今季初先発の遠藤航が健在をアピール アンフィールドが万雷の拍手に包まれた
先制点のカギとなった鎌田の技ありタックル
前節に続いて2センターハーフの一角で先発出場した鎌田。チームは悔しい逆転負けを喫したが、先制点のきっかけを作るなど存在感を見せた 【写真:ロイター/アフロ】
エヴァートンはホームスタジアムの移転を2025-26シーズンに控えており、1892年に開場した現在のグディソン・パークとは、今季いっぱいでお別れになる。
というわけで、無論のことスタジアムの造りは古く、木造の記者席の狭さたるやプレミアリーグ随一。また試合後に選手と接触するミックスゾーンへはメイン・レセプションを通って、厨房の横の狭い通路を抜けて行く。そこが名ばかりのミックスゾーンで、狭い通路と小さな踊り場を仕切っただけの取材エリアなのだ。
けれどもアウェーの選手は必ずそこを通る。通らならなければチームバスに乗れない構造で、ともかく目の前を鎌田が通り過ぎることは確実だった。
できれば勝ち試合で話を聞きたかった。前半10分にクリスタルパレスがコーナーキックを起点にして先制し、そのまま前半を押し切った時は、勝ち試合で鎌田と話をするという希望が叶うと期待した。
しかも先制点は、エヴァートン陣ペナルティエリア内右サイドでの鎌田のタックルがカギになった。
日本代表MFを狙ったグラウンダーのコーナーだったが、そのボールがずれて、エヴァートンMFイェスパー・リンドストロムが足元に収めたかのように見えた。ところがここで鎌田が技ありのスライディングタックルでボールを奪い返し、コーナーキックを蹴ったアダム・ウォートンにリターン。ここからウォートンがクロスを放ち、逆サイドにいたDFマクサンス・ラクロワが頭を合わせてニアサイドに落とすと、ワンバウンドしたボールをイングランド代表DFマーク・グエーイが至近距離から右足で押し込み、クリスタルパレスがアウェーで先制した。
しかし後半、エヴァートンMFドワイト・マクニールが2点を奪い返して逆転。しかもマクニールがペナルティエリアのやや外から自慢の左足を振り抜き、素晴らしいベンドボールでゴール左隅のトップコーナーに決めた同点弾は、鎌田が前方にいたエベレチ・エゼに向けて出したパスをエヴァートンのベテランDFアシュリー・ヤングにインターセプトされたところから生まれた。
前半は勝てると思った試合を後半に同点にされて、すさまじい喧騒を誇る古豪のスタジアムの声援に押され、ついには1-2の逆転負けを喫した。
危機感を抱く鎌田だが「1つの勝利で変わる」と前を向く
6試合を終えて3分3敗と、リーグ戦ではいまだ未勝利。勝てないチームの現状に鎌田は危機感を募らせるが、「本当に1つの勝利で変わる」とも 【写真:REX/アフロ】
「結果は自分たちにとって良くないものになってしまったし、今はチームとしても個人としても、かなり難しくなってきているなと思います」
これが鎌田の第一声だった。それでも28歳MFの調子自体は良く見えたと話を振ったが、「うーん、でもまあ自分たちの今の問題はチームとしてやらなくてはいけないことができていないということ。守備でもこうしなければいけないということがチームとしてできていない。それがすごく問題だと思います」と語って、さらにチーム状況を心配する言葉が連なった。
その要因は「昨季うまくいっていて、その時の主力選手が2人抜けました。攻撃的な部分でいうと、オリーセが抜けた穴というのがかなり大きいと思う。守備に関しても昨季は勢いがあったが、今季はなかなか勝てないということで、自信を持ってプレーができていません」と話し、昨季19試合出場で10ゴール・6アシストを挙げて、今夏にバイエルン・ミュンヘンへ移籍したフランス代表FWマイケル・オリーセの穴が埋まらず、決定力が落ちてチームが勝ちきれない。それが守備面の自信喪失にもつながる悪循環を生み出していると指摘した。しかし「本当に1つの勝利で変わる」とも鎌田は一言付け加えた。
マンチェスター・Uをゼロに抑えた前節に続いて、リーグ戦を2試合を見た限りでは、鎌田が言うほどクリスタル・パレスがひどいパフォーマンスをしているとは思わなかった。けれどもやはり、今季の未勝利が28歳日本代表MFに危機感を募らせているのだろう。
鎌田が言う通り1勝でチームは変わるはずだ。早く片目を開けて、昨季後半の好調を取り戻してほしいが、次戦は第6節のアウェー・ウルバーハンプトン戦で2-1と競り勝ち、単独首位に立ったリバプールが相手。果たしてここで、鎌田はどんなプレーを見せるのか。危機感を自信に変えるパフォーマンスを期待して、プレミアリーグのデビューシーズンを必死で戦う鎌田を今後も見守りたい。
<企画・編集/YOJI-GEN>