年間チケット収入2000万円の2軍戦で黒字なるか? オイシックス新潟社長が語る現状と夢
悲願は自前の室内練習場の建設
収容人数3万人のエコスタでホームゲームを多く開催したいところだが、諸事情で37試合に限られている 【写真提供:球団提供】
野球やサッカー、バスケットボールなど親会社に支えられる日本型プロスポーツチームの運営は、そのカラーがよく表れている点が特徴の一つだ。オイシックスは有機野菜や無添加加工食品などを扱う食材宅配会社で、資金の限られた元独立リーグ球団には選手たちへの食のサポートもプラスになるだろう。
オイシックスに加え、地元企業を中心とするスポンサーも順調に獲得している。2月6日の取材日時点で、目標額の80%まで到達したと池田社長は明かした。6億円に到達すれば、悲願である自前の室内練習場の建設も視野に入る見込みだ。
「新潟では今まで年に一度の一軍戦と数試合のファーム戦がいくつかの球場で行われていたのが、年間を通じて二軍の試合が恒常的に見られることになります。しかも『アルビレックスBC対どこか』というカードなので、非常に大きな期待感があると思います。ドラフトを湧かせた選手や、一軍に定着している主力級が調整で二軍の試合に出ることもありますし、スポンサーの皆様からも『これはすごいことだよね』という反応をすごく感じます」
球場は新潟県内の6つを使用する。ホーム73試合のうちエコスタ(収容人数3万人)で行うのが37試合になったのは、諸事情が絡んでのことだ。
イースタン・リーグでは火水木か金土日の3連戦を同一球場で開催するのが原則だ。その中で本拠地球場の割合が原則として50%以上でなければならない。
エコスタの開催がホームゲームの半分をわずかに超え、悠久山(同8218人)や南魚沼市ベーマガSTADIUM(同3000人)などでも行うのは、利用調整や使用料の問題もある。池田社長が実情を明かす。
「現実問題として球場を1カ所で固定できるわけではありません。春季キャンプも沖縄に1カ月行くような予算はすぐに持てないので、(伊豆でのキャンプを17日間とするなど)低コストでやっています。独立リーグ時代の事業スキームのブラッシュアップ版でまずはやるしかないのが現状です」
ファーム・リーグでも黒字経営は可能か?
2016年から球団社長を務める池田拓史氏 【写真:スリーライト】
一方、アルビレックスBCはBCリーグで多くの観客を集め、2012年から黒字経営を続けてきた実績がある。だからこそ今回、ファーム参加を果たせたのだろう。池田社長自身もその価値を感じている。
「選手の商品価値、メディアのバリューがNPBとは比べ物にならないBCリーグでやってきて、『独立リーグで12年連続黒字はすごく価値のあることだ』とおっしゃってくださる方もいます。ファーム参加は、球団創設から17年間悪戦苦闘しながらも何とかやってきたことが無駄ではなかった証明でもあると思います」
独立リーグで健全経営を確立した後、ファームでも一つの運営モデルを築き上げることができれば、球団の価値はもっと高まるはずだ。池田社長はそう見据え、なんとか新しい道を切り拓こうとしている。
「二軍の球団だけで黒字経営ができれば、球界関係者の皆様に『知恵を出せばできるんだ』と感じていただけるかもしれません。グラウンドでの成果も必要なので、今年は黒字経営、勝率4割、平均入場者数2000人、NPBに選手5名を輩出と目標を決めました。地方における野球界の底辺拡大がミッション。参加するリーグが変わっても我々の経営理念である「“ふるさとのプロ野球”による地方創生」は変わりません。ファーム・リーグにおいて1日も早く安定的な球団経営の形をつくれるようにしていきます」
前例のない挑戦で、待ち受けるハードルは極めて高い。だからこそ、乗り越えられれば大きな足跡を残すことができる。
BCリーグの立ち上げから大きな夢を抱いてきた池田社長は自身に課された使命に向き合いながら、壮大なプロジェクトを絶対に成功させるべく、日々奔走している。
企画構成:スリーライト