東京で逃したメダルを――。バドミントン「ナガマツ」ペアが2大会連続五輪へ
世界でも稀な長身ペア、圧倒的な攻撃力が武器
松本(左)と永原(右)は揃って170センチ台の長身だが、違う個性を持つ 【平野貴也】
だが、個性は対照的なほどに異なる。永原はスタミナがあり、レシーブをされても強打を打ち続けられる。意表を突くプレーは少ないが、実直で我慢強い。身長177センチの松本は、後衛から一撃で決める強打を持ち、前衛に入れば大きな壁となり、甘いロブをたたき落とす。ひらめきがあり、相手のスペースにカウンターショットをたたき込むプレーも見せる。
元々は松本が後衛、永原が前衛の形だったが、世界のトップに台頭する中で、前後の入れ替わる形が多くなった。永原が粘り強く強打を打ち続け、甘い返球を松本が仕留めるスタイルが、東京五輪までの「ナガマツ」ペアの得点パターンだった。
攻撃パターンの多彩化を目指した3年間
永原は「自分たちが(国際大会のトップシーンに)出始めの頃は、守備では球を高く上げてくれる選手が多かったので、勢いと(打ち下ろす)攻撃だけでやり切れた。でも、世界的にプレースタイルが変わって来て、自分たちの攻撃も昔よりは通じなくなっている。攻撃のバリエーションが増えれば決めていけるけど、単調になると打たされて疲れていくだけになる」と話す。
女子ダブルスでは、上から打たれた球を大きく遠くに打ち返し、強打を打たれても守備で反応するための時間を作るのがセオリーだった。しかし、近年はライバルの守備力が向上。さらに、低く沈めるレシーブで攻守交代を狙うペアも増えている。連続攻撃を断ち切られ、主導権を奪われる試合が増加した。2人は東京五輪以降、攻撃を継続するための手段、主導権を奪い返すための手段を探し続けている。
23年秋頃からは、前衛と後衛に分かれる一般的な攻撃布陣ではなく、横並びで壁のように立ち、速くて強い球を早いタイミングで打ち続ける攻撃にもトライ。縦で攻めるか、横で攻めるか。いつ、どちらを使うか。2人は、攻撃の多彩化を目指している。
相手、環境に応じてプレーを適切に選べるか
長く続いた五輪レースを終盤まで争い、疲労や負傷を抱えていることもあり、五輪レース最終戦のアジア選手権は精彩を欠いて準々決勝で敗れた。それでも世界最強地域アジアの8強だ。パリ五輪の出場権争いは東京以上に苦戦したが、世界ランクも8位と上位をキープし、トップ争いができる力を持ち続けている。
コンディションを整え、磨いてきた攻撃パターンを相手、環境に応じて適切に選べれば、決戦の勝機は十分にある。松本は「ポテンシャルは以前より上がっていると思う。それをどの状態でも出せるようにしたい。五輪は絶対に緊張するので、精神力に加えてスキル、質を上げていきたい」と残り期間の課題を挙げる。前回の東京五輪で見せられなかった、世界に誇る攻撃的なペアの本領を、パリで見せつけるつもりだ。