大岩ジャパンがメダルに届かなかった理由とは? 坪井慶介が感じたスペインとの「紙一重の差」

吉田治良

オーバーエイジ論争にも1つの指針を

オーバーエイジ抜きで世界の強豪と紙一重の勝負を演じてみせた。今後は坪井氏が推す高井⑮などが、この経験を糧にA代表の定位置争いに絡んできてほしい 【Photo by Claudio Villa/Getty Images】

 結局、今回もメダルに手が届きませんでしたが、チームとして戦う強さ、組織としての完成度は十分に見せてくれました。攻撃面ではサイドバック、サイドアタッカー、そしてインサイドハーフが連動した崩しが印象的でしたし、守備に関して言えば、前から奪いに行くところと、ブロックを作って守るところの意思統一がしっかりとできていた。大会を通じて攻守両面に大きな問題点は見当たりませんでした。

 それでもベスト4に勝ち上がれなかったのは、やはり勝負所でのプレー精度に“紙一重の差”があったからでしょう。互いに2度ずつあったセットプレーのチャンスでも、日本はシュートをポストとクロスバーに当て、スペインはどちらも決め切った。

 ただ逆に言えば、このU-23世代のチームが、すでに世界の強豪国と紙一重の戦いができるレベルにあったということです。普段スペインのトップクラブでやっているような選手たちを相手に、約半数がJリーガーというチームが、しかもオーバーエイジなしで互角に戦ったわけですからね。だからこそ、その紙一重の差をどうやって埋めていくかを、これから日本サッカー界全体で、真剣に考えていかなくてはならないと思います。

 もしオーバーエイジを加えていたら、メダルも獲れたかもしれない。そんな意見もあるかもしれませんが、僕はそうは思いません。今回のオリンピック代表は本当に結束力のある素晴らしいチームでしたし、ここまで積み上げてきたものを、しっかりと本番でも出せた。1次リーグ3連勝はその確かな証でしょう。

 今後も、オリンピックがやって来るたびにオーバーエイジ論争が巻き起こると思いますが、大岩(剛)監督率いる今回のU-23代表チームが、1つの指針を示してくれたような気がします。もちろん必要とあればオーバーエイジを加えるべきだが、それはマストではない。一枚岩の強固な組織を作り上げれば、U-23世代だけでも世界と伍して戦えるのだと──。

 ゴールキーパーの小久保(玲央ブライアン)選手、キャプテンの藤田選手、エースストライカーの細谷選手あたりは、この経験を糧に、今後はフル代表にも頻繁に絡んでくるはずです。それから、センターバック出身者としては、19歳の高井選手にも期待しています。対人の強さに加え、カバーリングも巧みで、足元の技術も備えている。何より、若さに似合わないあの落ち着きがいいですね。早い段階で、A代表でのプレーを見てみたいタレントの1人です。

(企画・編集/YOJI-GEN)

坪井慶介(つぼい・けいすけ)

1979年9月16日生まれ、東京都出身。四日市中央工から福岡大を経て、2002年に浦和レッズに入団。1年目からJリーグ新人王に輝く活躍を見せると、その後も長くCBのレギュラーとしてチームを支え、J1リーグ優勝(06年)やACL制覇(07年)など数多くのタイトル獲得に貢献した。日本代表として、06年のドイツ・ワールドカップにも出場(通算40試合・0得点)。湘南ベルマーレ、レノファ山口を経て、19年シーズンを最後に現役引退。現在はサッカー解説者、タレントとして活躍中。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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