MLBポストシーズンレポート2024

「本当に圧倒的だった」大一番で見せた山本由伸の快投に、大谷も感嘆 連続完封でメッツ戦へ【地区シリーズ第5戦】

丹羽政善

ドジャース先発の山本由伸は5回を投げ、被安打2、与四球1、無失点という完璧な内容だった 【Robert Gauthier / Los Angeles Times via Getty Images】

 結果だけ見ればその言葉通りとなったが、「もちろんすぐには簡単には切り替えられなかった」と当の山本本人は振り返る。

 メンタル的に立ち直ることができたのは、チームメイトの支え。

「サンディエゴにいったとき、キケ(・ヘルナンデス)が誘ってくれて、2時間くらいカフェで話をした」

 奇しくも、先制本塁打を放ち、山本を援護したのもキケ・ヘルナンデスだった。

 内容的には、初回を三者凡退で終えたのが大きかった。デイブ・ロバーツ監督も試合前、「初回が大切」と強調した。

「初回、ゼロで抑えて流れを作れれば、それは大きい」

 その通りの立ち上がりとなり、三回は1死一、二塁とされ、ポストシーズンの通算打率が.409、OPS1.441というフェルナンデス・タティスJr.(パドレス)を迎えたものの、ショートゴロ併殺に仕留めるとさらに勢いに乗った。四、五回も三者凡退に抑え、五回のマウンドを終えてダグアウトに戻ると、大谷が“よくやった”とでも言わんばかりに、山本の頭を手荒く撫でた。

モニターに映し出された英雄コービーの言葉

第2戦に続いて実現した、ダルビッシュ有と大谷翔平の対戦。結果は3打数無安打、2三振と、大谷はまたしてもダルビッシュに完敗した 【Gina Ferazzi / Los Angeles Times via Getty Images】

 その大谷は、またもダルビッシュに翻弄され、3打数無安打。ダルビッシュは、「いやまぁ、自分に多分気を使っている部分があると思うので」と苦笑したが、八回の4打席目は、タナー・スコット(パドレス)に、このシリーズで4度目となる三振を喫した。

 しかし、アンドリュー・フリードマン編成本部長は、「大谷は無安打だったけど、相手は常に大谷にいつ打順が回ってくるのか、気にしているのがわかった」と話し、続けた。

「それだけでも彼の存在の大きさが知れた。相手はどう投手交代をするのか、気を使ったと思う。彼がいるだけで、相手にプレッシャーをかけられた」

 初戦は二回、3点ビハインドで同点3ラン。第4戦も二回にタイムリー。このシリーズにおいて、走者ありの場合は6打数4安打。走者なしでは14打数ノーヒットだったが、4安打のイメージが強烈で、相手を疲弊させた。ムーキー・ベッツ(ドジャース)の復活は、大谷が前を打っていることと無縁ではなかったのではないか。

 シャンパンファイトの最中、「ほんと勝てて良かった」と安堵の表情で話した大谷。1勝2敗と追い込まれたこともあり、「ほんとに厳しいシリーズだった」と振り返ったが、こう締め括った。

「誰が出ても、ほんとに一生懸命チームプレーで、後ろにつなぐんだっていう気持ちが前面に出ていたと思いますし、ロースコアでしたけど、なんとかみんなでものにした、そういうシリーズだった」

「JOB’S NOT FINISHED(まだ、目標は達成していない)」KOBE BRYANT

 10月10日(現地時間)の練習日、ドジャースのクラブハウスに入ると、打順やスケジュールが表示されるモニターに、そんな言葉が映し出されていた。レイカーズ対マジックの組み合わせで行われた2009年のNBAファイナル。レイカーズが2勝0敗としたが、会見に現れた故コービー・ブライアントは、なぜか不機嫌そうだった。「どうしたのか?」と聞かれて口にしたのが、冒頭の言葉だ。

ドジャースのクラブハウスにあるモニターに映し出された、故コービー・ブライアントの言葉 【筆者撮影】

 先制本塁打を放ったキケ・ヘルナンデスは、試合前にこう話した。

「我々はナ・リーグ西地区で優勝するために戦ってきたわけではない。ワールドシリーズを勝つために戦っているんだ」

 大谷にとってももちろん、地区シリーズ突破は通過点。「初戦が大事」と話した後、「まずはしっかりそこに合わせる」と続け、早くも次のリーグチャンピオンシップシリーズに視線を向けていた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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