二軍成績から見る12球団の「有望株」ーセ・リーグ編ー

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広島の常廣羽也斗は昨季、二軍戦12試合に登板した。2年目の今季への期待は大きい 【写真は共同】

 春季キャンプが始まり、いよいよ幕を開けた2025年のプロ野球シーズン。徐々に紅白戦や練習試合など実戦の機会が増えてきた。ルーキーや外国人選手といった新戦力が話題の中心となることも多い時期ではあるが、チームがリーグ優勝を目指す上では若手の成長や台頭が必要不可欠である。本コラムではこれから本格化する対外試合を前に、昨季の二軍成績から今後の飛躍が期待される若手を中心に取り上げる。

※本文は2025年2月8日時点の情報をもとに執筆
※選手年齢は2025年12月31日時点
※表中の平均球速はストレートの球速、および単位はkm/h

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 オフに主力投手の退団が相次いだこともあり、新たに台頭する選手が待たれる中日の投手陣。その中でまず注目したいのが、現役ドラフトで加入したプロ3年目の伊藤茉央だ。
楽天でプレーした昨季はピンチでの火消しやロングリリーフなど幅広い起用に対応しながら、二軍でチームトップとなる41試合に登板。制球面に課題を残したが、被打率や奪三振率で優秀な成績をマークし、右のサイドハンドとして確かな存在感を示した。今春のキャンプでは早速一軍メンバーに選出されたことからも、首脳陣の期待の高さがうかがえるだろう。

 昨季、ルーキーながら開幕一軍入りを果たした土生翔太も注目したい若手の一人。二軍では奪三振率、与四球率ともにリーグ平均より優れた数字をマーク。被打率こそ3割台と振るわなかったものの、ポテンシャルの高さは折り紙付きの剛腕投手だ。

 育成選手として加入した三浦瑞樹は、緩急を駆使した投球が持ち味のサウスポー。ソフトバンクでプレーした昨季は二軍で14先発を含む15試合に登板し、リーグトップの防御率1.60で最優秀防御率のタイトルを獲得している。春先のアピール次第では早期の支配下昇格に加え、ローテーション入りも十分に考えられるだろう。同じく育成選手の石川翔は昨年6月にトミー・ジョン手術から実戦復帰し、ストレートは最速157キロを計測。チーム屈指のスピードボールを備えているだけに、制球面の改善が見られれば支配下復帰が一気に近づくはずだ。

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 一方の野手陣では、樋口正修が昨季二軍で92試合に出場してチームトップの21盗塁をマーク。課題としていた打撃面でも前年を上回る打率.267を記録するなど、確かな成長を見せた。持ち味のスピードとレベルアップを果たしたバッティングで、プロ入り3年目の今季は一軍での出番を増やしたい。

 昨季の開幕前に支配下契約を勝ち取った尾田剛樹は、一軍で主に代走や守備固めとして65試合に出場。打撃面で結果を残せなかったが、二軍戦やオフのアジア・ウインターリーグではバットで好成績をマークした。走攻守にプレーの精度を高められれば、スタメン出場の増加も十分に見込めるはずだ。

 また、この2選手と同じく脚力が持ち味の濱将乃介は、昨季二軍で前年を上回る打率をマーク。三振割合、四球割合の数字も大幅に良化しており、打撃の確実性が増しているのは間違いない。待望の一軍デビューを果たすべく、今季もさらなる成長をアピールしたいところだ。

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 昨季は一軍、二軍ともにチーム防御率がリーグ下位に低迷するなど、投手陣全体の底上げが必須といえるヤクルト。その中で先発候補として期待が大きいのが、プロ2年目を迎える松本健吾だ。ルーキーイヤーの昨季は一軍でのプロ初登板で無四球完封をマークし、二軍でも計14登板で防御率2.49、与四球率1.95と安定した成績を残している。球威の向上次第では、ローテーションの中心を担う可能性を秘めているだろう。

 高卒8年目の金久保優斗も台頭が待たれる投手の一人だ。昨季は一軍登板が5試合にとどまった中、7月26日の広島戦では2回2/3を無失点6奪三振と持ち味を発揮。二軍では16試合に登板して防御率3.94という成績に終わったが、被打率と与四球率は前年から確かな改善を見せた。

 新加入組で注目なのは、育成入団のサブマリン・下川隼佑。昨季はオイシックスに所属し、先発と救援の両方をこなしながらイースタンで40試合に登板。速球とスライダーのコンビネーションでリーグ最多となる102奪三振をマークした。今春のキャンプでは一軍メンバーに抜てきされるなど首脳陣の期待も高く、球界でも希少なアンダーハンドとして実戦で存在感を示したい。

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 野手陣で頭角を現してきているのは育成出身の橋本星哉だ。昨季は二軍でチームトップタイの7本塁打をマークし、地元開催となったフレッシュオールスターでは2安打4打点の活躍でMVPを獲得。また、捕手登録ながら今春のキャンプではサードの練習に注力するなど、シーズン終了後のメジャー挑戦が有力視されている村上宗隆の後継者としても注目される選手だ。

 5年目を迎える赤羽由紘は昨季二軍でOPS.734を記録するなど、あらゆる項目でリーグ平均を上回る好成績をマーク。夏場に骨折による離脱があったものの、一軍では36試合に出場して打率.241、2本塁打、4盗塁と着実にステップアップを果たしている。

 さらに下の世代では、2名の内野手に注目したい。長打力が武器の西村瑠伊斗は、昨季二軍でチーム最多の113試合に出場。本塁打こそゼロに終わるも、前年を上回るOPS.538をマークした。今季2年目を迎える伊藤琉偉は持ち味の俊足を生かし、昨季二軍で11盗塁を記録している。ただ、両選手ともに三振割合が20%台とバッティングの確実性に課題を残しているだけに、今季はより一層のスキルアップを期待したいところだ。

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 広島の若手投手陣でまず注目したいのが、2023年ドラフト1位の常廣羽也斗だ。1年目の昨季はコンディション不良により出遅れたものの、二軍で12試合に登板。9月8日に完封勝利を挙げると、同月15日には一軍デビュー戦に臨み、5回1失点で白星をつかんだ。今季は主戦場を一軍に移し、ローテーションの一角として活躍が期待される。

 その常廣と同学年の高太一はルーキーイヤーの昨季、二軍で先発と救援合わせて14試合に登板。シーズン中盤までは打ち込まれる場面が目立ったものの、9月の3先発ではいずれの試合も5回以上を3失点以下に抑えるなど一定の結果を残した。今季は開幕から安定した投球を続け、首脳陣にアピールしたいところだ。

 救援陣では、益田武尚がサイド気味のフォームに変更し、二軍での与四球率が前年の6.22から3.05まで大きく改善。一軍のマウンドでは思うような成績を残せなかったが、課題である制球難克服の兆しを見せた。益田と同じく社会人出身3年目の長谷部銀次は、昨季二軍で防御率1.17の好成績をマーク。キレのある速球と奪空振り率19.6%を誇るカットボールを武器に、リーグ平均を大きく上回る奪三振率8.61と持ち味を発揮した。左のリリーフとして、今後大きく飛躍する可能性を秘めた投手といえるだろう。

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 昨季は一軍のチーム打率、本塁打数がリーグ最下位に沈んだこともあり、一層の奮起が求められる野手陣。持丸泰輝は昨季二軍の捕手としてチーム最多の56試合にスタメン出場し、実戦経験を蓄積。成績面では三振割合を前年から約20%減少させたほか、1割台だった打率を.268まで上昇させるなど、バッティングで成長をアピールした。今春のキャンプも一軍スタートとなるなど首脳陣の期待の高さもうかがえるだけに、春先のアピール次第では開幕一軍入りをつかむ可能性もあるだろう。

 育成出身の佐藤啓介はルーキーイヤーの昨季、二軍で17試合連続安打を放つなど3、4月度のファーム月間MVPを受賞。6月に支配下契約をつかみ、一軍ではプロ初安打を放った。本職である二塁は菊池涼介が長年レギュラーを務めるポジションだが、与えられたチャンスで結果を残して一軍定着を図りたい。

 育成4年目を迎える前川誠太は三振割合が低く、バットコントロールに秀でた打者だ。昨季は二軍で前年を上回る打率.277、3本塁打をマークするも、念願の支配下契約は勝ち取れず。オフに左足首の手術を受け、開幕に間に合うかは不透明だが、早期の実戦復帰を果たしてアピールを重ねてほしいところだ。

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日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

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