侍J投手コーチ・吉見一起が2024年のプロ野球を〇×で予想 広島・常廣、西武・武内の新人王獲得なるか?

大利実

オリックス:山下舜平大が15勝以上を挙げる

侍ジャパンで山下舜平大のボールを間近で見た吉見氏。その印象は? 【写真は共同】

吉見氏の予想「〇」

――侍ジャパンにも選出された山下投手が15勝以上を挙げるかどうか。

 年々進化していて、素晴らしいボールを投げています。今回、強化試合で見させてもらいましたが、まだまだ調整途中でありながらも、想像以上のストレート、カーブを投げていました。体力面が心配ではありますが、オリックスは先発陣のマネジメントに長けていて、うまく休みを入れながら回しています。それを考えると、15勝以上の可能性は十分にあります。

――ほぼ3つの球種で組み立てていますが、具体的に何が素晴らしいと感じましたか?

 やはり、ストレートです。バズーカというか、ミサイルが飛んでくる感じの力強さがありますね。バッテリー間が非常に近く見え、ピッチングを受けていた坂倉将吾捕手が「投げた瞬間にミットに入っている」と驚いていました。それでいて、あの落差の大きなカーブがあることで、バッターの目線が動く。次のストレートに狙いを定めていても、目線を修正するのに時間がかかると思います。山下投手が15勝しなければ、誰がするのか。そう感じるぐらいのピッチャーです。

ロッテ:佐々木朗希が最優秀防御率のタイトルを獲得する

吉見氏の予想「×」

――プロ入り5年目の佐々木投手。まだ規定投球回を超えたことはありませんが、最優秀防御率のタイトルを獲得できるでしょうか?

 投げているボールは、群を抜いて素晴らしいのは間違いありません。1年1年、順調に成長してきています。ただ、それを1年間維持するだけの体力はまだないのが現状で、ロッテのマネジメントを見ると、規定投球回をクリアするのは難しいと感じます。

――プロ入り当初から、非常に大事に育てているように思いますが、吉見さんはどう見ていますか?

 見習う点が多くあります。目先の1勝ではなく、長くピッチャーとして活躍できるように、球団全体でバックアップをしていますよね。「本格的な活躍はまだ先にある」という考えが共有されていると感じます。

ソフトバンク:山川穂高が本塁打王を獲得する

吉見氏の予想「〇」

――ソフトバンク移籍1年目の山川選手。2年ぶりの本塁打王奪回なるでしょうか?

 可能性は高いと思います。オープン戦を見ると、実戦から遠ざかっていたブランクもまったく感じません。山川選手は長打を打つ能力に優れ、類まれな技術を持っています。特徴としては、打つポイントが近く、自分から崩れる打席が少ないこと。ホームランが出やすいPayPayドームが本拠地になることや、山川選手の前後に近藤健介選手や柳田悠岐選手らリーグトップクラスの選手がいることも、本塁打王に向けてのプラス要素となるでしょう。簡単に歩かせられない分、ストライクゾーンで勝負する機会が増えていくはずです。

――40本の可能性もありますか?

 そこはどうでしょうか。30本を超えての本塁打王と予想します。昨年はリーグ1位が26本だったので、30本を超える争いに期待したいです。

楽天:田中将大が10勝以上を挙げる

吉見氏の予想「×」

――日米通算200勝まであと3勝の田中将大投手。NPB復帰後初の二けた勝利はなるでしょうか?

 現状のスタイルでは難しいと思います。ストレートのホームベース上の強さが落ちていて、バッターに捉えられるようになっています。1イニングに複数失点を喫する場面が目立つのが気になります。年齢的なこともあるのですが、ツーシームやカットボールに頼り過ぎていると、数年後にストレートの力が落ちてくる傾向にあります。私自身もそうだったので……。

――その中で先発として結果を出すには、何が必要でしょうか?

 ストレートの強さを取り戻すのが一番ですが、現実的にはなかなか難しい。イニングを投げる力や投球術はあるので、投球パターンを変えるなど、何らかの変化が必要になるでしょう。

西武:武内夏暉が新人王を獲得する

武内は1年目から強力先発陣に十分食い込んでいけると吉見氏は評価している 【写真は共同】

吉見氏の予想「〇」

――ドラフト1位左腕・武内投手が新人王を獲得するかどうか。先発ローテとして期待がかかります。

 カープの常廣投手が「大学ナンバーワン」とお話しましたが、左投手に限れば、武内投手が一番です。左腕であれだけの強いボールがあり、右バッターのインコースを攻めることができる。かつ、空振りを取れるツーシームも持っている。ピンチになったときにギアを上げる力もあり、先発投手が勝つ要素を備えています。トータルで見たときに、非常にバランスが取れたピッチャーです。

――レベルの高い先発投手陣に食い込んできますね。

 ライオンズは、髙橋光成投手、今井達也投手ら、能力の高い先発投手が揃っています。そう考えると、3連戦の頭などの大事な試合は、実績のあるピッチャーに任せることができる。6連戦の最後など、相手投手の力が少し落ちるところでの起用が増えると思います。1年目は、勝ち星に恵まれやすい環境で投げられるかもしれません。

万波中正が35本塁打以上を打つ

吉見氏の予想「×」

――昨季、キャリアハイの25本を放ち、本塁打王争いに加わる活躍を見せました。今季、35本以上のホームランはあり得るでしょうか?

 ホームランバッターとしてのポテンシャルがあるのは間違いありません。パワーだけでなく、柔らかさを備えていて、調子が良いときはホームランを量産できる。ですが、調子の波が激しく、オープン戦を見ていても自らバッティングを崩してしまうところがあります。それを考えると、35本以上打つのはまだ難しいと思います。

――昨季は138三振でリーグワーストでしたが、ホームランバッターには付き物と考えていいでしょうか?

 そうですね、ある程度はあるものです。バッターとして大事なのは、どの場面で打つか。たとえ35本打っても、すべてソロホームランであれば、チームへの貢献度は低い。万波選手が状況に応じたバッティングができるようになれば、相手からすると今以上に怖いバッターになるはずです。
<企画構成:株式会社スリーライト>

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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