ジェフ・フレッチャー著『SHOーTIME2.0 大谷翔平 世界一への挑戦』

16歳のトラウトの潜在能力を見抜いていたエンゼルスのスカウト 突然のWBC出場宣言で沸き起こった大谷との直接対決

ジェフ・フレッチャー
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 エンゼルスの番記者のジェフ・フレッチャーが綴る、現在進行形の生きる伝説の舞台裏!
 二刀流・大谷翔平のMLBの2022年シーズンから始まり、2023年シーズンとWBC優勝、そして新天地移籍までの舞台裏を追ったノンフィクション。
 アーロン・ジャッジ、マイク・トラウトといった、強力なライバル&盟友らの背景や生い立ちなど、アメリカのベテラン記者ならではの視点で描かれた「大谷本」の決定版!!

 ジェフ・フレッチャー著『SHOーTIME2.0 大谷翔平 世界一への挑戦』から、一部抜粋して公開します。

勝てないチームの2人の天才

【Photo by Michael Reaves/Getty Images】

 このとき、エンゼルスが直面していた最大の問題は、マイク・トラウトが背筋を痛めて戦列を離れていることだった。トラウトはオールスターゲーム直前の1週間をほとんど棒に振り、いつ復帰できるかも不明だった。トラウトは大谷が座る席から約50ヤード(45メートルほど)離れたテーブルで、記者団の取材に応じた。

 この2人の明暗は、はっきり分かれていた。

 トラウトは、それまでの選手生活の大半で、オールスターゲームの取材においてもっとも多くの記者団をひきつける存在だった。だが今回は、大谷が数十人の記者に囲まれる一方で、トラウトを囲む記者は数人だけだった。

 記者が質問を投げかける前に、トラウト側から発表があった。2023年開催のWBCに出場すると明言したのだ。チームアメリカに参加すると公式発表したのは、トラウトが初めてだった。

 これまでは伝統的に、WBCはアメリカ人選手にとって、他国の代表選手ほど重要な大会とはみなされていなかった。

 他国からは錚々たるスター選手たちが軒並み出場するのに──当然、誰もが大谷が日本代表として参戦することを期待していた──多くのアメリカ人選手たちは、この大会をシーズン前の準備を邪魔する存在としか見ていなかった。

 トラウト自身、2013年と2017年の大会前までには、世界有数の野球選手として地位を確立していたが、どちらも出場を辞退した。

 だが、2022年夏までに、トラウトはもう31歳になろうとしており、数々のケガと戦っていた。

 おそらく自身の衰えが間近に迫っているのを痛感していて、全盛期のうちにWBCのような大会に出場できる機会を逃したくなくなったのだろう。そして、彼もまた大谷と同じく、勝てないエンゼルスの現状に不満があったことも間違いないだろう。

 トラウトがエンゼルスでメジャー昇格して以来、プレーオフ進出を果たしたのはわずかに一度、2014年だけなのだ。

「興奮しているよ」

 トラウトはWBC出場宣言についてこう続けた。

「これは大事なことなんだよ。僕自身、初出場の機会を逃しているから、今回は逃すわけにはいかないと思うんだ」
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