37歳の多摩川クラシコ 森重真人×小林悠~刺激し合うベテランの夏~

馬場康平
 多摩川を挟んだライバルが顔を合わせる。今回で44回を数える多摩川クラシコを前に、2010年からそれぞれ同じユニホームを着てしのぎを削るFC東京DF森重真人と川崎フロンターレFW小林悠の特別対談が実現。同学年でプライベートでも仲が良い、今年で37歳を迎える2人の今の想いに耳を傾けた。(取材日:8月4日)

8/11で44回を迎える多摩川クラシコ。それぞれのマスコットキャラクターも会場を盛り上げる 【©FC TOKYO】

お互いが新たな時代を多摩川クラシコでつくりあげていける

――それではよろしくお願いします。

森重真人 時間ずらしてくれてありがとうございます。

小林悠 マル(丸山祐市)とは森重は13時(対談スタート時間)には絶対来ないと話していたところだよ(一同笑)

森重 正解!

――今回の多摩川クラシコですが、互いに不本意な順位にいると思います。この試合をきっかけにしたいという思惑もあるんじゃないですか?

森重 盛り上がる試合だし、フロンターレに勝てていない悔しさもある。そこに新しい若手が今入ってきて、お互いが新たな時代を多摩川クラシコでつくりあげていけるんじゃないのかなと思っています。今回は、そういった意味では新生同士のぶつかり合いになると思います。

小林 今、順位は上にはいないですけど、個人的にも中断期間に入る前に苦しいなかで最後に勝ってチームとしてもいい雰囲気で再開に向けてトレーニングを積めていると思っています。けが人も帰ってきて競争も激しくなってきましたし、ここから巻き返していけるいい状態にあると思います。だからこそ、すごく大事な試合になるかなと思います。

――さて、お二人とも今年で37歳になります。2人とも加入年が同じ2010年で、当時今の自分が想像つきましたか?

森重 いや、想像つかないよ。

小林 すごいよね。よくやっているよ、モリゲ。

森重 お互いだよ。

小林 こんな暑い中の練習でもう死ぬかと思ったよ(苦笑)

森重 俺も午前中の練習で死ぬかと思った(苦笑)。今から練習?

小林 いや、終わったよ。もう今年はマジでやばいよ。本当にダメだと思う。

森重 俺もテレビの横に観葉植物置いて癒やされたいよ(笑)

小林 ハハハハ。癒やしを求めたいよね。本当に大変よ、今年は。

森重 毎日、(長友)佑都君とお互い励まし合いながら「よくやってるよ、佑都君」とか言って、「シゲお前もだよ」って。

小林 すごいと思うわ。

森重 夏を頑張って超えよう!

小林 本当に何とか生き延びたい。

刺激をくれる人がいたからこそ結果を残せてきた

森重(中央)は長く現役を続けていられる理由として一歳上の長友佑都の存在を挙げた 【(C)J.LEAGUE】

――同世代の選手が次々と引退していくなかで、何を糧に今も現役を続けられていますか?

小林 モリゲは何なの?

森重 俺は正直言うと、佑都君の存在。その影響がすごい。あの人があれだけできるということを証明しているから「じゃあ俺もやらなきゃ」ってなれる。自分の過去を見ても、そういうライバルがいたり、刺激をくれる人がいたからこそ、節目節目で頑張ることができたり、結果を残せてきたのだと思う。自分にとってそういう存在が大事で、やっぱり同世代がいるというのは大きいかな。同じチームもそうだけど、悠みたいに同世代で他のチームで頑張っているのを見ると、まだまだ俺も頑張ろうと思う。同世代が頑張っていることが心の支えになっているよ。

小林 佑都君がチームで一番年上?

森重 そう佑都君が一番上。佑都君がいなかったらきっと辞めていると思うよ。

小林 そうだよね。でも、メッチャ分かるな。俺もアキ君(家長昭博)とウチには(チョン)ソンリョンもいるので、年上が頑張っていたら自分も弱音は吐けないなってなる。そういう存在が同じチームにいるのは大きいよね。あとは子どもが「辞めないで」というから続けられているのかな

森重 それもあるよね。

小林 子どもには「パパ、夏超えられないかもしれないな」って言ってるんだけど、「大丈夫だよ、カズさん(三浦知良)もやってるよ」と言われちゃう。だから「レジェンドとは比べないで」って言っている(笑)。何とか頑張れているのはそういう家族の存在もあるかな。

――それぞれ森重選手が通算500試合出場に近づき、小林選手はJ1通算140得点を達成。Jリーグのなかで名を残す活躍をしてきたと思いますが

小林 500試合までもうすぐ?

森重 あと19試合……。ということは早くて来シーズンか(笑)

小林 俺は大卒だから、俺よりも4年も多くこの生活を送っているのはマジですごいと思う。身体もそうだけど、心が保てるのがすごいよ。毎日、この同じ繰り返しをさらに4年多くやっているなんて無理だよ。今からプラス4年なんて絶対に無理だよ。

森重 それは話が違うでしょ。お互いすごいよ。よくやっているよ。

小林 よくやっている。でも、500はすごいよ。めざして頑張って!

森重 いやー厳しいな。途中出場とかあればね。センターバックでそれはあまりないから。

小林 (交代が)5枠に増えたからチャンスは広がったんじゃない?

森重 でも、数字に関してはそれほど気にしていない。今は毎日が必死だし、一週間を乗り切ることに必死。それが逆に楽しい。そこをどう自分にむち打ってやれるか。より考えることが増えるなかで、過ごしていくことで今が充実している。数字を追いかけるよりも、そうやって「37歳になって苦しい想いができることは本当に幸せだな」と思いながら毎日を過ごしている。

小林 メッチャ分かる。メッチャ分かるよ。終わりが見えるからこそ、一日の大切さが身に染みる。それは若いときには感じることができなかった。モリゲと感じていることが一緒なんだなって聞いていて思いました。

――ベテランと呼ばれるようになって久しいですが、お互いキャプテンマークを巻いたこともあった。それぞれ個人を犠牲にしたこともあったんじゃないですか?

森重 どうなんだろうね。結局は、性格的にストライカータイプなのかな。もちろんチームに目を向けるんだけど、最終的に切羽詰まったら自分に目を向けて視野を広げていくことのほうが振り返ったら多かったのかもしれない。

小林 年を重ねる毎に、ここ数シーズンはチームの雰囲気だったり、練習や試合前のロッカールームでの声掛け一つでチームの士気を少しでも上げられたり、勝つ確率を上げるために意識するようになりました。

――37歳でギラギラして、もっとギャンギャンわがままを言っても良い気もしますが

小林 37歳のギラギラ、ギャンギャンはちょっと痛いです(笑)

森重 ハハハハ。そうなのよ。でも、言っても佑都君のアレはパフォーマンスを含めてだからチームを乱すようなことは絶対にしない。ルールの範囲内でやっているから。ただ、俺は真似できないけどね、さすがに(笑)

小林 ハハハハ。

――長友選手と同学年の家長選手はどんな選手ですか?

小林 アキ君は本当にマイペースですよ。自分の世界観があるから。あまり声を出して周りに言うタイプではないですけど、背中で見せるというか、自分のやるべきことをしっかりとやる。ただ、納得がいかなかったり、間違っていると思ったことはちゃんと言葉にする。基本はマイペースに淡々とするタイプです。

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著者プロフィール

1981年10月18日、香川県出身。地域新聞の編集部勤務を経て、2006年からフリーに。現在、『東京中日スポーツ』等でFC東京担当記者として取材活動を行う。2019年に『素直 石川直宏』を上梓した。

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