20歳の新鋭、パリ五輪バスケ代表入りなるか? ジェイコブス晶の可能性と課題

大島和人

彼が口にする悔しさ

山ノ内勇登(写真)は年齢、ポジションが近く代表入りを競い合うライバルだ 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 日本代表デビューは2023年7月の韓国代表戦で既に果たしていた。23日のオーストラリア戦は彼にとって代表2試合目で、9分20秒のプレータイムを得た。スタッツは「4リバウンド/0得点」にとどまり、2本放った3ポイントシュートはいずれも外している。

 試合後のジェイコブスは悔しそうな顔でこう口にしていた。

「相手にも1年間、NBAアカデミーでチームメイトだった選手たちがいて活躍していた。自分が置いていかれている気持ちがあって、すごく悔しいですね」

 悔しさの理由はこう言葉にしている。

「自分の求められていることはシュートで、(昨年の韓国戦を含めて)2試合とも決められていない。今回は前の試合より時間も出ているし、1回のチャンスでちゃんと決めるのが、こういうトライアウト(選考)ではすごく大事になる。『まだ足りないな』という気持ちがあります」

 もっともリバウンド、インサイドのディフェンス(DF)は相手と五分に渡り合っていた。9分20秒で4リバウンドというスタッツも決して悪くはない。そこはジェイコブスにとって「やれて当然」の部分だった。

「リバウンドとかDFは良いんですけど、それはもう最低やらなければいけないことです。僕はシューターとしてチームに入って、シュートが決まらないと使われない。これからもう少し練習したり、試合前のメンタルをもう少し強くするほうが良いのかなと思いました」

 ジェイコブスは登録身長が203センチで、現在の体重は本人曰く101キロ。日本でプレーしていた時期は83キロと細身で、インサイドのプレーを苦手としていた。しかし今はゴール下の戦闘力が大きく上がっている。「ゴール下で相手としっかり競る」「難しいシュートを打たせてミスを誘う」部分はオーストラリア戦で見せられていた強みだ。

 本人もDFについては手応えを口にしていた。

「それはもう1年間ずっと自分は頑張って体重を増やして、身体も強くして、DFも強くできたと思います」

 ただ身体のバランスが変わったことで、シュートフォームの修正が必要になっているのだろう。

ホーバスHCは前向きな評価

ホーバスHC(左)の評価は上々だった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 23日の試合前には、誰よりも早くコートに現れ、シュート練習に励んでいた。3ポイントシュートこそが今のジェイコブスのテーマで、日本代表入りを左右する要素。リザーブならなおさら「1本中の1本」を決められるかどうかで、評価は大きく変わる。だからこそ、彼は自分のプレーを苦い表情で振り返る。

「NBA選手(八村塁、渡邊雄太)がいて試合のほとんどに出るので、僕は『1ポゼッションで、このシュートを決める』『1本だけもらって、そこで決めなければいけない』ポジションです。こういう試合で2本打てて、両方とも外してしまったけれど、そこをちゃんと決めなきゃいけない。それを知っていて、できなかった」

 しかしホーバスHCにジェイコブスの評価を尋ねると、かなりポジティブだった。指揮官は「良かった。リバウンドも良かった。ジェイコブスは去年のワールドカップで、本当にギリギリ(の落選)でした」と振り返り、さらにこう続ける。

「去年は(シュートが)結構入っていたけど、フィジカルの部分はちょっと足りなかった。(今年は)フィジカルの部分は良くなったけど、シュートがあまり入らなかったからどうしよう……と思っていた。だけど1週間前ぐらいからショットを直して入るようになったんです。(山ノ内)勇登も合宿中は若いメンバーの中で多分一番良かった。でも昨日はあまり良くなかった。A代表に入ってビッグステージでプレーできるかどうかは、やらないと分からない部分です。ホテルに戻ってスタッフといろいろ話して(メンバー入りは)決まります。(ジェイコブス)晶はショット入らなかったけど、全然悪くなかった」

 山ノ内は21歳で、ジェイコブスは20歳。今回の合宿に途中まで参加していた19歳の川島悠翔もそうだが、彼らは将来の日本バスケを背負って立つ人材だ。若者は好不調の波も激しいが、総じて成長が中堅やベテランよりも早い。

 ジェイコブスも3ポイントシュートの成功率が上がれば、きっとこのチームの戦力となる。これからの可能性、本番までの急成長に期待したい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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