フィギュアスケートGPシリーズ展望 来季のミラノ五輪を見据えるスケーターたちの戦略に注目
坂本花織(中央)は昨季初めて制したGPファイナルで、再び頂点に立てるか 【写真:ロイター/アフロ】
坂本花織のGPファイナル連覇なるか
女子は、昨季GPファイナルで初優勝を果たした坂本花織に期待がかかる。「CHANGE」というテーマを掲げる今季は、昨季までのフリーでは1本のみにとどめていた3回転ルッツを、2本跳ぶ構成に変更。エッジエラーをとられることが多く長年苦手意識を持ってきたルッツを増やしたのは、さらにスコアを上げる可能性を探ると同時に、コンビネーションジャンプをミスした場合のリカバリーを考慮しての決断だという。また表現面でも、ショートプログラムでは競技プログラム初となるタンゴ、フリーでは悪女を演じる『シカゴ』に挑戦する。
坂本が目指すのは、「CHANGE」と同時に「つなげる」ことでもある。技術・表現の両面で新たな試みをした上で、「何ができて何ができなかったか、自分で自分のことを知る。知ってそれを次に生かしてつなげる」のだという。
「今季は(五輪)プレシーズンということで、今季まではまだまだチャレンジできるし、いろいろなことにも取り組める」(坂本)
世界選手権3連覇中の坂本は、第2戦スケートカナダ・第4戦NHK杯に出場する。
昨シーズンの世界選手権代表の千葉百音、吉田陽菜も参戦する。昨季の四大陸選手権女王でもある千葉は、今季のテーマでもあるという「弾ける」をテーマにしたショート『ラストダンス』で、新境地を開く。
「自分の表現力の幅をより広げるためにも、もっとすごく明るく、弾けるような演技をできるようになりたい」(千葉)
また、9月中旬に行われたチャレンジャーシリーズ(CS)・ネーベルホルン杯のフリーでトリプルアクセルを決め3位に入った吉田は、ブロック大会の近畿選手権(9月26~29日)のフリーでもトリプルアクセルを着氷させて優勝、幸先のいいスタートを切った。昨季ファイナルの銅メダリストでもある吉田は、今季のテーマを「『ステップ』です」と語る。
「“ホップ・ステップ・ジャンプ”のステップです。シニア1年目の昨季が“ホップ”で、今季が“ステップ”で、来季が“ジャンプ”です」(吉田)
千葉は第4戦NHK杯・第6戦中国杯、吉田は第2戦スケートカナダ・第5戦フィンランド大会にエントリーしている。
「孤独の美しさ」を今季のテーマに掲げる渡辺倫果 【写真は共同】
「(孤独は)マイナスのイメージではなく、月の光の中にある自分自身と向き合わなければいけない」(渡辺)
9月に行われたCSロンバルディア杯、ブロック大会・東京選手権の両大会において、ショート・フリーで計3本のトリプルアクセルに挑んだ渡辺は、第1戦スケートアメリカ・第6戦中国杯に出場する。
一昨季のファイナル女王である三原舞依は、今季のテーマとして「Gorgeous」という言葉を選んだ。フリー『レッド・ヴァイオリン』を振り付けたデイビッド・ウィルソン氏から「ゴージャスに舞ってほしい」という言葉をもらったという。昨季は怪我に苦しんだものの今は復調しつつある三原は、第3戦フランス杯・第5戦フィンランド大会にエントリーしている。
他に日本からは、東京選手権で優勝した樋口新葉が第1戦スケートアメリカ・第3戦フランス杯、青木祐奈が第1戦スケートアメリカ・第4戦NHK杯、ブロック大会の中部選手権で優勝した松生理乃が第2戦スケートカナダ・第5戦フィンランド大会、住吉りをんが第3戦フランス杯・第6戦中国杯に出場する。
海外勢では、昨季ファイナル銀メダリストのルナ・ヘンドリックス(ベルギー)、昨季世界選手権銅メダリストのキム・チェヨン(韓国)が有力か。また、昨季世界選手権銀メダリストのイザボー・レヴィト(アメリカ)は、一年前にはショートで出遅れて5位という結果になったファイナルでの雪辱を果たしたいところだ。
アメリカ勢については、CSでの健闘が光った。ロンバルディア杯ではショート・フリーでトリプルアクセルを成功させたアンバー・グレン、ネーベルホルン杯では17歳の新鋭、エリス・リン=グレイシーが優勝している。また、2022年北京五輪に出場(7位)、同年の世界選手権で銅メダルを獲得後に引退したアリサ・リウも今季現役に復帰、ブダペスト杯(10月11~13日、ハンガリー)で優勝した。今季のGPシリーズでは、アメリカ女子にも注目したい。