24年最終戦の爆発を呼んだ町野修斗の強烈な自信 “有言実行の男”が後半戦のブレイクを予感させる
アウクスブルクとの24年ラストゲームで2ゴール・2アシストの大活躍。町野がいつも以上に喜びをストレートに表現したのは、耐え忍んだ時間の長さゆえだろう 【Photo by Frank Molter/picture alliance via Getty Images】
「ついに」と思うと同時に安堵が
「キール 4-1 アウクスブルク」
14試合を終えて1勝と苦しむチームが前半のうちに大量得点を奪っていることにも驚いたが、次に飛び込んできた言葉を見てすぐにパソコンを開いた。
「町野修斗、39分ゴール」
声が出そうになりながらも興奮を抑えて速報をスライドすると、町野がゴールだけでなく、すでにアシストを2つ記録している事実が綴られていた。「ついに」と思うと同時に、苦しむ姿を見てきたからこそホッと安堵する。
試合後、ホルシュタイン・キールの結果を見ると、町野はゲーム終盤にさらに1得点を決めて、2ゴール・2アシストの大活躍だったことが分かった(最終スコアは5-1)。ドイツメディアもこの日本人ストライカーを大々的に取り上げて称賛している。
1週間前、ある言葉を聞いていただけに、「まさに有言実行だ」――そうつぶやかざるを得なかった。
チームの不振が町野の立場を難しくした
14節のボルシアMG戦は62分からの出場。攻撃面で違いを作り出せずにチームも敗れ、試合後には「どうしたらいいか分からない」と素直な胸の内を吐露した 【Photo by David Inderlied/picture alliance via Getty Images】
だが、チームが失点を重ねるなかで、出番はなかなか回ってこない。結局、1-3のビハインドを追っていた62分に3人目の交代選手としてピッチに立ったが、短い時間で印象的なパフォーマンスを残すことはできず。シュートも無理矢理打ちにいった1、2本程度で、求められる攻撃面での違いを作り出せなかった。
試合後、町野に現状を問うと、苦虫をかみ潰したような表情で言葉をこぼした。
「割と調子は悪くないんです。だけど、なぜかスタメンから外れることが多い。だから、どうしたらいいか分からないですね」
素直な言葉だった。それだけに、いかに難しい状況にあるかがよく理解できた。開幕からの5試合で4ゴールを奪い、得点ランキングでも上位に入ったことで、「今すぐ日本代表に」と騒がれた時期とは大きく状況が異なる。もがいても、もがいても答えが見つからない。出口のない迷路に迷い込んでしまったような、そんな雰囲気さえ感じた。
町野の立場を難しくしたのは、チームの極度の不振だった。昨季の2部リーグで2位となり、ブンデスリーガ1部初挑戦となったキールは、開幕からの10試合でわずか1勝とスタートで大きくつまずく。序盤戦こそ攻撃的なサッカーを志向していたものの、なかなか勝ち点を得られなかったことで少しずつ守備を意識した戦術へと変わり、それに伴って町野の出番も徐々に減っていった。
ピッチに立てば、存在感を発揮していた。2トップの一角で出場すれば前からのプレッシングで周りを押し上げ、ゴール前でシュートチャンスにも絡んだ。トップ下のようなポジションで起用されれば、巧みにボールを引き出し、バイタルエリアでアクセントをつけた。
ただ、そこで目に見える結果を残せなかったため、”後半の勝負どころで投入する”という起用法に落ち着いていったのだ。