全体最下位でB1後半戦に向かう滋賀レイクス 原社長が語る未来への希望と「健全経営」

大島和人

若手獲得の背景にある年俸抑制

岡田泰希(右)はチームの今後を背負う人材 【(C)B.LEAGUE】

 2024-25シーズンのB1は「昇格あり」「降格なし」だ。さらに2026−27シーズンからは「B.LEAGUE PREMIER」(Bプレミア)のカテゴリーが新設され、成績による昇格・降格という概念がなくなる。なお滋賀はBプレミア参入を既に決めている。

 バスケでもサッカーでも、降格しそうなチームは目先の勝利を何としてももぎ取ろうとする。シーズンの半ばになれば、緊急補強でカテゴリーを守ろうとする。

 筆者は「降格がない故のゆとり」を滋賀から感じ取っていた。しかし原社長はその見方を強く否定する。

「健全経営に舵を切ってやっている中で、降格があったから、無いからということは関係ありません。昨季はオーナー関連企業に勝負に出る意思決定をしていただいた、特別なシーズンでした。今季もまだ健全経営化に向けてはギャップがあるので、その中で最大限の費用を投じて今季のロスター編成が完了しました」

 滋賀はコロナ後に筆頭株主が3度交代している。現在はサン・クロレラ社の代表取締役社長を務める中山太氏が「個人オーナー」として筆頭株主になっている体制だ。サン・クロレラ社はオフィシャルパートナーとしてチームを支援しているものの、責任企業(親会社)ではない。大企業の信用を生かせる、直接の支援が入るクラブに比べると無理は効かない。

 B2からB1へ復帰を決めた2023-24シーズンのトップチーム人件費は3億9099万円だったが、今季は昨シーズンより減っていると原社長は明かす。実績のある選手を獲得できない中で、若手に賭けざるを得ない側面も間違いなくある。

 ただ滋賀は人材を複数年契約で抑えて、チームとともに成長していく戦略を採っている。リスクはあるものの、リーズナブルな発想だ。

 なおBプレミア初年度の2026−27シーズンは各チームの選手人件費が「5億円以上」に設定される。再来シーズンまでに「人件費を5億円以上出せる経営力」を構築することはオフ・ザ・コートの大きな課題だ。

まず目指す最下位脱出

野本大智(中央)は1月29日の長崎瀬で17点と大活躍を見せた 【(C)B.LEAGUE】

 ここまでの戦績は別にしても、滋賀の若い日本人ガードがリングにどんどんアタックしていくスタイルは魅力的だ。一方でプロスポーツは人件費が大きなファクターで、彼らも個の成長が「B1で勝つ」段階まで届いていない。

 1月29日(水)の長崎戦は、89-101の敗戦だった。試合後にキャプテンの野本はこう口にしていた。

「シーズンの序盤に苦しんでいた(岡田)泰希が今、いい状態になっていています。個人個人はみんな成長していると思いますし。チームとしても成長しているけど、それを勝てるレベルにまで持っていかないといけません」

 4000人を超えた同日の観客に対してはこう語っていた。

「滋賀レイクスに5シーズンいた中で、あまり勝てないシーズンがほとんどでしたが、今はワーストというくらい勝てていません。キャプテンとして自分がいる中で、そういった状況なのは本当に悔しいです。ただ悔しいで終われないし、これから自分たちがどうしていくかだと思います。平日で、まだ3勝という中で、こんなにたくさんのお客さんに応援していただけているのは当たり前でないし、そこにいち早く応えたい」

 滋賀にはプロ野球やJリーグのチームがなく、多くの県民にとってレイクスは「オンリーワン」の存在だ。なかなか勝てない中でも、アリーナの空気は決して悪くない。情報開示・発信という部分もこのクラブは優等生だ。足りないものがあるとすれば、シンプルに「結果」だろう。

 原社長は今季の成績についてこう口にする。

「一つでも上にというメンタリティで後半戦に臨んでいこうと思っていますが、まずは最下位脱出。となると10勝以上はしなければいけませんし、簡単ではないハードルにチャレンジすることになりますが、それが来シーズンにもつながるはずです」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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