欧州中堅&下部リーグでプレーする日本人選手の前半戦通信簿【前編】北欧で躍動する18歳が“非5大リーグ”のMVP

河治良幸

欧州挑戦1年目の松木(左)はトルコ、ベルギー2部のロンメルからチャンピオンシップのQPRに期限付き移籍した斉藤(右)はイングランドの地で奮闘 【Photo by Adem Kutucu/Anadolu via Getty Images, Photo by MB Media/Getty Images】

 ヨーロッパでプレーする日本人選手は多いが、そのなかでも5大リーグ(イングランド、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスの1部)で活躍する選手に注目が集まりがちだ。ここでは同じ「欧州組」でも、メディアで取り上げられる機会が多くない中堅リーグ、そしてイングランドやドイツなどの下部リーグの選手にフィーチャー。30人をピップアップし、各選手の今シーズン前半戦のパフォーマンス、活躍ぶりをS、A、B、C、Dの5段階で評価した。今回はその前編。5大リーグに準ずるレベルにあるポルトガルやトルコ、さらに北欧や東欧諸国、イングランド2部のチャンピオンシップのクラブに在籍する15人の「通信簿」をお届けする。なお、情報があまり伝わってこない選手を優先して紹介するという観点から、5大リーグ以外のプレーヤーでも、昨秋にスタートしたW杯アジア最終予選で招集歴がある現日本代表は対象外とした。

藤本寛也(MF)/ジル・ヴィセンテ(ポルトガル)

特に序盤戦のパフォーマンスは素晴らしく、9月・10月のリーグ最優秀MFに選出された 【Photo by Gualter Fatia/Getty Images】

前半戦の通信簿:A
 2020年夏に東京ヴェルディからポルトガルに渡った左利きのテクニシャンは、ジル・ヴィセンテで5年目のシーズンを戦っているが、「10番」を背負っていることが示す通り、攻撃の中心として君臨。4-3-3のインサイドハーフをメインにプレーし、ホームでのAVS戦(第2節)でハットトリックを記録するなど、ここまで5得点・3アシストと結果を出している。5大リーグへのステップアップや森保ジャパンへの選出にはもうひと押しほしいところ。

福井太智(MF)/アロウカ(ポルトガル)

前半戦の通信簿:B
 2023年1月にサガン鳥栖から飛び立った若武者は、主にBチーム(ドイツ4部リーグ)で活動していたバイエルンから、昨シーズン後半戦にプレーしたポルティモネンセと同じポルトガル1部のアロウカに、買い取りオプション付きのレンタルで移籍。序盤戦は継続して先発起用され、ボランチとして攻守に奮闘するも、なかなか結果がついてこない状況で、この1カ月ほどはベンチスタートが続く。最後まで出番がない試合も少なくなく、出場しても終盤の短い時間のみ。シーズン後半戦は、欧州で生き残っていけるかどうかの正念場だ。

松木玖生(MF)/ギョズテペ(トルコ)

前半戦の通信簿:A
 FC東京から、今季プレミアリーグに昇格したサウサンプトンに完全移籍。そこから欧州での実戦経験と英国ビザ取得のため、オーナーが同一のギョズテペで武者修行することになったが、コンディション不良で出遅れて、当初はなかなかスタメン起用されなかった。しかし、徐々に持ち前の力強いプレーを見せるようになり、11月10日(現地時間)のコンヤルスポル戦で初ゴール。利き足でない右足を使った意欲的なプレーも目につき、ここまでアシストは3つ記録している。

常本佳吾(DF)/セルヴェット(スイス)

右サイドバックとして開幕からフル稼働。リーグ第2節には、ロングスプリントでボックス内に飛び出し、スイスでの初得点をマークした 【Photo by Pier Marco Tacca/Getty Images】

前半戦の通信簿:A
 昨シーズンは鹿島アントラーズでも師事したレネ・ヴァイラー監督の下でチャンスをつかみ、スイスカップ優勝に大きく貢献。リーグのベストイレブンにも選出された。その恩師がフロント入りし、トーマス・へーベリ新体制下で戦う今シーズンも右サイドバックの定位置は譲らず、リーグタイトルの獲得に向けて好位置につけるチームで存在感を示す。攻撃的な3バックのシステムに移行した日本代表に招集されるのは簡単ではないが、セルヴェットでのパフォーマンスを考えればその資格は十分ある。

小田裕太郎(FW)/ハーツ(スコットランド)

前半戦の通信簿:D
 ヴィッセル神戸からスコットランドに渡り、徐々に結果を出して迎えた3シーズン目は本格的な飛躍が期待されたが、9月に筋肉系の怪我で戦線離脱。12月に戦列に戻ったものの、自身の欠場中に就任したニール・クリッチリー新監督のチームでどういう扱いになるのかはっきり見えていない状況だ。昨シーズンもハムストリングやふくらはぎの負傷で離脱しており、欧州で戦い抜くためにはタフを身につけたい。

鈴木唯人(FW)/ブレンビー(デンマーク)

リーグ戦の全17試合に出場。得点ランキング7位タイの6ゴールを挙げている 【Photo by Foto Olimpik/NurPhoto via Getty Images】

前半戦の通信簿:A
 2年目のブレンビーで、9得点をマークした昨シーズンを超える勢いでゴールを重ねている。3-4-2-1の左シャドーがメインのポジション。2列目を幅広く動きながら、ボールを持って前を向けばシュートに持ち込む意識の高さが結果につながっている。5大リーグ進出も秒読みと言えるかもしれない。

小杉啓太(DF)/ユールゴーデン(スウェーデン)

24年春に加入したスウェーデンの強豪で勇躍。欧州カップ戦でも実力を示しており、3月に新シーズンが始まる国内リーグでさらなる活躍が期待される 【Photo by Michael Campanella/Getty Images】

前半戦の通信簿:S
 “非5大リーグ”の日本人選手では、ここまでのMVPと言っても過言ではない。U-17W杯でキャプテンを務めた小柄なファイターは、湘南ベルマーレのユースからトップには昇格せず、トライアルの形で北欧に渡って契約を勝ち取り、奮闘。4-2-3-1の左サイドバックで躍動し、11月にシーズンが閉幕したスウェーデンリーグはもちろん、欧州カンファレンスリーグでも勝利に貢献している。ロス五輪世代の日本人選手では、市場価値はダントツのトップだ。

古川陽介(MF)/グールニク・ザブジェ(ポーランド)

前半戦の通信簿:B
 ジュビロ磐田から昨夏に加入したグールニク・ザブジェで、途中出場から少しずつチャンスを得て、自慢のドリブルを惜しみなく繰り出している。明るいキャラクターで、チームにも溶け込んでいる様子。11月24日(現地時間)のピアスト・グリヴィツェ戦では決勝弾となる初ゴールを記録した。ただ、チームの顔である元ヴィッセル神戸のルーカス・ポドルスキと前線で絡むシーンも多く見られるなかで、1得点・1アシストという結果には本人も満足していないだろう。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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