元日本代表・福西崇史がアジアカップを展望 充実ぶりが際立つ森保ジャパンの優勝確率は?

吉田治良

元日のタイ戦に5-0で勝利し、国際Aマッチ9連勝を飾った森保ジャパン。福西氏はリズムを変えられるボランチの不足を懸念しながらも、今大会の大本命に推す 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 2011年以来、3大会ぶり5回目の優勝を目指し、現地時間1月12日に開幕するアジアカップ・カタール大会に挑む日本代表。歴代最長の国際Aマッチ9連勝を達成するなど充実ぶりが際立つ森保ジャパンは、今大会でも大本命に推されているが、はたして死角はないのだろうか。その行く手を阻むとすれば、どの国になるのか。2004年のアジアカップ制覇を経験している元日本代表MFの福西崇史氏に、日本の優勝確率を占ってもらった。

グループステージは問題なく1位抜けする

「歴代最強」の呼び声もある現在の日本代表ですが、僕もそうした意見に異論はありません。選手個々の技術レベルは高水準で、多くの選手が欧州リーグで揉まれてメンタル面も逞しさを増しています。なにより誰がピッチに立っても大きく質を落とさない3チーム分の戦力を有しているのは、第2次森保ジャパンの最大の強みでしょう。

 ですから今回のアジアカップも、ベトナム、イラク、インドネシアと同じ組に入ったグループステージに関しては、まったく心配していません。この中で警戒するとしたら中東開催(カタール開催)のメリットを生かせるイラクになるのでしょうが、純粋な戦力値の比較で日本の優位は明らか。(フィリップ・)トルシエ監督率いるベトナムも、大会初戦の入り方さえ誤らなければ、不覚を取るような相手ではありません。ここは問題なく3連勝で1位抜けすると見ています。

 本当の戦いは、決勝トーナメントに入ってから。僕も優勝した2004年の中国大会に出場しましたが、特に難しかったのはグループステージ第1戦のオマーン戦(1-0)と、決勝トーナメント初戦の準々決勝・ヨルダン戦(1-1/延長PK4-3)でした。大会初戦はもちろんですが、負けたら終わりの一発勝負の怖さを初めて感じるトーナメントの初戦も、気持ちの持って行き方がとても難しい。まずはそこに向けてチームが1つになれるかでしょうね。

 ここでぶつかる可能性があるUAEは、ちょっと侮れないんじゃないかと見ています。UAEには15年大会の準々決勝でも(1-1からの)延長PK戦の末に敗れていますが、あの試合で先制点を決めたエースの(アリ・)マブフートは、33歳になった今も健在で、昨年の北中米ワールドカップ・アジア2次予選でも2試合で2ゴール。さらに若い世代が育っていれば、厄介な相手になるかもしれません。

韓国よりも中東勢の方が戦いにくい

“ホーム”で戦える中東勢は、本来の力以上のものを発揮しそう。なかでもアズムン、タレミ(写真)という一線級のアタッカーを擁するイランが、対抗馬の一番手か 【写真:ロイター/アフロ】

 とはいえ、優勝争いのライバルとなるのは、やはりサウジアラビア、イラン、韓国、オーストラリア、そして開催国で前回王者のカタールあたりになるでしょう。

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 なかでも不気味なのが、中東勢。UAEで開催された前回大会のカタールもそうですが、“ホーム”の中東で戦う時の彼らは、持っている力以上のものを発揮しますからね。一度調子に乗せると手が付けられなくなる。むしろ環境的な条件は同じで、戦い方もよく分かっている韓国の方が、日本にとってはやりやすいのかもしれません。

 サウジは現在、かつてのJリーグのように国内リーグに海外の一流選手や指導者を多数呼び寄せ、国を挙げて強化を進めています。代表チームを昨年の8月から率いているのも、元イタリア代表監督の(ロベルト・)マンチーニですからね。もちろん、その指導法がチームに合うかどうかは分かりませんが、ポジティブに変わる可能性を秘めているのは確かです。

 それに、カタール・ワールドカップを経験したエースの(サレー・)アル・シェハリ、右サイドの(サウド・)アブドゥルハミドなどタレントも豊富ですからね。かなり手ごわいと思いますよ。

 アジアの戦いでは基本的に、日本がボールを持つ時間が長くなります。ただ、引いた相手の守備ブロックを崩そうと前がかりになって怖いのは、やはりカウンター。特に1人、2人だけで完結できる能力の高いアタッカーが前線にいるチームは、非常に戦いにくい。後ろも気にしながらだと、なかなかリスクを負った攻撃ができませんし、そうやって堅い試合に持ち込まれれば、メンタル的にもどんどんきつくなりますからね。

 そう考えると、ローマの(サルダル・)アズムン、ポルトの(メフディ・)タレミといったヨーロッパで活躍する一流のアタッカーを前線に配するイランは、サウジ以上に手ごわそうです。もちろん韓国にも大エースのソン・フンミンがいますし、パリ・サンジェルマンでプレーするイ・ガンインなど若いタレントも育っていますが、気になるのは(ユルゲン・)クリンスマン監督のマネジメント力。優秀な個をチームとして上手く融合できるのか、ここまでの采配を見ているとやや疑問が残ります。

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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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