「知られざる欧州組」の現在地

欧州中堅&下部リーグでプレーする日本人選手の前半戦通信簿【後編】 ベルギーの強豪で守備陣を束ねるCB、ドイツ2部で評価高騰のレフティ…

河治良幸

毎熊(左)と伊藤(右)はともに今シーズンが欧州初年度ながら、それぞれオランダのAZ、ベルギーのヘントでレギュラーの座を掴んだ 【Photo by Rico Brouwer/Soccrates/Daniela Porcelli/Getty Images】

 ヨーロッパでプレーする日本人選手のなかでも、5大リーグ(イングランド、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスの1部)以外の舞台で奮闘するプレーヤーに焦点を当て、それぞれのシーズン前半戦を振り返る企画の後編だ。今回取り上げるのは、オランダ、ベルギー、ドイツ2部のクラブに所属する15人。各選手のパフォーマンス、活躍ぶりをS、A、B、C、Dの5段階で評価した。なお、情報があまり伝わってこない選手を優先して紹介するという観点から、“非5大リーグ”の選手であっても、昨秋にスタートしたW杯アジア最終予選で招集歴がある現日本代表は対象外にしている。

毎熊晟矢(DF)/AZ(オランダ)

前半戦の通信簿:B
 昨年夏にセレッソ大阪からオランダに渡り、菅原由勢のサウサンプトン移籍で空いた右サイドバックのポジションにそのままハマる形に。元ベルギー代表MFのマールテン・マルテンス監督の信頼を掴み、スピードを活かして攻守両面で存在感のあるパフォーマンスを続けている。その攻撃性能を考えれば、アシストなど目に見える結果もほしいところ。そうすれば、おのずと個人としての価値を上げることになるはずだ。

佐野航大(MF)/NEC(オランダ)

中盤センターが主戦場だが、サイドアタッカーとしても機能。開幕戦以来遠ざかっているゴールや、ここまでゼロのアシストがほしい 【Photo by Broer van den Boom/BSR Agency/Getty Images】

前半戦の通信簿:A
 5年契約で加入した昨シーズンから着実に出場時間を伸ばして、今シーズンは押しも押されもしない中盤の主力に。複数のシステムに順応して、攻守のバランスワークをこなしながらダイナミックな攻撃参加も見せている。チームは中位にとどまっているが、後半戦に勢いに乗れば欧州カップ戦圏内まで浮上できるはず。その意味でも佐野にはゴールに直結する仕事が求められる。

塩貝健人(FW)/NEC(オランダ)

前半戦の通信簿:B
 特別指定選手としてプロデビューを果たし、内定も出ていた横浜F・マリノスには行かず、慶應大を休学して昨年夏にオランダへ。ここまで途中出場が続いているが、KNVBカップ(国内カップ)のズヴォレ戦で初得点。しかも、右サイドの突破からニアサイドに突き刺すスーパーゴールで、現地ファンの度肝を抜いた。守備面や起点となるプレーなどもっと磨く必要がある部分も多いが、最大の武器であるシュート力をどんどん発揮していく時期でもあるだろう。

三戸舜介(FW)/スパルタ(オランダ)

前半戦の通信簿:C
 昨シーズンの冬の移籍市場で、アルビレックス新潟からスパルタに加入した直後はインパクトのあるプレーで、一時は当時のチームメイトで同じサイドアタッカーの斉藤光毅(現QPR)を上回る存在感を示していた。しかし、さらなる活躍が期待された今シーズンは新鋭のモハメド・ナッソーやカミール・ネグリといった選手に後れを取り、大半が途中出場。ウインターブレイク直前の2試合は右ウイングでスタメン起用されたが、勝利をもたらす働きはできなかった。

渡辺剛(DF)/ヘント(ベルギー)

2年目のヘントで最終ラインの柱として君臨する。主将クムスが不在の試合ではキャプテンマークを巻くことも 【Photo by Isosport/MB Media/Getty Images】

前半戦の通信簿:A
 ベルギーの強豪ヘントで2シーズン目となるが、センターバックとして国内リーグ、欧州カンファレンスリーグ(本選)とも全試合フル出場。力強い1対1、安定したライン統率など、最終ラインで貫禄のあるプレーを見せながら、スタンダール・リエージュ戦ではセットプレーからヘディングで先制ゴール、シント=トロイデンとの2試合でいずれもアシストを記録するなど、攻撃面でも貢献している。1年半前にコルトレイクから移籍し、契約は2年半残っているが、5大リーグへのステップアップの土台は十分にできている。

伊藤敦樹(MF)/ヘント(ベルギー)

前半戦の通信簿:B
 日本人が多く活躍するベルギーとはいえ、昨夏に加わった強豪ヘントで素早くチームにフィットし、中盤の主力として上位争いを支えているのはさすが、日本代表の経験者だ。しかし、立て続けに3点を失った年末のサンジロワーズ戦がそうだったように、悪い流れを止めたり、チームの攻撃に勢いをもたらすといった役割までは十分果たせているとは言い難い。得点、アシストという数字を残すことも含めて、さらに存在感を高めたい。

小久保玲央ブライアン(GK)/シント=トロイデン(ベルギー)

デビューした第4節からリーグ戦の全試合でスタメン。チームの失点はリーグで2番目に多いが、これはGKだけの責任ではない 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

前半戦の通信簿:B
 現在セリエAのパルマで活躍する鈴木彩艶の後釜として、多大な期待を受けてシント=トロイデンに加入。パリ五輪後に途中合流し、第4節からゴールマウスを預かった。ただ、脆弱な守備をともに立て直していた谷口彰悟が故障離脱すると、直後のクラブ・ブルージュ戦で7点を奪われるなど失点がかさみ、守備の崩壊を食い止められない状況だ。ビッグセーブでチームを救うシーンも目立つが、後半戦に失点を減らすためには守備組織をどうオーガナイズできるかがカギになりそうだ。

伊藤涼太郎(FW)/シント=トロイデン(ベルギー)

前半戦の通信簿:C
 複数のシステムを使い分けるチームにあって、ボランチからトップ下、ウイングまで幅広くこなしていることは評価できる。ただ、「決定的な仕事」という基準で見ると、ここまで十分な働きだとは言い難い。もちろんチームが波に乗れず、監督交代やシステム変更もあったなかで、守備に労力を割かれている部分もあるが、現状を打破しないと、ベルギーでベースを作ってステップアップ移籍するという未来は描きにくい。

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著者プロフィール

セガ『WCCF』の開発に携わり、手がけた選手カード は1万枚を超える。創刊にも関わったサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で現在は日本代表を担当。チーム戦術やプレー分析を得意と しており、その対象は海外サッカーから日本の育成年代まで幅広い。「タグマ!」にてWEBマガジン『サッカーの羅針盤』を展開中。

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