「非タレント軍団」の町田がJ1首位に立つ理由 新加入選手が語る強さの背景と“危機感”

大島和人

キャプテンが鳴らす警鐘

【(C)J.LEAGUE】

 昌子源も新加入選手の一人だ。元日本代表のCBで、チームのキャプテンも任される33歳だが、負傷により開幕戦を欠場した。復帰後もドレシェヴィッチ、チャン・ミンギュのCBコンビが機能する中で、第3節と第4節でベンチスタートを強いられた。

「僕とイボ(ドレシェヴィッチ)で組んでやっていて、キャンプも良かったです。アクシデントはあり得ることで、致し方ない。自分としても早くしっかり(先発で)試合に出て、キャプテンとしてチームを引っ張りたいけど、こうやって勝つことはすごく大事です」(昌子)

 16日の札幌戦は左のCBとして守備固めに入り、今季の初出場を果たした。柴戸は昌子らの働きをこう振り返る。

「経験のある選手が後ろでしっかり声を出しながら、弾くところは弾いて、落ち着かせてくれた。苦しい部分はありましたけども、入ってきた選手がしっかり違いを見せて、チームを生き返らせてくれたと思います。本当にサブも含めて一丸となって戦った試合です」

 藤尾、平河らの若手が攻撃を引っ張り、仙頭と柴戸の中央で機能し、勝負どころはベテランが締める。そんな良き構成、役割分担が今の町田にはある。

 ただ、昌子は首位浮上にも冷静だった。

「まだ4節なので。インパクトは与えられていると思いますけど、首位にいても一つ負ければ多分真ん中くらいまで落ちるのが4節とか5節。ここから周りはいよいよ僕らのことを警戒してきます。追われる立場はJ2で慣れているかもしれないけど、J1の追われる立場は相当なプレッシャーですから。最後にどの順位に終わるかが大事で、最終的に優勝できなかったら、目標のACL圏内に入れなかったら、今の順位に意味はない」

 彼がワールドカップやフランス、鹿島で積んだ経験も、今季の町田にとっては大切な「プラスアルファ」となるだろう。

「首位でブレイクに入るけれど、その期間に1日でも『俺らは首位だから』という慢心が出れば次は負けます。僕もそういう経験があります。試合から一番遠い日の練習から集中していかないと、すぐ壊れる世界です。4節の首位なんて首位じゃない」

監督が強調するチャレンジャー精神

札幌戦後の会見に臨む黒田監督は「抑えた」コメントが多かった 【(C)J.LEAGUE】

 強気な発言で知られる黒田監督だが、札幌戦後の会見はむしろ引き締めるコメントを残している。

「この1失点を10失点くらい重く捉えて、町田に帰ってから反省し、またクリーンシートで勝てるようなチームを作っていきたい」

 「第4節の首位」についても慎重にコメントしていた。

「我々は新参者ですし『これでやれるという手ごたえ』を感じてはいけないと思っています。あくまでもチャレンジャー精神を忘れずに、メンタリティーを奮い立たせながら、積み重ねていくしかありません。上位に食らいついていく、中位以下に順位を下げないメンタリティーを前面に出しながら、失う物は何もないと、取り組んでいる成果が3連勝につながっていると思います」

 まず、新昇格チームのスタートダッシュには理由がある。町田は昨季までのベースを維持しつつ、プラスアルファを見せている。ここに至るチーム編成、キャンプからの積み重ねは間違いなく成功と言っていい。確かに「第4節の首位」を過大評価し、そこで満足することは禁物だ。一方でそういう状況でチームを締められる人材がいることは、2024年の町田が持つ強みかもしれない。

 チャレンジャー精神を失わず、練習の質やメンバー外の選手も含めた一体感が保たれる限り、町田旋風は続くだろう。勢いだけでは片付けられない何かが、このチームにはある。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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