高校サッカー選手権、準々決勝の全試合をプレビュー 個性のあるチームがそろった8強

安藤隆人

準々決勝で名古屋と対戦する市立船橋。絶対的エースの郡司璃来(中央下)と久保原心優の2トップの連係と破壊力は全国トップレベルだ 【写真は共同】

 第102回全国高校サッカー選手権大会はついにベスト8が出そろった。波乱あり、順当な勝ち上がりありと、かなり個性のあるチームがそろった準々決勝4試合をプレビューしていきたい。

名古屋vs.市立船橋(4日12:05~)

 名古屋vs.市立船橋はプレミアリーグEAST所属の名門に、初出場ベスト8の快挙を成し遂げたニューカマーが挑むという図式となった。市船は清水エスパルス内定の絶対的なエースストライカー・郡司璃来が1回戦の高川学園戦でハットトリックを達成。エンジン全開のエースにけん引されるように2年生FW久保原心優が果敢な前線からのチェイシングやポストプレーを見せるなど、2トップの連係と破壊力は全国トップレベルだ。

 名古屋の5バックがいかにこの2トップに起点を作らせないかが1つのポイントになるが、名古屋としては共にスピードが武器の原康介、仲井蓮人、小川怜起の前線の3枚が守勢に回る中でカウンターを狙えるかも金星をつかむ重要な要素となる。

 今年の市船は左の内川遼、右の佐藤凛音の両サイドバックがチームの肝となっている。共に運動量、フィジカル、高さに秀でており、守備面では1対1の強さ、シュートブロックのうまさがあり、攻撃面ではスピード、テクニック、シュートセンスの三拍子をそろえる屈指のタレント。だが、彼らが上がった裏のスペースを狙ってくるチームが多いのも事実で、名古屋には全国数多のスピードアタッカーの中でもトップレベルのスピードを誇る原がいる。今大会で猛威を振るっている原のスピードアタックを、宮川瑛光と五来凌空の不動のCBコンビがいかにカバーして食い止められるか。この攻防も目が離せない。

青森山田vs.昌平(4日12:05~)

 青森山田vs.昌平の一戦は準々決勝最大の好カードだ。同じプレミアリーグEASTに所属し、今季の対戦成績は青森山田の1勝1分け。前期は青森山田が攻撃を爆発させて5-1の圧勝を収めているが、後期は昌平が2点をリードして迎えた終了間際に青森山田が執念の2ゴールを奪ってドローという大接戦で終わった。

 共に手の内を知り尽くしている同士の対決だけに、接戦が予想される。ポイントとなるのは昌平の1トップ、小田晄平の屈強なフィジカルを生かした突破とポストプレーを、青森山田の不動のCBコンビである山本虎と小泉佳絃が封じながら、2列目から湧き出てくる土谷飛雅、長準喜らのドリブルもフィニッシュワークもうまいアタッカーに対処できるか。青森山田にとってはこのラインを分断することで、相手のボランチの裏にできたスペースをFW米谷壮史のポストワークとボランチの芝田玲の個人技を中心に有効活用して鋭いカウンターを繰り出せる。昌平はそうさせないように全体のラインを高くして、前向きなセカンド回収をすることで2次、3次攻撃を繰り出せるか。

 さらに両チームには途中から流れを変えられる存在がたくさんいることも特徴だ。青森山田はプレミアEASTでは主軸を張っていたボランチ谷川勇獅、屈強なフィジカルを誇るFW津島巧らがより前への圧力を加えていく。昌平は3試合連続劇的弾でチームを何度も救ってきたルーキー・長璃喜が究極のジョーカー。さらにうまさと馬力を兼ね備えた2年生FW鄭志錫も小田とスタートで2トップを組んでもよし、小田と交代で1トップに入ってよしと、相手によって使い分けられる。両チーム監督のスタメン選び、交代策が運命を変えていく。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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