首位転落も町田に「反攻」の兆しあり 国立の劇的同点弾を決めた“前エース”エリキが持つ価値
エリキが98分に同点弾を決め、町田は浦和と引き分けた 【(C)FCMZ】
ただ国立で開催された浦和戦は、町田の今後に向けた「いい兆し」が見えた試合だった。
チャンスで決め切れず、敗戦寸前に
ただ町田がとにかく決め切れない試合で、37分にはデザインされたセットプレーから浦和の先制を許した。町田はハーフタイム明けの修正に成功し、浦和のインサイドMF3人にマンマークをつけてビルドアップを遮断。49分に、オ・セフンのゴールで同点に追いつく。
しかし87分にはカウンターからチアゴ・サンタナの勝ち越しゴールを許し、95分にも「幻の3点目」を奪われた。松尾佑介が流し込んだシュートはボールが無いところのファウルで認められなかったが、6分と掲示されたアディショナルタイムは97分台に入り、タイムアップの笛がまさに鳴ろうとしていた。
窮地を救ったのが後半から起用されたミッチェル・デューク、藤本一輝、そしてエリキだ。まずデュークがGK谷晃生のロングキックに競り勝ち、藤本はセカンドボールから左サイドからドリブルで切れ込む。最後はエリキが鋭い反応からクロスに合わせ、勝ち点0を「勝ち点1」に変えた。
町田にとって素直に喜べる結果ではなく、記者会見場に現れた黒田監督のコメントも辛口だった。
「シュートは打っているのですが、なかなか1本が入らなかった。無人のゴールでも入らない、フリーでも入らないところに、プレッシャーもあるのでしょうけど、技術の無さがつきまとったゲームでした。悪くても2対0で勝たなければいけないゲームだったと思いますし、チャンスをしっかりと決めていれば3点4点と取れるチャンスもありました。我々にとって反省すべき試合だったし、選手にもそこを伝えてきました」
指揮官が「後半は押せ押せのムードで、相手のポゼションをしっかり遮断した中で、良いチャンスをつかめていた」「前で潰せる時間、ルーズボールを拾える時間は増えた」と振り返るように、後半は町田の流れだった。しかしFW藤尾翔太が2度3度とあった決定機を決め切れなかった。
出番を失った選手たちは何を思ったのか?
鈴木準弥は「ライバル」が日本代表に招集された 【(C)FCMZ】
「ウチで一番点を取っていますし、彼がエースであることに変わりはありません。僕たちがどうこう言うのでなく、エースストライカーとして、自分で解決してやっていくものだと思っています。セフンもそうだけど、FWは点が取れないときに言われるし、シビアなポジションです。でも彼が彼なりにやって、色んなことを吸収して、次はチームを勝たせる点を取るのではないかと(思っている)」
同点弾のエリキは昨シーズンのJ2 MVPで、町田の「前エース」だ。だが昨年8月19日の清水エスパルス戦で左膝の重傷を負い、今年5月の復帰後もなかなか結果を出せていなかった。直近の2試合は右サイドハーフとして起用されていたが、8月25日のアルビレックス新潟戦は前半45分でベンチに下げられている。オ・セフンや藤尾翔太が首位のチームを牽引する影で、出番とゴールを減らしていた。
エリキは81分、荒木駿太の負傷後に「5人目の交代選手」としてピッチに入った。彼はこう振り返る。
「1秒だけでももらえたならば、必ず(チャンスを)モノにするというメンタリティで準備をしていました。(同点ゴールは)本当に感動的な瞬間でした」
チームが首位を走る中でも、町田には悔しさを抱える選手たちがいる。浦和戦の鈴木準弥は右サイドの起点となり、特に攻撃面で貢献を見せていた。統率力も含めてチーム内の評価は高い彼だが、若きライバルの台頭で出番を減らしている。しかも2日前には望月の日本代表招集というニュースがあった。
「日本代表はすごいところですし、自分自身も目指している場所です。今シーズンの最初は自分が出ていて、途中からヘンリーに替わり始めて、結果を残して代表に行く――。そこはシンプルに選手として悔しさがあります。でもヘンリーの特徴、ダイナミックさはみんなの目に留まるものです。それにせっかくJ1の上位にいて、自分とポジション争いをしている選手が代表になったのだから、何か吸収できるものがないかな?とも思っています。素直に悔しい思いと、もっとやらなきゃという思いの両面です」(鈴木)