大岩ジャパンがメダルに届かなかった理由とは? 坪井慶介が感じたスペインとの「紙一重の差」

吉田治良

1次リーグの快進撃でメダル獲得の期待が膨らんだが、東京五輪の準決勝でも敗れた相手に行く手を阻まれた。0-3というスコアほどの差はなかったが…… 【写真は共同】

 1次リーグを3戦全勝の首位で突破し、準々決勝で優勝候補スペインとの大一番に臨んだサッカーのU-23 日本代表だったが、結果は0-3の敗戦。56年ぶりのメダル獲得の夢は儚くも潰えた。VARチェックで細谷(真大)のゴールが取り消されるなど不運も重なったこの一戦を、そしてオーバーエイジ抜きで決勝トーナメント進出を果たした大岩ジャパンの戦いぶりを、元日本代表DFの坪井慶介氏はどう評価するのか。

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日本に運がなかったのは事実だが……

前半終了間際、相手DFを背負った細谷が見事な反転シュートを突き刺すも、これがオフサイド判定で取り消される。勝負を分けるターニングポイントになった 【写真は共同】

 いやー、残念でしたね。敗れはしたものの、日本は優勝候補のスペインを相手に、本当によく戦ったと思います。

 なかなかペースとマークをつかみ切れなかった立ち上がり(11分)に失点してしまいましたが、それでも30分過ぎあたりからはしっかりと主導権を奪い返しましたからね。その要因は2つ。まず守備面で、相手のストロングポイントである中盤の3枚を抑えられるようになったのが大きかった。

 アレックス・バエナは山本(理仁)選手がケアしていたんですが、下がり目のパブロ・バリオスに対してアンカーの藤田(譲瑠チマ)選手が出て行ったときに、相手の攻撃のキーマンであるフェルミン・ロペスがフリーになってしまうシーンが、序盤はかなり見られたんです。そこを前半の途中から、センターバックの高井(幸大)選手が前に出て潰すようになって、守備が安定。アンカーとセンターバックの縦のズレがスムーズになりましたね。スペインは思うようにボールを繋げなくなって、少し面食らっていたようにも映りました。

 一方で攻撃に関しては、立ち上がりは相手センターバックのプレッシャーに前を向かせてもらえなかった細谷選手が徐々に慣れて、前線でボールを収められるようになったことが大きかった。結果的にボール支配率もほぼ互角になりましたからね(最終的な数字は日本47パーセント:スペイン53パーセント)。

 勝敗を分けたポイントを挙げるなら、やはり40分の細谷選手の素晴らしい同点ゴールが幻になってしまったシーンでしょう。マークに付いていたセンターバックのパウ・クバルシの立場から言えば、あれは「完全にやられた」形。細谷選手の勝ちですよ。もちろん、VARでのオフサイド判定だから仕方がないんですけど……。日本人の誰もがそう感じているように、僕もなかなか納得しがたいジャッジでしたね。

 運・不運で片付けてはいけないとは思いますが、この日はスペインに運があって、日本に運がなかったのは、贔屓目なしに事実でしょう。日本は前半アディショナルタイムの細谷選手のヘディングシュートもポストに弾き返されましたが、あの時間帯に追いついていたら、結果はどうなっていたか分かりません。0-3というスコアほど日本が圧倒されたわけではありませんでしたからね。

 ただ、そういった「運」や「ツキ」を手放さず、後半に2つのコーナーキックからきっちりと追加点を奪ってしまうスペインの勝負強さ、流れを読む力は見事でした。

 もちろんスペインにもミスがなかったわけではありませんが、要所要所での1本のパス、1本のサイドチェンジなんかを比較してみると、日本は個の部分でもうワンランク精度を上げていかなくてはならないのかなと思いましたね。

 フェルミン・ロペスの簡単にボールを失わないプレーはさすがでしたが、彼のようなワンプレーで局面を劇的に変えてしまう選手が、残念ながらこの日の日本にはいなかった。細谷選手がそれになりかけていましたが、81分のシュートも相手ゴールキーパーのスーパーセーブに阻まれるなど、決めるべきところで決め切れませんでした。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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