ハンドボール代表オルテガ監督は“スペインの野村克也” 長時間ミーティングと「ノート」で進むチーム強化

大島和人

予習復習、映像の見直しも

渡部は東江雄斗からキャプテンを引き継いだ 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 野球好きならば、オルテガ監督と野村克也(故人)を重ねるだろう。野村はヤクルトを3度日本一に導いた知将で、長時間ミーティングを好み、「メモを取る習慣づけ」を重視していた。

 チームスポーツならばミーティングはつきもので、それは戦術を浸透させるための重要なプロセスだ。ただアスリートは「身体を動かす専門家」で、座学がストレスになる場合もある。

 それでもオルテガ監督のミーティングは情報量が多く、しかも選手側に「それを理解して実行する」ことを求める。新しい話を一度聞いただけで理解できる人間などおらず、当然ながら「予習」「復習」も必要だ。渡部は言う。

「『ノートにしっかり書いておけ』『練習に来るときはしっかり覚えておけ』とは言われています。練習やミーティングの映像はXPSというシステムで共有されているので、練習が始まる前と終わった後、ミーティングが終わった後に、もう1回部屋で見直します。ミーティングは大体1時間弱、毎日やっています。昨日(2日)は長くなるぞと前日に言われて、1時間半を超えていました。予習は練習前に30分くらいと、練習が終わってから1時間ちょっとで、(予習復習は)1日合計90分くらいです」

 とはいえ一方的に高度な理論を展開する……というミーティングではない。渡部は「オルテガの教え」についてこう述べる。

「基本的な『手を上げて大きく見せる』ことであったり、足の向きであったり、こちらに相手を持っていくとか、僕らが小学生と一緒に講習会をするときに言うようなことも大事にされています。あとはタイミングやディフェンスラインの高さと、そういうのは細かいところまで指導があります」

映像の編集、共有がポイントに

パリ五輪初戦は3週間後に迫っている 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 そもそも「映像を編集、共有し、タブレット端末やノートPCでチームのメンバーがそれぞれ見る」プロセスは、競技を問わず世界レベルなら当然のことだろう。強化の時間が限られる中で、ある程度の詰め込み教育も必要になる。

 オルテガ監督は短期間でのチーム作りについて、こう述べていた。

「今回は月曜日(1日)の試合から良かった点、悪かった点、良くなる点をしっかりチェックして、選手とも共有しました。どう攻撃していくのか、どう守っていくのか、そういう点を研究、共有しながらやっています。ナショナルトレーニングセンターは練習のすべてをビデオで撮れますから、その映像を見ながらできます。(五輪に向けて)対戦国のビデオをしっかり研究した上で、改善させていくつもりです」

 キャプテン渡部も、焦りはない。

「割と大枠のシステムは決まっていて、その中でたとえば『相手がこういう攻撃のとき』といったシチュエーションごとの練習をしています。時間が足りないという意識はあまりないですし、オリンピックも1日空いてすぐ試合ですから……。ミーティングが長くなるだけですね」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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