37歳の多摩川クラシコ 森重真人×小林悠~刺激し合うベテランの夏~

馬場康平

多摩川クラシコでの勝利にこだわる両者の思い

森重が「優等生」と語る小林悠(右) 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

――よくある質問ですけど、お互いの印象や思い出はありますか?

森重 悠は……もう家族愛って感じ。常に後ろに家族がいる絵が浮かぶ。俺が悠のインスタグラム見過ぎているからなのかもしれない。

小林 インスタグラムのコメントは、モリゲばっかり。モリゲが一番コメントしてくれるかも。

森重 それも含めて、すごく優等生というか。性格的にはストライカーっぽくないところもある。さっき話していたみたいに周りを見て行動に移せるし、後輩にも気が遣える。ときには一緒にふざけることも悠はできる。試合中はフォワードとしてギラギラしているけど、ピッチの外に出たら全く人が変わる。悠も、(太田)宏介も優しくて、人としてできている。似ているところが多いって思う。本当に人としても一選手としても尊敬できる部分が多い。

小林 ありがとうございます。モリゲもピッチの外では優しい雰囲気のおっとりした感じだけど、ピッチに入ったときの存在感だとかは日本のセンターバックとして引っ張ってきた。本当に力がある。あとサッカーがうまい。ディフェンダーなのに、ちゃんとビルドアップの正確さとか、クリアボールをちゃんとつなげたり、相手にすぐにボールを渡さない。そういう細かいところが試合をやっていく上では大事になる。ビルドアップのスキルだったり、ヘディングで得点もできる。ここまで長くやっているのには理由があるなと思います。うちのセンターバックにもボールの動かし方とかも見習ってほしい。

――それでは互いにエールを贈り合ってください。

森重 きっと毎日同じ気持ちでボールを追いかけていると思う。来シーズンのことなんて見ることできないから、一日一日が苦しいけど、それを楽しみながら心が折れなかったら大丈夫だから。お互い励まし合いながらやっていきましょう。

小林 俺も練習試合や試合会場でモリゲに会うと、一緒に話すのがすごくうれしくて、同い年が頑張ってくれていることだけで自分の力にもなるし、刺激にもなる。これからも互いを刺激し合いながら残りのサッカー人生が悔いのないように頑張りましょう。

――すごくほのぼのとしてしまいましたが、ここは多摩川クラシコなのでバチバチのコメントで締めましょう。

森重 フロンターレに散々痛い思いをしてきた。リーグ前半戦は負けているので、絶対に2連敗はできない。今、チームも調子が上がってきて、コンディションも良い。怪我人も戻ってきて、戦力がそろっているなかで今回の対戦を迎えられる。リベンジと東京の強さをこの多摩川クラシコで見せつけたいと思います。

小林 フロンターレも前半戦の苦しいときを乗り越えて強くなっていると思うので、東京と対戦するときも良い状態で臨めると思います。多摩川クラシコに勝って後半戦一気に上位に登っていけると思っています。気合を入れて勝てるように頑張ります。

――来シーズンも願わくば、互いに今と同じユニホームを着て是非、今度は優勝を懸けた多摩川クラシコを期待しています。本日はありがとうございました。

森重 だから、来シーズンは見られないって(笑)

小林 保証はできないですよ(笑)

一同 もちろん。そうなるように頑張ります。

森重 ありがとう悠!

小林 モリゲ、頑張ってね。

森重 お互い頑張ろう。
 同世代だからこそ、互いを試金石にし、想いの強さを確かめ合えるのだろう。森重が「37歳になって苦しい思いができることが幸せ」と言えば、小林は「子どもから辞めないでと言われるから続けられる」と吐き出す。そんな2人のイマを生きる姿勢には、厳しい世界を生き抜いてきたプロの流儀が詰まっていた。そこにある意地や誇りがぶつかり合う多摩川クラシコは、そうした選手の想いや背景を乗せてこれからも歴史を紡いでいく。

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著者プロフィール

1981年10月18日、香川県出身。地域新聞の編集部勤務を経て、2006年からフリーに。現在、『東京中日スポーツ』等でFC東京担当記者として取材活動を行う。2019年に『素直 石川直宏』を上梓した。

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