優勝は青森山田か近江か、高校サッカー選手権決勝を展望 勝敗を左右する3つのポイント

安藤隆人

③青森山田のセットプレーへの対策

近江は青森山田の強烈なカウンターとセットプレーに対応できるか 【写真は共同】

 青森山田のセットプレーが強烈なのは誰もが知っているだろう。FK、CKはもちろん、2年生左サイドバック・小沼蒼珠のロングスローはメディアから『小沼キャノン』と呼ばれるほど、キックと引けを取らない質を誇る。ファーポストまで届く圧倒的な飛距離と、山なりのボールからライナーのボールまで使い分ける彼のロングスローは高円宮杯プレミアリーグでも、今大会でも猛威を振るっている。

 キックの質が良くても、ロングスローがあっても、中で合わせる側のクオリティーによっては宝の持ち腐れになるが、青森山田には190センチのCB小泉、屈強なフィジカルを誇る182センチのCB山本という全国トップレベルの空中戦の強さを誇る選手がいる。

 それに対し、近江にはハイボールに強い180センチのGK山崎晃輝、182センチのCB西村、183センチのFW小山真尋の3人が高さで対応できるか。ただ競り勝てるかではなく、小泉がストーンに入る時とファーに回る時があり、飛び込みも準決勝の市立船橋戦でヘッドを決めた小泉が「最初はニアに飛び込もうと思ったけど、虎(山本)がニアに入っていくのが見えたので、中央に切り替えた」と語ったように、しっかりと状況判断を持って入ってくるために駆け引きの要素も重要になる。

 近江にとっては準決勝で市立船橋が見せた対応が1つのヒントとなる。市立船橋はマイボールになるとDFラインでパス回しをして相手のプレスをいなしたり、前の選手がその瞬間にスペースや間に顔を出してボールを受けたり、かつクリアも外に出さずに縦に大きく蹴るなど、青森山田のロングスローを警戒して、自陣深くでボールを外に出さないようにインプレーすることを意識していた。もちろんこれはかなり難しいタスクではあるが、近江の技術力と前への推進力があれば十分にこなせるだろう。

 この3つのポイント以外にも多くの見どころが詰まったファイナル。国立を熱狂させる高校生たちの激戦に期待したい。果たして102回目の王者の栄冠はどちらのチームに輝くのか――。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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