広島・秋山翔吾が振り返る「悪夢の9月」と懺悔の思い カープ打線の長打力不足の要因を独自分析

三和直樹

本塁打よりもヒットを優先する思考回路

NPB通算1500試合出場も達成した秋山。多くの経験を積んだ男だからこそ“見えるもの”がある 【写真は共同】

 広島の長打力不足について、秋山は“山賊打線”の一員だった西武時代を思い起こしながら、さらに続ける。

「ホームランバッターがホームランを打つ練習を、西武の時とかは中村(剛也)さんとか山川(穂高)とかはやっていた。僕にはそう見えていた。でもフェンスまで届かないホームラン練習って、やっぱり楽しくないじゃないですか」

 今季はNPB全体として投高打低が顕著で「低反発球」の影響も指摘されたが、そこに輪をかけて本塁打が“打ちにくい”マツダスタジアムでは、打者はどうするのか。秋山は「じゃあ逆方向に打って、(距離ではなく)打つ幅を広げよう、となる。そうすると、打つ側は(スイングに)制限がかかる」と説明する。

 さらに、そこにチーム内での競争が加わる。「中途半端に5発、10発打って2割2分とかで出れるか。じゃあ2割6分、7分で5本の方が出れる、とか…。他球団と比べたいところもあるけど、やっぱりチーム内で競争しないといけない」。選手たちは、より“使ってもらえる”打ち方を優先し、本塁打よりもヒットを狙うようになるというのだ。

 だが、決してマツダスタジアムで本塁打量産が不可能な訳ではない。秋山も「広島でも、丸(佳浩)くんが40発(2018年に39本塁打)打ったり、鈴木誠也くんがバカバカホームラン打ってた(2016年から6年連続20本塁打以上)っていうこともあるので、できないことではない」と認める。それでも「今いる選手の中でやるってなると、結構限られてるのかなっていうふうに思います」というのが、正直なところのようだ。

37歳となる来季へ向けて

 だが、本塁打が少ないからと言って点が取れない訳ではない。単打でも塁に出て、機動力を交えながらチャンスを広げ、ここぞの一打があれば、理論上は得点を奪える。その粘りがカープらしさでもある。

 そして広島の夏を乗り切る体力も必要になる上で、シーズン終盤、さらにポストシーズンを勝ち抜くためには“勢い”も大事になる。今季、その“勢い”をつかんで26年ぶりの日本一に輝いたDeNAの戦いぶりを、秋山はどう見たのか。

「やっぱり守備ですね。シーズン中と違ったのは。(日本一の要因は)もう1番は守備だったと思います。取れるアウトを取って、その流れでファインプレーもあった。元々、打線自体は1番でしたし、パ・リーグに近い打ち方をするチームだったので、(ソフトバンクに)打ち負けることはなくても、守備力で差が出るかなと正直、思っていたんですけどね。あとはキャッチャーの戸柱(恭孝)くんじゃないですかね」

 悔しさを抱えながらも、秋山個人としては手応えもある。来年4月に37歳となる中、日米通算2000本安打まで残り206本としている日本球界屈指のヒットメーカーは「1年間健康にやるとこれだけやっぱり数字(シーズン158安打など)が乗るんだなって。やっぱ気持ちも乗っていきますし、頑張れるんだなと思った。とにかく怪我のないシーズンを送って、また1年やっていきたいと思います」と来季に向けて意気込みを語った。

 今季の悔しさと手応えを手に、2025年の広島、そして秋山翔吾に注目したい。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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