ブレイキン初代女王AMI“夢見心地な金” テレビ解説のKENTARAWは五輪初舞台に感動&熱狂
ブレイキン女子で優勝し、見事に初代女王に輝いたAMI。日本のB-GIRLの強さを世界に示した 【写真は共同】
AMIは予選から安定したムーブを見せ、アンティライ・サンドリニ(ANTI/イタリア)、ファティマザフラ・マムニ(ELMAMOUNY/モロッコ)、曽瑩瑩(YING ZI/中国)らを2-0のスコアで圧倒。準々決勝ではシア・デンベレ(SYSSY/フランス)を3-0、準決勝ではINDIAに2-1、決勝でドミニカ・バネビッチ(NICKA/リトアニア)を3-0で下し、他のB-GIRLを寄せつけない強さで頂点まで駆け上がった。
五輪初採用で日本人B-GIRLが金メダルを獲得したことにより、さらに注目度が高まっているブレイキン。2015年から前人未到の世界大会3連覇を果たした「THE FLOORRIORZ」のクルーであり、日本ダンススポーツ連盟 ブレイクダンス本部事務局長の白井健太朗さん(KENTARAW)にブレイキン女子の戦いを振り返ってもらった。
圧倒的な“実力”と“バトル勘”でつかんだ初代女王の座
AMIは実力もさることながら、必要なタイミングで繰り出す技を即興で判断する“バトル勘”に優れている 【写真は共同】
また、パリ五輪ではAMI選手の強いところがよく表れていました。床に手をついて足さばきを行う「フットワーク」では、時計回りか反時計回りでそれぞれの選手で得意な方向が異なりますが、AMI選手はどちらの方向でも上手に回ります。流れが自然すぎてどこで技が切り替わったのか分からず、見ているうちにどんどん引き込まれてしまいましたね。アクロバティックな動きの「パワームーブ」と、ピタッと止まる「フリーズ」でも強い技を見せていました。
AMI選手が金メダルを獲ったことで、「日本には強いB-GIRLがいるんだ」と多くの人に知っていただけたと思います。AMI選手の「私たちはカルチャーを愛して、このまま踊り続けるだけ」という言葉が響いた人もいるでしょう。今回の五輪でブレイキンに興味を持ってくださった人を、どんどん巻き込んでいく動きができたらいいですね。
AYUMIも大舞台で胸を張れるムーブを披露
準々決勝でINDIA(左)に敗れたAYUMIだったが、そのムーブは自らの持ち味を存分に発揮できていた 【写真は共同】
今回のジャッジは「技術性」「多様性」「完成度」「音楽性」「独創性」の5つの項目で、それぞれ20%を各選手に振り分けて勝敗が決まります。例えば「技術性」においてINDIA選手がパワームーブでキレがあるから15%を獲得すると、他の4項目でAYUMI選手が11%ずつ獲得して2%ずつ上回っていても、トータルでは51:49で負けてしまいます。もちろん人によって感じ方やパーセンテージの振り幅が異なるので、ジャッジ基準は非常に難しいものです。
カルチャーのブレイキンが今回のようにダンススポーツとして勝敗を審査するためには、ある程度基準を明確化したほうがいい反面、各ダンサーによる自由な表現によって個性を伸ばして勝つことも必要だと感じています。“表現の自由さ”はブレイキンの素晴らしいところなので、“明確な基準”とのバランスをとるのは難しいですね。ブレイキンを知っている人たちはこの難しさを知っているからこそ、今回のパリ五輪を無事に終えられて「よく成功させてくれた!」と感じています。