデータを見ますし、ミーティングもします。ある程度バッターの情報は頭に入れますけど、そんなに細かくないですね。1試合投げて、次の週の相手どこかな? バッターのデータを見て今こんな感じだなと把握したら、あとはもう本当に自分が気持ちよく過ごす、いいコンディションを保てるように1週間を過ごすという感じです。

五十嵐 すごく面白いですね。自分の体は繊細にいろんな角度から見るのに、試合のデータはワイルドに。繊細さと大胆さのバランスがすごくいいなと思います。今年、藤川球児監督に変わって、ここまで何か違いは感じますか?

才木 僕の中ではあまり変わらないですね。藤川監督自身が野球に対する姿勢、野球に没頭することをすごく掲げています。アップ1つに対する姿勢やキャッチボールでも練習ひとつひとつに対する姿勢を求めているというのは選手もすごく感じます。基本的に監督が僕らにこれをしろと言うわけでもなく、今のところ自主性に任せて見守っている感じなので、僕らはのびのびとやらせてもらっていますね。

五十嵐 最後に才木投手から見て、今年イチオシの“若虎”を教えてください。

才木 定番になってしまいますが、門別(啓人)ですね。メンタル的に肝が座っているなと感じています。昨年の今頃すごく注目されていたんですけど、初めて実戦で投げるとなったときに、なんかヘラヘラとしているんですよ。「緊張しないの?」と聞いたら「全然しないですね」って。ボールもすごく良い球を投げるんですけど、すごいメンタルだなと。

五十嵐 その性格が吉と出るか、凶と出るかやってみないとわからないところもありますよね。今年も期待されていますし、昨年は何試合か投げましたけどすごく良いボールを持っているので、僕も楽しみですね。才木投手、今日はありがとうございました!

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