田中刑事が語るフィギュアNHK杯もう一つの熱い真剣舞台 ルール無用「選ばれし者」たちの自由演技に注目!

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今年も「ベストパフォーマンス賞(観客投票)」を実施

今年も観客投票のベストパフォーマンス賞を実施、昨年は宇野昌磨さんが受賞した 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――フィギュアスケートに限らず採点競技は見ていてちょっと分かりづらい部分もあるかと思いますが、そうしたものを抜きにして選手の表現するものを純粋に楽しめるのがエキシビションということですね。

田中 そうですね。試合はジャンプ、スピン、ステップ、表現力など全てをバランスよく採点してもらう中での勝負であり、その勝負を楽しんでいただけるファンの方ももちろんたくさんいます。一方、エキシビションはそういった勝負をいったん無しにして、スケートとして何を表現できるのだろうと考えた中での自由さがすごく見えてくる場なのかなとも思っています。

――今回のNHK杯の出場選手の中で、エキシビションに出場したら面白いことをやってくれそうな選手はいますか?

田中 海外選手が何をやってくるかという情報がまだ全く届いていないので、逆に何をするのかなと僕も本当に楽しみにしています。個人的に気になるのはアイスダンス、ペアの日本人選手たち。最近の日本はアイスダンス、ペアにすごく力を入れて層も厚くなっています。その中でNHK杯に出られるくらい強みのあるカップルが2組ずついますので、試合も激戦になると思いますが、その激戦を経た後にどんな自由な演技を見せてくれるのか、非常に気になっています。

――また、NHK杯のエキシビションでは他の大会とは違った、特別な試みを実施されるようですね。

田中 はい。昨年に続き今年も「ベストパフォーマンス賞(観客投票)」を実施します。これは僕たちアンバサダーから提案したものでして、お客さんに専用のURLをお送りして、そこからベストパフォーマンスを投票していただき、一番多くの票を獲得した選手には副賞を贈るという企画になっています。昨年始めたばかりなのでまだ威厳があるわけではありませんが、ゆくゆくはベストパフォーマンス賞をもらって嬉しかったと思ってもらえるような大きな賞にしていきたいですね。選手の皆さんは本当に大変だと思いますが、エキシビションでも魂を燃やすパフォーマンスをしてもらって、それをお客さんに届ける。そしてお客さんもその熱意を受け取っていただき、選手とファンの双方でエキシビションを楽しんでいただきたいなと思っているんです。

――となると、NHK杯のもう一つの真剣勝負、みたいな形になりますね。

田中 そうですね。副賞もそれなりに頑張って豪華なものを準備しています(笑)。去年の企画段階から「副賞は何にする?」という話もしていまして、ここはちょっとお金がかかっても選手みんなが「これをもらえるんだ!」と思えるものをプレゼントしたいですし、それくらい価値があって栄誉ある賞にしたい。ですので、今年も試合が終わってもまだ“熱い”エキシビションが待っているという気持ちで、選手もお客さんもその日を迎えてほしいですね。

田中刑事の今年のテーマは「赤い彗星」

「ジョジョ」「エヴァンゲリオン」などエキシビションで会場を沸かせてきた田中さん、今回披露する予定のテーマは「赤い彗星」だ 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

――一方、田中さんご自身も現役時代からエキシビションには定評があるとお聞きしています。エキシビションに対するこだわりのようなものはありますか?

田中 エキシビションは自分らしさを出せるチャンスだと思っていました。もちろん試合は試合で自分らしさを出しているのですが、エキシビションは曲を選ぶのも自由ですし、何をしても自由なので個性がより出やすいんです。僕が滑ったプログラムは「ジョジョ」や「エヴァンゲリオン」なのですが、本当に自分の好きなものをエキシビションで滑りたいというのが試合に向けたもう一つのミッションでしたね。

 また、エキシビションで滑ったプログラムはシーズンオフ中に行われるアイスショーですでに披露していたのですが、拡散という面で言いますとやはりNHK杯が一番大きかったです。見ていただける範囲もすごく広かったので、普段のアイスショーとは違うSNSでの広がり方をしていましたね。せっかくやるんだったら、ジョジョファンにも届いてほしいと思っていましたし、そうした層の方へも狙っていましたから(笑)

――今年のNHK杯もゲストスケーターとしてエキシビションに出場する予定とお聞きしています。何か企画していることなどはありますか?

田中 別のショーでアーティストさんとコラボして滑った曲がありまして、今年はそれをNHK杯でも滑りたいなと思っています。今年の5月くらいに滑ったプログラムで、そのショーで終わりというイメージだったのですが、再び11月に滑れるチャンスがあればということで色々な方に協力していただいて、実現できる方向で頑張っています。

――何かヒントになるようなワード、テーマなどありましたら教えてください。

田中 『赤い彗星』です! そのままですね(笑)

――まさに(笑)。このワードを聞いて楽しみになってきた人もたくさんいると思います。では最後に、NHK杯を楽しみにしているフィギュアスケートのファンの皆さん、あるいは今回のインタビューを読んで会場に行きたいなと思ったファンの方たちに向けてメッセージをお願いします。

田中 NHK杯は本当にハイレベルな大会ですし、国内の日本人選手も層が厚い中からトップクラスのスケーターが男子3人、女子3人、アイスダンスとペアも2組ずつ出場します。海外選手だけでなく、国内選手同士のハイレベルな戦いを見ることができるのも本当に楽しみですし、三浦璃来選手と木原龍一選手のペアは久しぶりのNHK杯になると思いますので、個人的には特に注目しています。そして、その後のエキシビションでは試合から解放された選手たちが何を披露してくれるのか。緊張感のある試合の2日間、解放された1日と、目が離せない3日間になると思いますので、ぜひトータル3日間を通して見ていただければと思っています。

(文・森永淳洋)

田中刑事(たなか・けいじ)

1994年11月22日生まれ、岡山県出身。NHK杯には2015、16、20年の3度出場し、16年大会で3位。また、2016、17年全日本選手権で2位、2018年平昌オリンピックに出場するなど活躍した。2022年4月に現役を引退し、現在はプロスケーターとして活動。2022年から3年連続でNHK杯の大会公式アンバサダーを務める。

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