優勝は青森山田か近江か、高校サッカー選手権決勝を展望 勝敗を左右する3つのポイント
近江の攻撃にアクセントを加える金山耀太(中央)に、青森山田がどう対応するかが鍵を握る 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】
27年連続29回目の出場である青森山田は、準決勝で市立船橋との今大会最大のビッグカードとなった一戦を苦しみながらもPK戦の末に制し、2年ぶり7度目の決勝進出を果たした。
一方の近江はインターハイベスト4の日大藤沢、インターハイ王者の明秀日立、プレミアリーグWESTに所属するタレント集団・神村学園などを撃破して勝ち上がってきた。それは決して番狂わせではなく、サッカーのクオリティーはファイナリストとしてふさわしいほど高い。
面白い一戦となった決勝を3つのポイントを挙げてプレビューしていこうと思う。
※リンク先は外部サイトの場合があります
①近江の心臓・金山耀太の“プラスワン”への青森山田の対応
準決勝のプレビューでも触れたように、このサッカー自体は近江の前田高孝監督がチームに植え続けてきたスタイルではあるが、今年は金山耀太の存在が大きなアクセントを加えている。3バックの左に入り、隙あらばハーフスペースを果敢に狙ってドリブルで運んだり、逆サイドでゲームを作っているときにスルスルと上がってクサビやラストパスを受けたりしてフィニッシュまで顔を出してくる。
この後方から突如として現れる金山の“プラスワン”に多くのチームが苦しめられた。準決勝の堀越戦では、準々決勝の神村学園戦でインサイドハーフの一角の荒砂洋仁が負傷した影響で、金山が左ウイングバックに起用されたが、逆に攻撃参加のタイミングがはっきりとした。金山が立ち上がりから再三、左サイドでボールを持って果敢にドリブルで仕掛けたことで、堀越のバランスが崩れて怒とうの3ゴールにつながった。
決勝ではどのポジションに金山を配置するかは分からないが、いずれにせよ彼が前に絡んでくる“プラスワン”に対して、青森山田がどう対応するかが重要になる。芝田玲と菅澤凱のダブルボランチがアタッキングエリアに入り込んでくる金山に対し、コースの遮断に加えて、差し込まれたときに小泉佳絃と山本虎のCBに受け渡しやプレスバックができるか。
このダブルボランチは共に判断力に優れ、人につくこともできるし、スペースに蓋をすることもできる。さらには奪ったボールを正確なキックで展開することができるだけに、金山もこれまでの相手以上に攻め上がるタイミングをしっかりと図らないと一気に鋭いカウンターを受けるリスクが生じる。
②守備のキーマン2人が青森山田の強度の高いカウンターを食い止められるか
「自分が前掛かりになりすぎないように後ろで安定させてつなぐことを意識しています」と語る川上は、金山だけではなく、周りの選手が上がっていく中でスペースを埋めたり、セカンドボールを回収して素早く味方につけたりと、近江の縦へとスライドしていく攻撃サッカーの潤滑油となっている。
「自分だけの判断ではなく、常に後ろから西村が的確な指示を出してくれるので、彼の声を聞きながらバランスを見ています」と川上が口にしたように、後ろから全体が見える西村がチームのコントロールタワーになっている。緻密なラインコントロールとチャレンジ&カバーのコーチング、そして正確なカバーリングで裏のスペースを管理し、かつ間延びしないコンパクトな陣形を保っている。
この2人の守備のキーマンが、相手の強度の高いカウンターを食い止められるか。青森山田は攻守の切り替えが早く、ボールを奪ってから1発でDFラインの裏へ放り込んだり、1トップの米谷壮史に当ててから、トップ下の福島健太、左の川原良介と右の杉本英誉の両サイドアタッカーが爆発的な走力で湧き出したりと、前への強度を繰り出してくる。
西村がロングボールを跳ね返したり、裏に落ちるボールに対して直線的に戻って回収できるか。その際に青森山田は一気にベクトルを前に向けて、回収されても前を向かせない前線からのプレスを仕掛けてくる。そこで川上がプレス回避のボールを引き出すポジショニングを取れるか。さらに正確なグラウンダーの縦パスが米谷に入る際に西村と川上でインターセプトしたり、挟み込んだりして奪い取れるか。そして2列目以降の飛び出しを川上がどう蓋をするか。
「リスクを恐れていたら絶対に勝てる相手ではないので強気で行きたいし、金山が上がったスペースのケアとプレスバックで相手の起点を奪いたい」(川上)
近江がこれまで通りの攻撃と守備のリスクマネジメントを披露できるか。それとも青森山田の破壊力がこれを打ち崩すのか。この駆け引きに注目だ。