高校サッカー選手権準決勝、市立船橋vs.青森山田を展望 手の内を知り尽くした両巨頭、勝敗を分けるのは……

安藤隆人

今大会4ゴールの青森山田FW米谷壮史(左)と、ランキングトップ5得点の市船FW郡司璃来(右)。両エースが相手ゴールをこじ開けられるか 【写真は共同】

 102回目を迎えた全国高校サッカー選手権大会もいよいよ準決勝。本稿では、選手権において5度の優勝を誇る市立船橋と、3度の優勝を誇る青森山田の一戦を展望する。

伝統的な堅守に多彩な攻撃のバリエーションを持つ青森山田

 近年の成績で言えば、過去7年間で5度のファイナリストになっている青森山田に対し、市船は優勝した2011年度以来となる12年ぶりのベスト4進出だが、今年のチームは共に攻守に安定した力を持ち、プレミアリーグEASTでも上位に食い込む(12チーム中、青森山田が優勝、市船は5位)など、実力伯仲であることは間違いない。

 今年の青森山田は伝統的な堅守に加え、実に多彩な攻撃のバリエーションを持つ。縦に速い、強いイメージがあるが、高い技術レベルと正木昌宣監督にたたき込まれたグループでボールを動かしてスペースを活用しながら巧みに相手を崩していく連動性の高い攻撃も特徴だ。

 具体的に言うと、GK鈴木将永、山本虎と小泉佳絃の屈強なCBを軸にした守備から、左足から正確なキックを放っていく菅澤凱、青森山田の絶対的な心臓である芝田玲のダブルボランチが長短のパスを駆使して、サイドや前線にテンポ良くパスを配っていく。さらにトップ下の福島健太の存在も大きい。彼はゴリゴリ前に行くスタイルではなく、豊富な運動量を駆使して、高い位置で幅広く動きながらスペースや間に顔を出してボールのレシーバーとして存在感を見せる。パスセンスもあり、ボランチをこなせる能力を1.5列目で発揮している。

 この中盤の三角形は見えている範囲が非常に広く、斜めのミドルパス、フワッと浮かせてペナルティーエリア内のスペースに落とすパスなど、しっかりと状況を把握した状態で柔と剛の打開力を繰り出す。

 そして青森山田が結果を出す年には必ずいる突破力に秀でた両ワイドアタッカーも今年は健在。左サイドハーフの川原良介はボール奪取力に長けて、奪ったボールをそのままドリブル突破につなげていく。右サイドハーフの杉本英誉はアジリティーと足元の技術に優れ、キレキレのドリブルで敵陣深くまでえぐり込んでいき、得意の左足でカットインからのシュートを持つ。

 この2人をサポートするサイドバックも強烈で、右の小林拓斗は杉本のドリブルのコースを予測しながら後方からサポートするポジションを取ったり、スペースを埋めたりと守備面やクロッサーとして杉本の能力をフルに引き出している。そして左の小沼蒼珠は今大会で大暴れしている選手。屈強なフィジカルとスピードで果敢に川原を追い越して攻撃参加し、ゴール前でのスペースの察知がFWと変わらず、今大会1ゴールを挙げている。最後に最前線にはプレミアEAST得点ランキング2位の15ゴールを挙げ、今大会でも4ゴールを挙げているFW米谷壮史がいる。

 堅守を土台に緻密なコントロールができる中盤の3枚と分厚い両サイドアタッカー、そしてポストプレーもよし、フリーランニングの質も高く、突破からのシュート、ラストパスの質も高いエースストライカーがいる。この4つがかみ合っているからこそ、速攻も遅攻もクオリティーを持って遂行することができる。ポゼッションやポジショナルプレーができる上で、縦にも早くパワーで押し切るサッカーもできるからこそ、青森山田がユースサッカー界の横綱と呼ばれる所以であり、今年のプレミア日本一になれた理由だ。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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