大会直前に大誤算が生じたU-23韓国代表 パリ五輪出場へ白星発進もメディアが指摘する「不安」とは?

「クロス→ヘディング」のワンパターンでは日本には勝てない

初戦を白星で飾った韓国だが、国内ではネガティブな報道が目立った。OSENが指摘したのが「クロス→ヘディング」ばかりの単調な攻撃。終了間際に生まれた唯一の得点も、コーナーキックをイ・ヨンジュンがヘッドで押し込んだ 【Photo by Zhizhao Wu/Getty Images】

 こうした懸念のなかで迎えたUAEとの初戦は、後半アディショナルタイム4分の決勝点で辛くも1点差勝利。二度の得点取り消しの不運もあったとはいえ、7割超のゴール支配率やUAEの3本に対して16本だったシュート総数など、各スタッツで圧倒しながらの苦戦ぶりには各メディアの見方も厳しい。

 なかでも、スポーツメディア『OSEN』は「“クロス→ヘディング”のワンパターンで勝利したファン・ソンホン号、UAEは破ったが日本と中国相手にはどうするのか」と見出しを打ち、クロス主体の単調な攻撃を指摘。「ある意味“ワンパターン”が通用して勝利したわけだが、よりレベルの高い相手には通用しないだろう。特に日本のようなチームには、“このような攻めが効かないはずだ”という疑問が生じる試合だった」と伝えた。

 他には『SPOTV NEWS』が「これで“韓日戦”に勝てるのか」と報じていたが、やはり韓国でも注目を集めるのが最終節の日本戦だ。実際、試合に臨む選手たちもライバル対決への思いは強いようで、韓国サッカー協会(KFA)テクニカルリポートによるアンケートでは、今大会の代表メンバー全員が「最も勝ちたい相手」という設問に「日本」と答えている。

 大会前までの取材対応でも、MFホン・ユンサン(浦項スティーラーズ)は「日本に負けた経験は多いが、今度こそ必ず勝利したい」と強調。杭州アジア大会決勝で日本と対戦した副キャプテンのDFファン・ジェウォン(大邱FC)は「日本は強い相手だが、アジア大会決勝で勝利している。今回も自分たちが十分勝てるという自信がある」と言い、FWアン・ジェジュン(富川FC 1995)も「日本との試合は面白くなる。負ける考えはない」と力強く語った。

男子サッカーを韓国スポーツ界「最後の希望」と呼ぶ声も

10大会連続となる五輪出場は、韓国にとって至上命題だ。ファン・ソンホン監督は「目標は当然、優勝だ」と宣言 【Photo by Zhizhao Wu/Getty Images】

 スポーツ紙『スポーツソウル』によると、元U-17韓国代表監督で現KFA専任指導者のビョン・ソンファン氏が3月に来日。大岩ジャパンの強化マッチ2試合を視察して戦力分析を行うなど、宿命の“日韓戦”に向けた準備を徹底的に進めているようだ。

 ファン・ソンホン監督自身、2022年の前回大会では2歳下のU-21日本代表に0-3と完敗し、準々決勝で敗退するという屈辱を味わっている。今回は第2節の結果次第で、最終節前に日韓両国が決勝トーナメント進出を決めている可能性もあるが、それでも「ライバルに負けるわけにはいかない」と韓国陣営も考えているはずだ。

 選手の兵役問題もかかわるパリ五輪出場は、韓国にとって“至上命題”。今回の五輪では女子サッカーや男女バスケなど球技種目で軒並み出場を逃しているため、男子サッカーを韓国スポーツ界「最後の希望」と呼ぶ声もある。

 韓国を発つ前、「10大会連続五輪出場を成し遂げて帰ることができるよう、代表メンバー全員で渾身の力を尽くす。目標は当然、優勝だ」と指揮官は宣言した。国の期待を一身に背負う“ファン・ソンホン号”は、カタールの地で五輪の切符をつかみ取ることができるだろうか。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

韓国スポーツを得意とする制作集団。特に韓国サッカーの取材・寄稿・通訳・コーディネイトの実績が豊富で2008年~2014年にはKFA(大韓サッカー協会)公式サイト日本版も担当。現在は『Kリーグ日本版』『スポーツソウル日本版』などのウェブメディアを運営している。

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