週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#16】北関東No.1のスケール!193cm右腕、前橋商・清水大暉 中央学院・颯佐心汰は攻守でセンス光る遊撃手

西尾典文

「選抜では投手としてもフル回転。攻守にセンス光るショート」

今春の選抜大会ベスト4からさらに大きく成長した姿を見せた中央学院・颯佐 【写真提供:西尾典文】

颯佐心汰(中央学院 3年 遊撃手 176cm/70kg 右投/右打)

【将来像】今宮健太
軽快な動きと投手でも140キロを超える肩の強さは今宮にイメージが近い

【指名オススメ球団】DeNA

高卒の若い二遊間候補が少ないチーム事情から

【現時点のドラフト評価】★★☆☆☆
支配下での指名濃厚

 今年春の選抜高校野球でベスト4に進出した中央学院。そのチームの中心的存在となっているのがショートでピッチャーも務める颯佐(心汰/さっさここた)だ。初めてプレーを見たのは1年秋の千葉県大会。体はまだ細かったものの、その動きの良さと肩の強さは明らかにチームの中でも際立っており、リリーフでも140キロを超えるストレートを投げ込んでいた。ただその後はなかなかポジションが固まらず、セカンドや外野を守ることもあり、2年秋の県大会でも背番号9をつけている。ようやくショートに固定されたのは今年春の選抜高校野球からだ。ただその選抜でもショートとしてのプレーやバッティングよりも、4試合全てでリリーフ登板した投手の方が目立っていたことは確かである。そのユーティリティーさが評価されてか4月に行われたU-18侍ジャパンの強化合宿のメンバーにも選ばれたが、フリーバッティングでは慣れない木製バットに苦戦し、ほとんど快音は聞かれなかった。この合宿でのプレーだけを見たら、多くの人はショートとしてよりもむしろピッチャーで勝負した方が良いのではないかと感じたのではいだろうか。

 しかし迎えた最後の夏。颯佐はバッターとして大きな成長を見せつけることとなる。実際にプレーを見ることができたのは3回戦の柏南戦だ。迎えた1回の第1打席。1球目と2球目はボール球を見送ったが、選抜に比べて構えも大きくなり、ゆったりとタイミングをとることができており、これはいかにも打ちそうだなと思って見ていると、続く3球目のストレートをとらえ、レフトスタンドに叩き込んで見せたのだ。元々リストワークは巧みでバットコントロールの良さは持ち味だったが、それに頼ることなく鋭く体を回転させてスイングすることができており、ヘッドスピードも打球の勢いも申し分なかった。

 そして颯佐の勢いはこの後の打席も続くこととなる。第2打席はセンターフライに倒れたものの、第3打席には右中間へのツーベースを放つと、第4打席にもライトへのスリーベースと3本の長打を記録。どちらの打席も相手バッテリーの厳しいマークもあって決して簡単なボールではなかったが、しっかりヘッドを利かせて右方向へ鋭く弾き返すことができていたのだ。体つきはまだ細身に見えるが、スイングの強さが春から夏にかけて大きくアップしたことは間違いないだろう。またスリーベースでの三塁到達タイムは12.00秒を切れば俊足と言われるが、颯佐は最後少し流して走りながらも11.73秒をマークしている。上背の割にストライドが広く、跳ねるようなランニングフォームも迫力十分だ。

 この日は実戦での守備機会はなかったものの、シートノックでは相変わらず軽快な動きを見せており、送球の速さも際立っていた。この日のプレーを見れば、もう投手としてではなく、ショートとして勝負すべきだろうと誰もが感じただろう。春の選抜で結果を残しながらも、課題の部分にしっかり向き合い、短期間でレベルアップした姿を見せたのは見事という他ない。

 今年の高校生ショートは石塚裕惺(花咲徳栄)、斎藤大翔(金沢)などが有力候補と見られているが、大舞台の経験という意味では颯佐が頭一つリードしていることは確かだ。多くの球団が次のショートのレギュラー候補に頭を悩ませているだけに、プロ志望であればそれを埋める候補の1人として颯佐の名前が呼ばれる可能性も高いだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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