メタバースでスポーツの新時代を切り開く! 仮想空間で楽しむオムロンピンディーズのハンドボール観戦

スポーツナビ

ただ試合を見るのではなく、推しの選手を見つけてもらう

【提供:オムロン株式会社】

試合観戦だけでなく自身のアバターで選手と一緒に記念撮影、選手の手のひらに乗るなどメタバースならではの企画を実施 【提供:オムロン株式会社】

――なるほど、そういった背景があったのですね。では、今シーズンのピンディーズのメタバース観戦でファン・来場者はどのような体験ができたのか、具体的に教えていただけますか?

藤尾 まず、どこにいてもコメント機能やリアクション機能を駆使しながら、同じスタジアムにいるかのように周りの人たちと感動を分かち合いながら観戦できるというのが魅力です。ただ、それだけですとニコニコ動画等と差別化ができませんので、よりメタバースならではの“没入感”にこだわりました。そのうちの一つが、1月19日のメタバース観戦第2弾で実施した「トリックアート風フォトスポット」です。そのスポットに行くとアバターで選手の手のひらにのったり、コートに没入して、チームの一員かのように記念撮影をしたりすることができるようにしました。そうした、他ではできない体験を用意することで、メタバース空間で実施する意味をしっかり出すように心がけました。

――企画を進めていく上で工夫したこと、あるいは1回目の反省を踏まえて2回目で改善した点などありましたら教えてください。

谷口 第1弾は、プロ野球界で平成唯一の“3冠王”松中信彦さんをキャスティングしたことをPRの柱にしていました。松中さんは、今シーズンに日本ハンドボールリーグの理事になられたばかりでしたので、時代の流れを捉えて話題性を獲得できましたし、競技の垣根を越えて、野球ファンの方にも興味を持ってもらえたのではと思います。
 ただ、空間自体にメタバースならでは感が少ないという反省がありましたので、第2弾では新しい企画として、先ほどご説明した「トリックアート風フォトスポット」や、リアルタイムで結果がわかる「投票機能」を使ってミニゲームの勝敗を予想してもらう「ハンドボール5番勝負!」を実施しました。そのおかげで、メタバースで実施する意味をしっかりアピールできたのではと思います。

藤尾 ただ試合を流すだけですと、選手のパーソナリティまで知ってもらうのは難しくて、なんとなく勝った、負けたで終わってしまうと思うんです。でも、「ハンドボール5番勝負!」などを通して、選手たちのユニークな姿を見せることで、選手一人ひとりの顔、特徴を知ってもらい、試合を見終わった後には“推しの選手”が見つかるような状態になることを目指して、機能的にも頑張ってきました。私がもともとテレビ局でアナウンサーやディレクターとして番組作りに携わっていましたので、その経験も活用できたことが、今回の企画成功に繋がったのではないかと思っています。

ピンディーズ広報担当の藤尾さんはアナウンサーのキャリアを生かし、メタバース観戦イベントでは司会進行も務めた 【提供:オムロン株式会社】

メタバース空間に1000名以上が来場

――それら工夫を積み重ねた今シーズンのメタバース観戦の成果について、何か具体的な数字などあれば教えていただけますか。

谷口 昨シーズンは1イベント500~800人の来場者数でしたが、前回1月19日の開催では過去最多を更新する1,012人の方に来場していただきました。平日の夜でもこれだけ大勢の方が一緒になって応援していただけたということが一つの成果なのかなと思います。
 また、毎回「ピンディーズの試合を過去に見たことがありますか?」というアンケートを取っているのですが、11月3日の試合ではアンケートに答えていただいた方の40%がメタバースを通じて初めてピンディーズの試合を見たという回答でした。これは新しいファンの獲得につながっているという数字の表れの一つだとも思いますので、これも大きな成果の一つだと捉えています。

――アンケートに回答した人限定とはいえ、初めてピンディーズの試合を見た人の割合が40%というのは物凄い数字だと思います。要因は何だと推測できますか?

谷口 メディアに取り上げてもらいやすい企画を立てたことや、メタバース空間を手掛けてくれたクリエイターの方の情報発信の投稿がSNSでバズったことで、既存のハンドボールファン以外の人、とりわけメタバース界隈の人に届いたのが大きな要因だと思います。私たちは「ハンドボール好き」から「スポーツ好き」へ、「スポーツ好き」から「余暇を楽しむ全ての人」へどんどんスイッチし、拡散していく『拡散スイッチ作戦』をピンディーズの広報戦略に掲げていますので、それに沿ったプロモーションができた結果ではないかととらえています。

藤尾 とくに第二弾では、事前のメディア露出を獲得するために、初めてメタバース空間上で、フォトスポットなどを体験してもらうメディア向けの内覧会を実施しました。日刊スポーツでは、体験リポート形式の記事を事前に出していただきました。その結果、アンケートで「ニュースを見て参加した」という方が多数いらっしゃったので、事前露出獲得を頑張った成果だと感じました。

日本から世界へ、今シーズンはさらに露出が広がった

――メタバース観戦を実施したことによるメディアの反響はいかがでしたか?

藤尾 昨シーズン、初開催のときにNHKの全国放送で取り上げていただいたのですが、今シーズンはNHK WORLDに取り上げていただいて、世界160の国と地域で放送していただくことができました。もし2回目以降、同じようにメタバースと掛け合わせたというだけで、進化が止まっていたら、メディア露出が初回で終わっていたと思います。回を重ねるごとに企画をブラッシュアップして、全国から世界へという形で、さらに露出エリアを拡大できたということがすごく大きかったです。

――ハンドボールの他チームからも何か特別な反応などはありましたか?

藤尾 メタバース観戦でご協力くださった相手チーム、三重バイオレットアイリスさんから「これからも一緒に面白いことやっていきましょう! 一緒だったらメタバース以外にも新しい挑戦ができるはず、そんな可能性を感じました」と言っていただけました。それを受けて、すでにメタバース空間で実施したコンテンツ『ハンドボール5番勝負!』の動画を再編集して、インスタグラムで共同投稿する取り組みを始めました。「新たな挑戦で時代を切り開くオムロン」というイメージを浸透させて、「オムロンと一緒にやりたい」と言ってくれる協創パートナーをこれからも増やしていきたいです。

メタバースとスポーツ、これらからの可能性

――今回のメタバース観戦企画を実施したことで、これからの時代における新たなスポーツ観戦の可能性、あるいは新しい技術とスポーツの楽しみ方などについて何か感じたことはありますか?

藤尾 横浜DeNAベイスターズさんは『バーチャルハマスタ』として実際と同じ球場をメタバースで再現して、マウンドにも立てたりするなどそこでしかできない体験を提供しています。今はまだスマートフォンのようにVRのゴーグルを誰もが持っている時代ではありませんが、VRのインフラがもっと整ってくると、ベイスターズさんのようにそれだけで収益化を図れるようなリッチなコンテンツが増えてきて、スポーツビジネスの定番として定着していくのではないかなと思います。

谷口 あと私が思うのは、最近はメタバース空間内で商品の購入というところをやっている企業さん、特にBtoCさんが多いのかなと思うのですが、そこでしっかりと収益を確保してさらに良いチームになっていくことが重要だと思います。ビジネスもメタバース空間内で完結できるようになっていけば、もっと面白くなっていくのではないかなと思っています。

藤尾 コンテンツをリッチにすればするほどコストがかさんでしまうので、私たちのメタバース観戦は「認知を高めるためのツール」というところに留まっていますが、テレビ局ならぬ『メタバース局』みたいなものができてくると、単独でも収益化を図れるスポーツビジネスになっていくのだろうと思います。

――ぜひこれからも「メタバースとスポーツ」「VRとスポーツ」の先頭を走る企業として、ファンを驚かせる新しい施策をどんどん生み出してほしいなと思います。本日はありがとうございました。

藤尾&谷口 ありがとうございました。

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スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

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