サッカーと野球~プロスポーツにおけるコンバートの意義

「大谷翔平は外野手でGG賞を獲れる」 元メジャーリーガー田口壮が太鼓判

平尾類

大谷がもし外野手としてプレーしたら……。いったい、どんなパフォーマンスを演じるのか 【Photo by Jayne Kamin-Oncea/Getty Images】

 大谷翔平がファンの期待を超える活躍を見せ続けている。今季は移籍1年目のドジャースで、打率.310、54本塁打、130打点、59盗塁をマーク。本塁打、打点の2冠に輝き、メジャー史上初の「50本塁打&50盗塁」を達成した。ドジャースを4年ぶりの世界一に導く最高のシーズンとなった。
 
 来年は投手と打者の「二刀流」が復活する。投打でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだ。ただ、打者に専念した今季の活躍を考えると、DHではなく仮に外野で起用されたら……という想像も膨らむ。現役時代にオリックスで球界を代表する外野手として活躍し、メジャーリーグでワールドチャンピオンにも輝いた田口壮氏は、大谷の外野手としての能力に太鼓判を押す。

移籍してすぐにあれだけ活躍するのはすごい

ゴールデングラブ賞を5度受賞した外野の名手で、メジャーでも8年間プレーした田口氏。大谷の外野手としての可能性を語ってくれた 【撮影:平尾類】

 大谷翔平は日本ハムで2013年から17年までプレーした。田口壮氏は11年を最後に現役引退し、16年に指導者としてオリックス復帰後も最初の3年間は2軍監督だったため、対戦相手として大谷のプレーを見る機会はほとんどなかった。ただ、野球評論家だった13年に、日本ハムの春季キャンプで印象に残る出来事があったという。

「大谷選手に『田口です。よろしくお願いします』と挨拶したら、『大谷翔平です。よろしくお願いします』って。なかなか自分の名前を名乗って挨拶する人はいない。当時は高卒1年目でしたけど、丁寧で気遣いがしっかりできる選手だと感じました。

 コミュニケーションで使う言葉って人間性が出ると思うんですよね。僕の現役時代、毎年オープン戦に出場したときに必ず名前を呼んでくれたのが、原辰徳さん(元巨人)と石毛宏典さん(元西武、ダイエー)でした。原さんはサード、石毛さんはショートを守っているんですが、『田口、頑張れよ』と毎年声を掛けていただいた。大先輩の偉大な方が僕みたいなペーペーを知っていると勇気が湧くし、うれしい。大谷選手とは挨拶しか交わしていないですけど、心に残る受け答えでした」

 田口氏はオリックスのコーチと2軍監督を今季まで9年間務めていた。大谷の一挙手一投足を確認していたわけではないが、メジャーで8年間プレーしただけに、意外な観点で大谷のすごみを語ってくれた。

「技術面で素晴らしいことはファンの方も十分に分かっていると思います。僕がすごいと感じたのは、移籍してすぐにあれだけの活躍を見せたことです。僕がカージナルスからフィリーズに移籍したとき、『おまえ、誰?』という雰囲気でした。全ての経験が初めてなので、球場の入口がどこにあるかも自分で確認しなくてはいけない。

 大谷選手はスーパースターなのでドジャースの受け入れ態勢はできていると思うんですけど、新天地ですぐ溶け込めるのか、誰と仲良くなれるか気になったと思うんです。ご結婚されて、奥さまにも重圧が掛かる。2人で乗り越えなければいけない。実際に『打つでしょ』と周囲に思われて重圧はあったと思います。1本目の本塁打が出るまで少し時間が掛かりましたしね。でも、シーズンを終えたときにあれだけのすごい成績を残して、環境に適応する能力に驚かされました」

打撃のパフォーマンスが上がることはあっても下がることはない

外野を守ったとしても、成績が落ちることはないと田口氏。守備につけば試合の流れに入ることができ、打撃にもいい影響を及ぼすという 【Photo by Jim McIsaac/Getty Images】

 大谷は指名打者でメジャー初のMVPに輝いた。守備での貢献度が加算されないため、過去に指名打者で出場していた強打者たちはMVPにたどり着けなかった。歴史を塗り替えたが、もし外野を守ったらどのような成績を残すだろうか。田口氏は活躍に太鼓判を押す。

「外野を守ることで、盗塁数を含めて打撃の成績が落ちることはないと思います。守ることで負担が増えるかといったら、多少増えるかもしれないけどそこまで変わらない。むしろ、指名打者は打席が回ってくるときに試合に出るので、リズムをつかみにくいんです。僕は苦手でしたね。ベンチ裏で体を温めてから打席に向かうけど体が動かない。

 守備につくと試合の流れに入れるので、打席にスムーズに入れます。大谷選手は指名打者でリズムをつかんだと思うんですけど、守ることで打撃とメリハリがつく。守備につくことで打撃のパフォーマンスが上がる可能性があっても、マイナスになることはないと思います」

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著者プロフィール

1980年4月10日、神奈川県横浜市生まれ。スポーツ新聞に勤務していた当時はDeNA、巨人、ヤクルト、西武の担当記者を歴任。現在はライター、アスリートのマネジメント業などの活動をしている。

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