ファーム成績から見るセ・リーグ「有望株」 下位指名&育成から目立つ好成績、苦戦のドラ1選手も

データスタジアム株式会社

非常に優れた打撃成績を残している石橋康太(左)は今季中にもレギュラーとして台頭する可能性を秘める 【写真は共同】

 NPBはシーズン中盤に差し掛かり、いよいよペナントレースも折り返し地点を迎えるところとなった。ここからリーグ優勝やクライマックスシリーズ進出をかけた、熱い戦いが繰り広げられることだろう。そうした中、若手選手が中心にプレーするファームは、一軍より開幕が2週間早かったこともあり、ちょうど日程の半分を消化している。

 本コラムでは、一軍での実績が少ない若手選手の二軍成績をもとに、今後の活躍が期待される選手を取り上げていきたい。今回紹介した選手の中には、今季中にも一軍に台頭する若手が現れるかもしれない。

選定選手の条件
●2024年12月31日時点で26歳以下の選手
●2023年までの一軍通算投球回が40未満の投手
●2023年までの一軍通算打席数が200未満の野手
※本文は2024年6月10日時点の情報をもとに執筆
※選手年齢は2024年12月31日時点
※表中の平均球速はストレートの球速、および単位はkm/h
※表中の本塁打割合は、1本塁打あたりに要する打数の割合

※リンク先は外部サイトの場合があります

中日は育成契約の若手投手が伸び盛り

【画像提供:データスタジアム株式会社】

 中日の若手投手では、育成契約の3名を取り上げる。入団4年目を迎える松木平優太は、二軍で開幕から先発ローテーションを守りながら好投を続け、ここまでリーグトップの投球回を記録。昨季は奪三振率3.78と球威不足が大きな課題であったが、今季は奪三振を増やすことで好成績につなげている。中でも、決め球のチェンジアップは奪空振り率25.4%と抜群の切れ味を見せているのが特徴だ。

 参考までに、一軍ではロッテの佐々木朗希のフォークが奪空振り率23.2%であり、松木平のチェンジアップが二軍レベルでは非常に優秀であることが分かるだろう。5月30日のオリックス戦では、9回無失点9奪三振1四球で完封勝利を挙げるなど、中日の若手投手では最も伸び盛りの選手である。

 次に、左腕で好成績を収めているのが近藤廉だ。リリーフとして22試合に登板し、防御率1.23と好投を続けている。今季はストレートの平均球速が昨季から約6キロ上昇してパワーアップを遂げたことに加え、与四球率を大幅に減らすことに成功。近藤のストレートはカットボールのような変化をするのが特徴だが、そこに球威と制球力が加わって大きな強みとなっている。そのクセ球ゆえに打球がゴロになる割合は64.6%と高く、これはリーグで投球回10以上の投手108名中2番目となっている。

 最後に紹介するのは7年目の石川翔。昨年3月にトミー・ジョン手術を受けた若手右腕は、リハビリを経て6月1日に実戦復帰を果たしたばかりだ。復帰後は2イニングを投げ、平均球速は150.2キロを記録。2試合連続三者凡退のピッチングを披露している。プロ入り後は度重なる故障で満足のいくプレーができていないだけに、今後は登板を重ねていく体力面の強化が求められるところだろう。

【画像提供:データスタジアム株式会社】

 若手野手陣では、捕手の石橋康太が非常に優れた打撃成績を残している。あらゆる項目でリーグ平均を大きく上回る数字を記録しており、5月17日には一軍昇格をつかんだ。昇格後の石橋は出番が限定的となっているが、一軍の捕手陣は打撃不振に苦しんでいるため、石橋が今季中にもレギュラーとして台頭する可能性は秘めているだろう。

 次に、2021年のドラフト1位であるブライト健太の現在地を確認したい。ここまでリーグ平均を上回る成績を残してはいるものの、前年に記録したOPS.886から今季は.694まで低下するなど伸び悩みつつある。本塁打もここまでわずか1本にとどまっており、自身の強みである長打力の復調が求められるところだろう。

 最後に新外国人選手のロドリゲスを紹介したい。今季から育成選手として加入したロドリゲスは春先から実戦で首脳陣の評価を上げると、支配下登録となって一軍の開幕戦にスタメン出場を果たした。4月25日に登録抹消されて以降は、二軍で津田啓史や辻本倫太郎といった若手を抑えてショートとして最も起用されており、将来的なレギュラー候補として育成している様子がうかがえる。成績を見てみると、一軍で結果を残せなかった打撃は二軍でリーグ平均レベルの成績をマーク。一方で首脳陣から高い評価を受けている守備に関しては、ショートの守備得点がリーグ平均レベルを下回っており、今後の成長を期待したいところだ。

ヤクルトには今後が楽しみなルーキー投手が2人

【画像提供:データスタジアム株式会社】

 ヤクルトの若手投手陣からは、まずルーキーの2名を紹介したい。ドラフト1位の西舘昂汰は1月の新人合同自主トレーニング中に故障した影響もあって、公式戦デビューが6月9日と出遅れた。その初登板では1イニングを無失点、最速149キロを計測するなど、今後に期待を抱かせる投球を披露している。

 ドラフト2位の松本健吾は、二軍で19イニングを投げて与四球はわずか1個とコントロールを武器としており、防御率0.47と圧巻の成績を残している。一軍初登板となった5月15日の広島戦では、9回無失点10奪三振無四球で完封勝利を達成し、鮮烈なデビューを飾った。今後も先発ローテーションの1人として活躍が期待されるところだ。

 2年目以降の投手では、丸山翔大が高い奪三振能力を武器に好成績を残している。一軍でも13試合に登板して防御率0.69を記録するなど、ブルペンを支える投手に成長しつつある。

 このほか、左腕の山野太一が防御率1.15と優れた数字をマーク。奪三振率や平均球速は二軍のリーグ平均に届いていないものの、多彩な球種で打たせて取る投球を持ち味にアピールを続けている。

【画像提供:データスタジアム株式会社】

 若手野手陣に目を向けると、好成績を収めている選手は少ないのが現状だ。その中で、2年目の橋本星哉が打率.274とまずまずの数字を残している。三振の少なさにも表れているようにバットコントロールの良さが持ち味で、5月24日に育成契約から支配下登録となった。チームの捕手で唯一の左打者なだけに、今後は打撃面でライバルと差別化を図っていきたい。

 このほか、ルーキーの2名を取り上げたい。BCリーグ・新潟から入団した伊藤琉偉は、チーム2位タイの8盗塁を記録している内野手だ。打撃面はフライ打球が非常に少ないのが特徴で、202打席に立って本塁打ゼロ、二塁打と三塁打もあわせて4本しかない。持ち味のスピードを生かすためにも、今後は打撃の強化が必要となってくる。

 最後に、高卒ルーキーの鈴木叶を紹介する。チームでは内山壮真と古賀優大がここまで公式戦に出場できていない中、二軍では鈴木が捕手として最多出場をしている。3月20日に公式戦初本塁打を放つなど、3・4月にはOPS.664と高卒の新人捕手としては出色の成績を残した。その後は打撃不振に苦しんでいるものの、多くの出場機会の中で鍛錬を積んでいる。

1/3ページ

著者プロフィール

日本で唯一のスポーツデータ専門会社。 野球、サッカー、ラグビー等の試合データ分析・配信、ソフト開発などを手掛ける。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント