坪井慶介が指名するサッカー男子メダル獲得のキーマン「彼がいるかぎり日本の守備が崩れることは──」

吉田治良

マリとの第2戦からスタメンを6人入れ替えて臨んだイスラエル戦。主力に休養を与えられただけでなく、途中出場のエース細谷に待望の大会初ゴールも生まれた 【Photo by Koji Watanabe/Getty Images】

 パラグアイ、マリに連勝し、すでにパリ五輪1次リーグ突破を決めていたサッカー男子のU-23日本代表は、ターンオーバーを採用したイスラエルとの第3戦にも1-0で勝利。3戦全勝で決勝トーナメント進出を決めた。準々決勝の相手は、昨年のU-21欧州選手権を制した強豪スペイン。ここでは元日本代表DFの坪井慶介氏に、日本の1次リーグの戦いを総括していただくとともに、大一番となるスペイン戦の展望、さらには56年ぶりのメダル獲得の可能性についても語ってもらった。

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印象深いパラグアイ戦の藤田の縦パス

キャプテンとして、アンカーとして存在感が際立つ藤田。坪井氏が特に印象に残っているのが、停滞感を打ち破り、攻撃にリズムを生んだパラグアイ戦の縦パスだ 【Photo by Juan Manuel Serrano Arce/Getty Images】

 もちろん、良い結果が出ることを願ってはいましたが、3戦全勝、しかも無失点での決勝トーナメント進出は、正直予想していませんでした。オーバーエイジも使えず、大会直前には右サイドバック半田(陸)選手の負傷離脱もありましたからね。

 ただ、オーバーエイジに関しては、呼ばなかったのか、呼べなかったのか、いろんな事情があったとは思いますが、結果的に良い方向に転びましたね。経験豊富なオーバーエイジを加えるメリットも確かにありますが、ずっと一緒に戦ってきたメンバーだけでこの大舞台に臨んだことで、逆に強い一体感がチームに芽生えた印象です。

 大きかったのは、やはりパラグアイ戦の勝利(5-0)でしょう。相手に退場者が出たとはいえ、南米予選を1位通過した強豪国に快勝して、一気に勢いづいた。こうしたビッグトーナメントにおける初戦の重要性を、あらためて感じましたね。

 なかでも印象に残っているのが、キャプテン藤田(譲瑠チマ)選手のプレーです。幸先よく先制し、パラグアイに退場者が出た後、なかなか追加点を奪えませんでしたが、63分に三戸(舜介)選手の2点目が生まれる直前に、藤田選手が推進力をもたらすような攻撃的な縦パスを2本ぐらい打ち込んでいるんですね。あれで日本の攻撃のリズムがかなり変わった。今朝のイスラエル戦でも、途中出場から決勝点の起点になっていましたが、アンカーの位置にどっしりと構える藤田選手の存在は、実に頼もしいですね。

 言うまでもなく、守護神・小久保(玲央ブライアン)選手の存在感も際立っています。マリとの第2戦でも好セーブを連発しましたが、イスラエル戦でも後半にチームの集中力が切れ、攻め込まれた時間帯に2つのビッグセーブを披露して、気持ちを引き締めました。彼なくして3戦連続無失点はありえなかったでしょう。

 センターバックコンビは3試合とも組み合わせが違いましたが、誰が出てもチームとしてどういう守備をするのかという意思統一ができていて、常にコンパクトな状態を保ち続けていました。そこは、さすがセンターバック出身の大岩(剛)さんだなと。

 センターバックに限らず、大岩監督はバックアップメンバーも活用しながら、誰が、どこで、どんな状況で出てもチームのレベルを落とさないマネジメントをしっかりとされている。初戦では先発した平河(悠)選手が負傷で途中退場しましたが、代わって入った佐藤(恵允)選手が良い働きをしましたし、それは荒木(遼太郎)選手や藤尾(翔太)選手などにも言えることです。

 いずれにしても、1次リーグを突破できた最大の要因は、小久保選手を中心としたディフェンス力だと思います。ブロックを作って守る時と、前から連動してプレッシャーをかけてハメに行く時の使い分けができていて、戦術的にしっかりと整理されている印象がありますね。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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