首位転落も町田に「反攻」の兆しあり 国立の劇的同点弾を決めた“前エース”エリキが持つ価値
競争が生む相乗効果
オ・セフンに代わって入ったデュークは同点弾の起点となった 【(C)FCMZ】
「試合に出ていないなら、納得いかない思いがあるのは当たり前じゃないですか。でも町田の強さは、彼らが試合に出たときに、ああやって献身的に走って戦ってジャンプして、やってくれることです。ホームのセレッソ大阪戦もデュークがロスタイムに入れたし、途中から試合を決定づける、ビハインドを追いつく決定的な仕事をしてくれています」
次の試合、その次の試合は藤尾が輝く順番かもしれない。キャプテンはこう続けた。
「彼らが翔太をどう思っているか、僕には分からないですけど、認めているのはあるでしょう。僕もそうですけど、同じポジション同士で切磋琢磨しながらやっていかないといけません。藤尾もあいつはあいつで、自分の中でしっかり整理して、次は(結果を)出してくれると思っています」
2023年の町田はエリキ、デュークと「超J2級2トップ」の活躍により、J1昇格を勝ち取った。今季は新加入のオ・セフンと、U-23日本代表の藤尾が前線の柱となっている。もっともエリキ、デュークの存在価値がなくなったという意味ではない。
プロフェッショナルである以上、仲間の活躍は自分の仕事を脅かす事態だ。そこに悔しさ、危機意識が生まれるのは当然だ。しかし本当のプロはそこでチームの足を引っ張るのでなく、自分にベクトルを向けて次に備える。町田のFW陣を見る限り、彼らの競争にはお互いを高め合う相乗効果がある。だからこそエリキ、デュークは途中出場でチームを救う働きを見せた。
決め手になり得るエリキの経験値と人柄
オフ・ザ・ピッチの振る舞いも彼の魅力だ 【(C)FCMZ】
他チームと比較したとき、町田の分かりやすい弱みは「経験不足」だ。昌子、中山雄太、相馬勇紀と日本代表経験者が顔を揃えたものの、修羅場を経験した、J1優勝経験のある選手が少ない。
だからこそ、エリキにかかる期待は大きい。彼は過去にパルメイラス、ボタフォゴといったビッグクラブでプレーし、ブラジルと日本で優勝経験を持っている。観客48887名の国立で同点ゴールを決めた30歳はこう言い切る。
「サッカーに限らず、人生の中で本当にプレッシャーのある局面を経験してきました。ブラジルでは6万7万人の中でずっとやっていました。ブラジルとマリノスで優勝していますし、J2ですけど去年も優勝しています。今年は出遅れましたけど、身体もメンタルも本当にベストコンディションです。日々ハードワークをしながら、そしてファンサポーターの皆さんとクラブをリスペクトしながら、自分のやるべきことをやるだけです」
彼のもう一つの強みは「町田の太陽」という二つ名が示す陽性のキャラクターだ。表情もコメントも常に前向きで、ジメジメしたところがない。そんな彼の人柄も、勝負所で町田の力となるだろう。