「嘘でしょ、本当に?」ロコ・ソラーレ4人も驚き チーム最高峰シリーズの無料配信はカーリングの未来を変えるか

竹田聡一郎

昨年1月の「カナディアン・オープン」ではFujisawaがアジア勢として初のグランドスラム優勝を達成した 【(C)Loco Solare】

グランドスラムはチームごとでの最高峰シリーズ

 ABEMAは26日12時、プレスリリースを発表。カーリングの世界最高峰ツアー大会『グランドスラム オブ カーリング 2024-2025』の無料生中継が決定されたことをアナウンスした。カーリング関係者ファンにとっては大きな喜びを伴うニュースだ。

 グランドスラムとはカーリングの世界ツアーのランキング上位チームのみが招待されるタイトルで、注目度、賞金額などが大きいイベントだ。テニスやゴルフでは上位大会のタイトル全制覇の意味で使われるが、カーリングでは大会そのものを指すことが多い。競馬のGⅠ、ボートレースのSGのようなイメージだろうか。

 また、五輪や世界選手権とは異なり、国別の対抗戦ではなくあくまで「Fujisawa」(ロコ・ソラーレ)や「Kitazawa」(中部電力)といった、スキップの名前を冠したチームごとでの最高峰シリーズであり、こちらはサッカーのクラブワールドカップのような意味合いがある。

 これまではグランドスラムといってもあくまで普及途上のスポーツであるカーリングにおいて、観戦はオンラインストリーミングなどが中心だった。日本では2022年にテレビ朝日のCSチャンネルで中継されたことがあるが、定着には至らなかった経緯もある。

 吉田夕梨花はグランドスラムという晴れ舞台を「いいプレーを正当に評価してくれる楽しい場所」と表現した。好ショットはもちろん、それを支えるスイープを後押しするような大声援に包まれ選手として心地いい時間をいつも過ごしている特別な大会として認識している。

 鈴木夕湖は平昌五輪から北京五輪の4年間について質問を受けた際に「4年に一度の五輪を目指すというよりも、毎シーズンあるグランドスラムで勝ちたいとあがいているうちに4年経っていた感覚」と率直に語ってくれていたことがある。

さらなる自覚も芽生える

「もっとグランドスラムという素晴らしい大会を知ってほしいし、単純にいちファンとして気軽に見ることができたら嬉しい」

 これは吉田知那美の談話だが、これが今回の無料放送で叶った。また、遊び心が詰まった大会オリジナルのチーム紹介映像やフォトシューティングセッションもあり、放送内ではその紹介も存分にされるだろう。

 2022年のサッカーのカタールワールドカップ期間中、藤澤五月は「サッカーの面白さを改めて感じた」と目を輝かせていた。日本代表の健闘と共にネット配信でメジャースポーツを観戦できる時代を噛み締め「いつか、カーリングもABEMAさんがやってくれたらいいな、グランドスラムとか。ってみんなで話してたんです。それがこんなに早く現実になるなんて驚いたし、嬉しかったです」

 8月下旬、地元北見市常呂町で開催されていたアドヴィックスカップの期間中に「グランドスラムをABEMAで生中継」という吉報がチームには届けられたが、「嘘でしょ、本当に? すごい! 嬉しい」と4選手はほぼ同じリアクションで喜んだという。一方で「だからこそいい試合をしなければ」というさらなる自覚も芽生えたことだろう。

 今季のグランドスラム初戦となる「ツアーチャレンジ」は、カナダのプリンスエドワードアイランド州の州都シャーロットタウンで現地時間の10月1日に開幕する。

 ランキング上位チームが参加するTier1にはFujisawaが出場。上位を追うTier2には、女子はKitazawa(中部電力)、Tabata(北海道銀行)、Yoshimura(フォルティウス)、Ueno(SC軽井沢クラブ)、男子はMorozumi(TMKaruizawa)、Yanagisawa(SC軽井沢クラブ)ら日本勢がそれぞれ参戦する。

 Fujisawaは初戦で2019年の同大会勝者であり、スウェーデン代表として2018年平昌五輪で金メダリストを獲得したHasselborgと戦うが、この生中継には11月8日公開映画『カーリングの神様』で主演を務める本田望結がゲスト出演するなど見どころが多い。

 日本時間では10月1日の20時から試合開始だ。グランドスラムがスポーツのコンテンツとして大成していくのか、追い風を受けて日本勢の躍進がはじまるのか。カーリングがさらに大成するチャンスを迎えている。
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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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