年間チケット収入2000万円の2軍戦で黒字なるか? オイシックス新潟社長が語る現状と夢
BCリーグで安定した球団経営を築いてきたオイシックス新潟アルビレックスBC。ファーム・リーグ新規参加で、チーム成績だけでなく、経営面でも注目される 【写真は共同】
立ちはだかる資金面でのハードル
NPB12球団が南国でキャンプインする中、オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブは新潟で始動した 【写真提供:球団提供】
同じ「プロ野球」と言っても、NPBと独立リーグの球団には大きな格差がある。65年ぶりとなるNPBへの新規参加が決まった直後、選手やコーチとして計30年間NPB球団に籍を置いた橋上秀樹監督は待ち受けるハードルの高さを案じた。
「NPBのファームは人件費以外でだいたい6億円かかります。プラスアルファで選手の年俸がかかると考えても、最低ラインで年間6億円の予算が必要になる。NPBとBCリーグのお金のかけ方の違いは非常に痛感する部分で、果たしてどうなるかと心配でした」
2007年に開幕したBCリーグの“オリジナル4”であるアルビレックスBCにとって、いつか上の舞台で戦うことは長年の夢だった。そのチャンスが昨年到来し、4月中旬の説明会から7月末のエントリーまで3カ月強の間にNPBで経営を成り立たせるための戦略を練り、2024年からイースタン・リーグへの参加が決まった。
構想し続けてきたチームネーミングライツ方式の導入
独立リーグでのチケット収入の割合はわずか。NPBのファーム・リーグに参加しても経営は一筋縄ではいかない 【写真提供:球団提供】
2006年7月からリーグ運営会社でBCリーグの立ち上げに携わり、その後2008年3月にアルビレックスBCに入社して8年後に球団トップに昇り詰めた池田拓史社長には大きなミッションが課された。
もともとNPBだけではなく海外のプロ野球の運営スキームにも興味があり、一つの縁がアイディアにつながった。2011年に選手、翌年に選手兼監督として在籍した高津臣吾氏(現ヤクルト監督)だ。高津はメジャーリーグで2年間プレーし、ヤクルトに復帰後、2008年、韓国球界に活躍の場を移した。当時在籍したウリ・ヒーローズがのちにネクセン、キウムと球団名を変えたのは、ネーミングライツを売却したからだ。たばこ会社、タイヤ会社、ネット証券会社に支えながらヒーローズが韓国のトップリーグで戦う手法は、池田社長には新鮮に映った。
「チームのネーミングライツ方式の導入は有効な手法になる可能性がある。球団経営のいくつかのアイディアとして、自分の中でずっと持っていました」
池田社長は長らく独立リーグに携わり、その経営が一筋縄ではいかないことを痛感してきた。イースタン・リーグへの参加が決まり、試合数がBCリーグ時代から約2倍の140試合になっても、事業規模を単純に2倍にできるほど甘い話ではない。NPBのファーム戦に訪れる観客は限られるからだ。
昨年、6月23日にエコスタで巨人三軍と行った交流戦の観客数は1570人。5月27日に悠久山野球場で西武二軍と対戦した際は1052人だった。単純に考えれば、今季見込める観客数も大差ないだろう。
ファーム・リーグの場合、観客数が平均2000人に達すればトップクラスだ。そうした現状があるから、二軍の独立採算制は困難とNPB球団では考えられている。言い換えれば、一軍の経営で獲得した収益をファームに投資しているわけだ。
NPB球団の収益はチケット、グッズ、放映権、スポンサー、ファンクラブが主な柱で、チケット収入の割合は3〜4割とされる。
対して、独立リーグでチケット収入の割合は1割に満たず、売り上げの8割以上がスポンサー収入だ。イースタン・リーグへの船出にあたり、池田社長が年間予算6億円のうちチケット収入として見込むのは2000万円。わずか3.3%ほどである。
「高く見積もって、走り出してみたら全然違うと事業上のリスクになるので非常に手堅く見ています。売上の大部分がスポンサー収入のままという形は当面変わらないと思いますが、プロ野球チームとしての骨格を1年目でつくっていければと考えています」