頂上決戦でShigekixらB-BOYたちが示したカルチャー ブレイキン男子の舞台裏をKENTARAWが証言

田中凌平

ブレイキン男子3位決定戦で敗れたShigekix(右)。メダル獲得はならなかったものの、互いを称賛するブレイキンのカルチャーを示した 【写真は共同】

 パリ五輪で唯一、新競技となったブレイキンの男子予選と決勝が、現地時間8月10日に行われた。日本勢は半井重幸(ダンサー名:Shigekix、以下同/第一生命保険)と大能寛飛(Hiro10)が出場。メダル獲得が期待されたShigekixは3位決定戦でビクトーバーヌーデス・モンタルボ(Victor/米国)に敗れ4位、Hiro10は予選敗退だった。優勝はフィリップ・キム(Phil Wizard/カナダ)、2位はダニス・シビル(Dany Dann/フランス)だった。

 予選ではAグループにShigekixとHiro10の日本人が同居。さらに米国の絶対的エース・Victorもいることで“死の組”と称された。Hiro10は惜しくも予選敗退となったが、ShigekixとVictorが準々決勝へ進出。Shigekixは準々決勝でメノウィルヘルムス・ヘンリカス・ファンホルプ(Menno/オランダ)に勝利するも、準決勝でライバルのPhil Wizardに敗れる。3位決定戦でShigekixは再びVictorと相まみえたが、0-3で敗れメダル獲得にあと一歩及ばなかった。

 女子に続き、大盛り上がりを見せたブレイキン男子。2015年から前人未到の世界大会3連覇を果たした「THE FLOORRIORZ」のクルーであり、日本ダンススポーツ連盟 ブレイクダンス本部事務局長の白井健太朗さん(KENTARAW)はブレイキン男子をどう見たのか。試合総括を語ってもらうと同時に、日本勢の舞台裏を明かしてもらった。

Shigekixの優位性が薄れてしまった要因とは

日本でも物議を醸したShigekixへのジャッジだが、「独創性」と「多様性」のポイントで劣っていたことが敗因となった 【写真は共同】

 男子のブレイキンは本当にトップクラスのB-BOYたちが集結していて、まさに頂上決戦だなと感じる顔ぶれでした。始まる前から「どんなバトルになるのだろう」と思っていましたが、みんな調子が良くてベストなパフォーマンスを見せてくれたので、ムーブを見て心が動きましたね。

 Shigekix選手も予選から調子が良かったので「やってくれるぞ!」と思っていました。実は、私はShigekix選手とは村外拠点が一緒だったんです。その際の練習でDJを務めましたが、Shigekix選手が出るタイミングを見計らって曲を変えると、臨機応変に対応できるように意識して練習する姿が非常に印象的でした。

 本番の曲への対応も素晴らしかったですね。Shigekix選手のスタイルは、音楽とうまく噛み合わないと評価されづらい側面があります。しかし、パリ五輪ではしっかり音楽に乗っていてキレもよかったですし、特にMenno戦はかなりいいムーブで私も思わず声を出してしまいました。

 準決勝のPhil Wizard戦と3位決定戦のVictor戦もよかったのですが、「独創性」と「多様性」で大きく得点を取られてしまいました。Shigekix選手は「技術性」「完成度」「音楽性」に秀でていますが、「独創性」と「多様性」での負け分を取り返すほどの差を示せませんでした。Phil Wizard選手もVictor選手も強いパワームーブを持っていて「技術性」のポイントを取れるブレイカーです。今大会はトラディショナルでみんなが知っている音楽の選曲が中心だったので、「音楽性」においてもShigekix選手の優位性が薄れてしまった面はありましたね。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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