侍J投手コーチ・吉見一起が2024年のプロ野球を〇×で予想 広島・常廣、西武・武内の新人王獲得なるか?

大利実

吉見氏は広島・常廣を昨年のドラフト候補の大学生投手なかでナンバーワンと評価する。その理由とは? 【写真は共同】

 いよいよ、2024年のプロ野球が開幕する。キャンプ・オープン戦で各球団の戦力や、選手個々の調子などが見えてきたところで、昨年から侍ジャパン投手コーチとして井端監督を支える吉見一起氏に直球質問をぶつけた。球団ごとに用意したファンもどちらかで迷うトピックに、△なしの○か×で答えなければならないというものだ。侍投手コーチとして今季のキャンプは精力的に各球団を視察。特にベテランから若手まで多くの投手の特徴を熟知する吉見氏のアンサーは? 12球団ごとの見どころをズバリ予想してもらった。

阪神:佐藤輝明が30本塁打以上を打つ

打者のトピックについても吉見氏ならではの“投手目線”で語ってくれた 【写真:スリーライト】

吉見氏の予想「×」

――プロ入り4年目を迎えた佐藤選手。自身初の30本超えはなるでしょうか?

 4年連続の20本超えは十分にあるでしょうが、30本となるとひとつハードルが上がります。確実性が必要。現状では、打てるポイントと打てないポイントがまだはっきりしているので、30本は難しいと思います。さらに、打てなくなったときに不振に陥る期間が長く、修正するまでに時間がかかる。その原因がメンタル面にあるのか、技術面にあるのかはわかりませんが、引き出しがまだ少ないのかなと感じます。

――甲子園球場はライトからレフトに浜風が吹く分、「左打者に不利」という見方もあります。

 たしかにありますが、風は関係なく放り込めるパワーは持っています。それよりも、屋外でプレーをする体力的なしんどさのほうがきついかもしれません。夏場に数字を落とす印象がありますが、体力面も少なからず関係しているのではないでしょうか。

広島:常廣羽也斗が新人王を獲得する

吉見氏の予想「〇」

――青学大出身のドラフト1位・常廣投手。度会選手(DeNA)をはじめ、ライバルは多いですが、新人王獲得となるでしょうか?

「〇」です。1年目から二けた勝てるだけの能力を十分に持っています。昨年、球場で観る機会がありましたが、大学生の中では「ナンバーワン投手」だと思っています。若手投手が育ちやすいカープに入団できたことも、常廣投手にとっては追い風になるはずです。

――「ナンバーワン」と感じた理由はどこにありますか?

 ストレートの速さ、コントロール、変化球のキレがいいのはもちろんですが、ホームベース上での強さを持っています。ここは、プロで活躍するための必須条件。タイプとしては、チームの先輩でもある森下暢仁投手に重なります。いいお手本がいることも、プラスに働くでしょう。まずは先発での起用になりますが、大学では抑えもやっていました。栗林良吏投手の状態を見ながら、いずれはクローザーに転向するのも面白いと思っています。

DeNA:度会隆輝が1年目で10本塁打以上打つ

吉見氏の予想「〇」

――話題のルーキー度会選手。1年目から10本以上のホームランを打てるでしょうか?

 即答で「〇」ですね。バットコントロールが巧みでインコースも苦にしない技術を持っています。私はトヨタ自動車のコーチを務めている関係で、エネオス時代の度会選手を何度も見ています。オープン戦で活躍していますが、これぐらいは打つだろうと思っていました。「10本塁打以上」という点では、本拠地の横浜スタジアムがホームランの出やすい球場であることが、有利に働くはずです。タイプは中距離ヒッターですが、10本であればクリアするでしょう。

――シーズンに入ってからの期待はいかがでしょうか?

 1年目から2割8分を残せれば十分。オープン戦の段階では、相手のバッテリーも「絶対に抑える!」というよりは、さまざまなことを試しながら投げているものです。シーズンに入って、厳しい攻め方をされたときに、どう乗り越えていけるか。明るい性格もあり、いずれはチームを引っ張っていく選手に育つことを期待しています。

巨人:菅野智之投手が抑えに転向する

今オフに抑え転向論が話題になった菅野。同じエースで先発投手として活躍した吉見氏の見解は? 【写真は共同】

吉見氏の予想「×」

――プロ入り後、ずっと先発で投げてきた菅野投手ですが、「智之(菅野)の抑えの可能性もゼロじゃない」と、阿部監督がインタビューに答えたことがありました。実際に、抑え・菅野投手は誕生すると思いますか?

 ここは「×」ですね。長いイニング、あるいはバッターとの駆け引きの中で良さを発揮できるのが菅野投手です。以前のような圧倒的なピッチングはできなくなっていますが、コンディションが戻れば、ローテを守れる力は十分にあります。先発が厳しくなったから抑え転向というのは、少し違うかなと。

――菅野投手、復活のカギはどこにありますか?

 ストレートの強さが戻ってくるか。もともと、ボールがシュート回転しやすいタイプですが、腰の状態が悪いときはその傾向がより強くなっていました。強いストレートを投げられているときは、コンディションが良いときです。多彩な変化球も、ストレートがあってこそ生きてきます。

ヤクルト:村上宗隆が復活。本塁打50本以上打つ

吉見氏の予想「×」

――2022年に56本塁打を放った村上選手。2年ぶりの大台突破はなるでしょうか?

 40本はあり得るでしょうが、さすがに50本は難しいと思います。対戦すればするほど、攻め方が徹底され、マークも厳しくなる。バッテリーは、村上選手に打たれてはいけないのは十分にわかっているので、甘いボールをそうは投げてこないでしょう。

――投手・吉見さんであればどんな攻めを考えますか?

 いいバッターになるほど、インコースの出し入れが必要になります。球速、球種は関係なく、インコースをどれだけ意識させることができるか。インコースを攻めることで、アウトコースを遠く見せたい。インコース高め、インコース低めを見せながら、アウトコースの低めを使っていく。レフトに放り込まれるリスクがある、アウトハイだけは絶対に投げません。

中日:根尾昂が先発ローテーションに入る

吉見氏の予想「×」

――投手転向3年目を迎える根尾投手。昨年9月にはプロ初先発を果たし、7回途中まで試合を作りました。今季、先発ローテ入りはなるでしょうか?

 2週間前であれば迷わずに「×」でしたが、前回(3月9日の広島戦)登板を見たところでは可能性を感じるピッチングを見せていました。ただ、ドラゴンズの先発投手は層が厚いので、現状では「×」になります。

――つまりは、「成長が見られる」ということですね。

 間違いなく良くなっています。失礼な言い方ですが、昨年までの根尾投手はスピードガンで150キロを計測していても、一軍で通用する球ではありませんでした。ホームベース上での強さが足りない。それが、今季はオープン戦で投げるたびに、強さが出るようになっていました。

――ピッチャーが投げる球に近付いてきたと言えますか?

 体の使い方や動かし方を覚えて、ボールの質が上がっています。ただ気になるのは、この時期にしては変化球の割合が多いこと。ストレートに自信がないのか、結果を求め過ぎているのかはわかりませんが、軸となるストレートをより磨いてほしいと思います。

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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