侍J監督が考える「魔の中2」の理由 子どもたちの進路選択は「ちゃんと自分の意思で」
【写真は共同】
そんな井端だが、「アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」でのチームマネージメント、采配で評価が急上昇。NPBはもちろんアマチュア野球界もくまなく視察して選び抜いたその「観察力の高さ」と「冷静な見極め」が、モチベーター型の前任者・栗山英樹とは違った職人的な指揮官として高い評価を得た。
井端は選手の起用理由や采配を問われると淀みなく答えるが、それは選手に全幅の信頼を置く裏付けに確固たる信念があるからである。
本著では井端氏に最も近くに寄り添うスポーツライターの西尾典文が、大会を振り返りとその裏付けを探り、2024年11月の「WBSCプレミア12」、2026年の次回WBCへ繋がる日本野球界のロードマップを提示していく。
井端弘和 西尾典文著「日本野球の現在地、そして未来」から、一部抜粋して公開します。
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井端塾から井端が得たもの
井端「プロとか社会人の大人に比べて、子どもってやっぱりまだまだ分からないことや知らないことも多いので、そこは我慢しながら根気強くやるしかないですよね。でもちゃんと言い続けていくと、だんだん子どもの方から、『今(動きが)こうなってませんでしたか?』とか聞いてくるようになるんですよ。慣れてくると大人の選手よりも、子どもの方が聞きやすいのかもしれませんね。逆に何も言ってこないような子にはちゃんと理解しているかを確認してあげる必要があります。
だから、ちゃんとできている時は『できている』、できていない時は、『できていない』と伝えてあげる。それで同じように言ってもなかなかできない場合は、違うやり方、アプローチをこちらも考えて探す。それの繰り返しですよね。でも高校生や大学生、大人に対しても、こっちが何か伝えて一方通行になるのではなくて、ちゃんと双方向でやり取りした方が上達も速いはずです。子どもに教えているうちにそう思うようになりました」
コーチングの原則と言われているものはいくつかあるが、そのうちの一つが「コミュニケーションは双方向で行う」という点である。子どもに対する指導の場合は特に指導者から一方的に伝えているということが多い印象も受けるが、井端塾では決してそういうことはなく、それが子ども達の上達に繋がっているとも言えそうだ。
また侍ジャパンのトップチームの監督としても、アジアプロ野球チャンピオンシップでサヨナラタイムリーを放った門脇誠(巨人)の状態が、それまでと比べて良くないことを見抜き、ただ任せるのではなく、「自分の見立てを伝えたうえで重要な打席に臨ませたこと」が、結果に繋がった部分もあったのではないだろうか。そのようなコミュニケーションのとり方は子ども達に教える中で養われた部分もあったはずだ。
そして、この2年間、井端塾を通して子どもたちに野球を教える中で、新たに気がつく部分もあったという。
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