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敵DFを嘆かせた三笘の超絶アシスト 逆境の遠藤が「4分間」で見せた存在感

森昌利

開幕戦でいきなりゴールを決めた三笘が、第2節マンU戦で今度は先制点をアシスト。2試合連続で目に見える結果を残した 【写真:REX/アフロ】

 ブライトンの三笘薫が、チームの今季初ゴールを挙げた開幕戦に続いて決定的な働きを見せた。8月24日(現地時間、以下同)、マンチェスター・ユナイテッドとのホーム初戦。絶妙なラストパスで先制点をもたらし、連勝スタートに大きく貢献した。同じくホーム開幕戦に臨んだリバプールの遠藤航は、試合終盤に今季初出場。わずかなプレー時間ながら好調さをアピールして、今後に期待を抱かせた。

三笘のコメントを裏付ける両軍のスタッツ

 先週のコラムでも、今年で放送60周年を迎えたプレミアリーグのハイライト番組『マッチ・オブ・ザ・デイ』(MOTD)をネタにしたが、今週も冒頭からこの番組に注目したい。なぜならブライトン対マンチェスター・ユナイテッド戦の解説中に発見した“数字”が、試合後の三笘薫のコメントと見事にシンクロしたからだ。

 これらはブライトンとマンチェスター・Uの運動量を示す数字だ。

 まずは両チームの走行距離。これが113.9キロ対109.3キロでブライトンの勝ち。続いてスプリント総数。これも152対136でブライトンが上回る。最後はインテンシブ・ランズ。これは選手が時速約20キロから25キロの“臨戦態勢”の走りを何回したかという数字だ。これもマンチェスター・Uが2,856回であったのに対し、ブライトンが3,098回を記録してホームチームがまさった。

 帰宅後に見るのが習慣になっているMOTDでこれらの数字を確認すると、筆者の頭の中で、「そうですね、(プレミアリーグで対戦するチームは)どこも厳しい相手ですけど、自分たちのサッカーをすればいいサッカーはできると思いますし、(今日も)いい展開になったと思う。そこは自信を持ってますし、もう本当に1人ひとりがサボらずにやってる結果だと思ってるんで、これを継続しないといけないと思います」という三笘の発言に完璧につながった。

 ブライトンの第2節の相手マンチェスター・Uは、今季は何とか続投となったが、本当にもう後がないテン・ハグ監督に率いられ、開幕戦のエヴァートンとは明らかにレベルが違うチームだった。

 しかもマンチェスター・Uは、主将のブルーノ・フェルナンデスを筆頭に試合開始直後から献身的にプレスをかけてきた。その寄せのスピードは前週のエヴァートンより断然速く、ボールを奪った後の攻めにも数段上の危険な鋭さがあった。

 ちなみに、フェルナンデスは接触プレーの度に大袈裟に痛がるのをやめれば、もうひと皮剥けると思う。イングランドのサポーターはこういうフェイクが大嫌いで、フェルナンデスがそのクオリティの高さに見合う敬意が得られず、アウェー戦となるとマンチェスター・Uのなかで最もブーイングされる選手であるのはこの悪癖が根本的な原因である。

スピード、コースとも完璧なうえ微かにカーブをかけて

前半32分、三笘は逆サイドから流れてきたボールを止めて即座に折り返し、ウェルベックの先制ゴールを演出。針の穴を通すような完璧なラストパスだった 【Photo by David Horton - CameraSport via Getty Images】

 そんなマンチェスター・Uを相手に、三笘の攻撃的なプレーの回数はエヴァートン戦と比較して激減した。

 それでも27歳の日本代表MFはそうした厳しい展開のなかで、少ないチャンスをモノにする素晴らしい集中力と技術を見せた。それが顕著に現れたのが、前半32分に三笘がアシストを記録した場面だった。

 起点は右サイドのやや浅い位置からFWジョアン・ペドロが放ったクロスだった。いいクロスだった。右利きの選手がしっかり右足で蹴って、ゴール前に向かい、そこから離れていく曲線を描いたベンドボールだった。しかしゴール前で張っていたベテランFWのダニー・ウェルベックと、左サイドバックながら最前線に飛び出していたジャック・ヒンシェルウッドがボールに触れず、逆サイドに流れた。

 そこにフリーの三笘がいた。そこからアシストがついたゴール前を横切る低空のラストパスを送った。

 これが球足の速さ、コース、そして微かにゴールに向かってカーブする曲線の3要素が完璧に混合した、相手にとっては危険極まりない、超ハイクオリティのボールだった。

 確かに三笘にはスペースがあった。しかしボールを受けると瞬時にこのパスを放った。ペナルティエリア内でのプレーで、時間が限られていたからだ。

 このボールがこの試合で対峙し続け、ここでも三笘との距離をすかさず詰めてきたモロッコ代表DFヌサイル・マズラウィの左足の脇を高速ですり抜けると、その後ろにいたイングランド代表DFハリー・マグワイアが、それがセンターバックの本能だとでもいうようにとっさに反応して右足を伸ばしたが、速さに加えてボールがゴール方向にカーブしたことでギリギリ届かず、ウェルベックが思い切り伸ばした長い右足だけがかろうじて当たった。

 ゴールのリプレイが記者席のモニターでも流れたが、マグワイアが「I couldn’t get the ball,I couldn’t get the ball」(このボールは止められなかった)と周囲の味方に向かって、今にも泣き出しそうな表情で二度つぶやいていたのが印象に残った。

「体を開いてちょっとずらしたのはよかったですけど。ほんとにあそこに(ウェルベックが)いてくれたっていうのも大きかったです」

 三笘は試合後、素晴らしいパスを繰り出したテクニックについて、体を開いて、まず手前のマズラウィが触れられないボールが蹴れたことがよかったと淡々と語った。そして自分のアシストボールの見事さより、ウェルベックの位置取りと決定力をしっかりと称えた。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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