代表ウイーク明けに命運をかけるテン・ハグ監督 “強いマンチェスター・U”はいつ蘇るのか…
テン・ハグのマンチェスター・Uは全くゴールが奪えない
今季のマンチェスター・Uは深刻なゴール欠乏症に陥っている。ここまで5得点はリーグで2番目に少ない 【Photo by Carl Recine/Getty Images】
確かにマンチェスター・Uの伝統は攻撃的なフットボール。ファーガソン監督は「3点取られたら4点取り返せばいい」と言って、常に攻めの姿勢を示した指揮官だった。1点ビハインド、もしくは同点の試合終盤に全選手がゴールに集中して攻め上がる、まさに“攻めダルマ”の攻勢を見せて、何度も負けていた試合をドローに持ち込み、タイスコアだった試合で勝ち点3を引き寄せた。
トレブルを決めた1999年の欧州チャンピオンズリーグ決勝で、バイエルン・ミュンヘンが1-0とリードして迎えた後半アディショナルタイム1分、マンチェスター・Uがコーナーキックを奪った瞬間、試合実況を担当したアナウンサーが「今季のユナイテッドは欲しい時に必ずゴールを奪ってきました」と言った。
マンチェスター・Uはこのアナウンサーの予言をあっさりと実現した。コーナーキックを起点にしてテディ・シュリンガムが同点ゴールを奪取。そしてこの2分後にオーレ・グンナー・スールシャールが決勝弾を決めて、奇跡のような大逆転勝利で欧州を制覇した。この決勝こそ、超攻撃的だったマンチェスター・Uの真骨頂を示し、伝説となった試合だ。
しかし現在のテン・ハグ監督の指揮下で、マンチェスター・Uは全くゴールが奪えなくなっている。これは大問題。テン・ハグ監督の求心力が低下する。
10月後半の3連戦で1敗でもすれば一気に解任へと傾く
テン・ハグにとっては後がない状況だ。代表ウイーク明けのブレントフォード戦を落とせば、クラブは解任を決断する可能性が高い 【写真:ロイター/アフロ】
ところがその会議後、マンチェスター・U側は沈黙。現在もテン・ハグ監督がマンチェスター・Uの指揮官の座に収まっている。
「あれは月一で開かれる定例会で、エリック(テン・ハグ監督)の解任を協議するために招集されたものではなかった。確かに議題にはなったと思うが、この会議が直接解任に結びつくという報道は少し勇み足だった」
なるほど、確かに会議前には“ここでクビになる”というムードが一方的に高まったが、その後なんの音沙汰もなく、解任報道は尻すぼみとなり、消滅した。ということは、テン・ハグ監督の解任危機は去り、この後はしばらく安泰なのか?
「いや、それ(安泰ということ)はない。これからは1試合1試合の結果、内容が去就に直結すると思う。まずは代表ウイーク明けのブレントフォードとのホーム戦。この試合で負けたらまず間違いなく解任だ。ここで勝っても次はヨーロッパリーグで、フェネルバフチェとのアウェー戦。そしてウェストハムとのアウェー戦。かつてのユナイテッドの基準ではいずれも勝って当然の相手だが、怪我人が続出している今のチーム状況は厳しく、嫌な相手が続く。本当にこの先、予断を許さない」
確かに相手がマンチェスター・Cやリバプール、アーセナルの場合は、惜敗で内容が伴えば負けも許されるかもしれないが、この10月後半の3連戦の相手なら“勝つのが当然”と見られるだろう。すなわち負けたら一気に解任に傾く可能性は高い。
昨季の最後の試合でマンチェスター・Cを破り、しぶとくその座を守ったテン・ハグ監督だが、10月19日のブレントフォード戦から文字通り自身の命運をかけた試合が続くことになり、その結果から全く目が離せない状況となっている。
けれどもここで解任が決まれば、マンチェスター・Uの再生はまたも振り出しに戻ることになる。
マークは、英実業家のジム・ラトクリフ氏が共同オーナーとなり、スポーティングディレクターにダン・アシュワース氏、CEOにフランス人の辣腕経営者オマール・ベラダ氏を迎えてフットボールに専念する経営陣が揃ったことは、「朗報。今後、効果が期待できる」と話したが、今季は優勝争いに加わるのはすでに絶望的。的確な補強と結果を出すための環境整備を急速に進めたとしても、強豪復活には来季から「最短でも2~3年はかかるはず」との見方を示した。
その復活の切り札はテン・ハグなのか。マンチェスター・Uはまずはその決断に迫られている。
(企画・編集/YOJI-GEN)