元日本代表・福西崇史がアジアカップを展望 充実ぶりが際立つ森保ジャパンの優勝確率は?
徐々に“大迫感”が漂い始めてきた上田
福西氏が今大会のキーマンに挙げたのが、1トップを任されそうな上田だ。その万能性で、日本の強みである2列目のタレントの力を存分に引き出してほしい 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
そういった意味でも必要となるのが、ある程度攻めっぱなしになるなかで、リズムを変え、変化を起こせる選手なんです。元日のタイ戦も前半は押し込みながらもゴールを奪えず、後半に堂安(律)と中村(敬斗)が入ってからようやく効果的なサイドチェンジや縦への突破が増え、リズムが変わった。たとえ格下が相手でも、単調にパスを繋いでいるだけでは人数を揃えた守備ブロックはなかなか崩せません。
実を言えば、今の日本代表には“ゲームメイクができるボランチ”がやや不足しているんです。第2次森保ジャパンの発足後に佐野海舟が台頭していますが、彼もどちらかと言えば“拾う系のボランチ”。守田(英正)や(遠藤)航に続く選手がちょっと見当たらないし、今大会では田中碧もメンバー外ですからね。試合中にリズムに変化をつけられる選手がどれだけ出てくるかは、注目ポイントの1つでしょう。
逆に日本の強みは、言うまでもなく伊東純也や三笘(薫)、久保(建英)らタレントが豊富に揃う2列目。僕はこのストロングポイントを十分に生かす上でも、今大会のキーマンは1トップを任されそうな上田(綺世)になると見ています。
アジアの戦いにおいて、前線の選手が享受できるスペースは極端に限られますが、ポストプレーも裏抜けもできて、空中戦にも強い上田の幅広い能力は、相手に守備の的を絞らせません。所属クラブ(フェイエノールト)で苦労しているとはいえ、代表では森保監督が我慢して使い続けてきたおかげで、ようやくフィットし始めています。
2列目の選手に前を向いてボールを持たせ、3列目(ボランチ)の飛び出しを促し、周りを生かしながら、自らゴールも決める。徐々に“大迫(勇也)感”が漂い始めてきた上田がハマれば、日本の攻撃にも厚みが生まれるはずです。
「試しながら勝つ」という難しいテーマ
故障を抱える三笘(写真中央)も含め、呼べる選手をすべて呼んだのは、2026年の北中米W杯を見据えているから。森保監督はこのアジアカップも強化の一環として捉えている 【写真:なかしまだいすけ/アフロ】
もっとも、現在の日本代表が見据えるのは、2年半後の北中米ワールドカップ。したがって今回のアジアカップも、いわば強化の一環と森保監督は捉えているはずです。だからこそ、(負傷中の三笘も含めて)招集できる選手はすべて呼んだのでしょうし、新しい選手も使いながら、この大会を通してチームのさらなる進化、コンビネーションの向上を狙っているように感じています。
「試しながら勝つ」のはもちろん簡単ではありません。しかし、次のワールドカップで「優勝」を目標に掲げるのであれば、この難しいテーマにもトライし、クリアする必要があります。僕たちの時代とは違って、ただアジアナンバー1になればいいわけではないんです。先ほど優勝確率は90パーセントと言いましたが、こうした挑むべきハードルの高さが「マイナス10パーセント」の理由ですね。
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