東京で逃したメダルを――。バドミントン「ナガマツ」ペアが2大会連続五輪へ

平野貴也

世界でも稀な長身ペア、圧倒的な攻撃力が武器

松本(左)と永原(右)は揃って170センチ台の長身だが、違う個性を持つ 【平野貴也】

 松本/永原は、ともに身長170センチ台。世界でも稀有な長身ペアだ。上から打ち下ろす球には、角度と力がある。

 だが、個性は対照的なほどに異なる。永原はスタミナがあり、レシーブをされても強打を打ち続けられる。意表を突くプレーは少ないが、実直で我慢強い。身長177センチの松本は、後衛から一撃で決める強打を持ち、前衛に入れば大きな壁となり、甘いロブをたたき落とす。ひらめきがあり、相手のスペースにカウンターショットをたたき込むプレーも見せる。

 元々は松本が後衛、永原が前衛の形だったが、世界のトップに台頭する中で、前後の入れ替わる形が多くなった。永原が粘り強く強打を打ち続け、甘い返球を松本が仕留めるスタイルが、東京五輪までの「ナガマツ」ペアの得点パターンだった。

攻撃パターンの多彩化を目指した3年間

 松本が95年8月、永原が96年1月生まれで、ともに28歳の同期。30代に近付き、以前ほどフィジカル能力に頼って強打を打ち続けるわけにもいかない。また、強打一辺倒では勝ち切れない時代になり、2人は新たなスタイルを模索している。

 永原は「自分たちが(国際大会のトップシーンに)出始めの頃は、守備では球を高く上げてくれる選手が多かったので、勢いと(打ち下ろす)攻撃だけでやり切れた。でも、世界的にプレースタイルが変わって来て、自分たちの攻撃も昔よりは通じなくなっている。攻撃のバリエーションが増えれば決めていけるけど、単調になると打たされて疲れていくだけになる」と話す。

 女子ダブルスでは、上から打たれた球を大きく遠くに打ち返し、強打を打たれても守備で反応するための時間を作るのがセオリーだった。しかし、近年はライバルの守備力が向上。さらに、低く沈めるレシーブで攻守交代を狙うペアも増えている。連続攻撃を断ち切られ、主導権を奪われる試合が増加した。2人は東京五輪以降、攻撃を継続するための手段、主導権を奪い返すための手段を探し続けている。

 23年秋頃からは、前衛と後衛に分かれる一般的な攻撃布陣ではなく、横並びで壁のように立ち、速くて強い球を早いタイミングで打ち続ける攻撃にもトライ。縦で攻めるか、横で攻めるか。いつ、どちらを使うか。2人は、攻撃の多彩化を目指している。

相手、環境に応じてプレーを適切に選べるか

 「ナガマツ」ペアは、年明けの1月にインドオープンで優勝。3月のフランスオープンで4強入りと健在ぶりを証明している。

 長く続いた五輪レースを終盤まで争い、疲労や負傷を抱えていることもあり、五輪レース最終戦のアジア選手権は精彩を欠いて準々決勝で敗れた。それでも世界最強地域アジアの8強だ。パリ五輪の出場権争いは東京以上に苦戦したが、世界ランクも8位と上位をキープし、トップ争いができる力を持ち続けている。

 コンディションを整え、磨いてきた攻撃パターンを相手、環境に応じて適切に選べれば、決戦の勝機は十分にある。松本は「ポテンシャルは以前より上がっていると思う。それをどの状態でも出せるようにしたい。五輪は絶対に緊張するので、精神力に加えてスキル、質を上げていきたい」と残り期間の課題を挙げる。前回の東京五輪で見せられなかった、世界に誇る攻撃的なペアの本領を、パリで見せつけるつもりだ。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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